熱帯や亜熱帯地域の海岸の湿地帯には、マングローブの森が形成されています。マングローブとは、沿岸の川や雨水の淡水と、海の塩水が混ざる汽水域の湿地に繁殖する複数の木々の総称を指します。塩水のために、陸上の草木は育ちません。太平洋の島々では、伝統的には家の材木やカヌーの部材や彫刻などに利用されてきました。
地球温暖化による海面上昇で起こる浸食から島を守ってくれるだけでなく、食生活を支える魚や貝やカニの赤ちゃんや子供たちを育ててくれる大切な森なのです。また、私たちに不可欠な酸素を陸上の木々の何倍も生産してくれる木として、世界中が注目している大切な森です。
東南アジアなど世界各地で、海岸を浸食から守る目的でマングローブの植林活動が行われています。1年あまり前に起こったインドネシアのスマトラ島沖の地震の影響で、巨大津波が周辺地域に大きな被害をおよぼしたことを覚えているでしょう。日本のNGOは、早速スマトラ島最北端地域の海岸にマングローブの植林を始めました。また、タイ国では衛星画像を分析して津波防災機能との関係を調査し、マングローブの植林を計画しています。日本では、南西諸島で研究者や子供たちを含むボランティアの人たちが、植林活動を行っています。
私が考古学研究に関わっているポーンペイ島は、島全体が8種類の木々で形成されたマングローブの森に囲まれています。南部地域では、海岸から1キロメートルにもおよぶ深い森が発達しています。夕日に照らされた深緑の葉と、金色に輝く海上に露出した不思議な気根は何と美しいことでしょう(写真)。マングローブの森の重要性を地元の人たちや観光客に理解してもらう目的で、エコツーリズムとして森の中を見学できるようになっています(写真)。ちなみに、マングローブ繁殖の北限に当たる鹿児島県の種子島の海岸には、メヒルギという木々が群生する美しいマングローブ林が形成されています。
環境などいろいろなことを考えながら、機会があれば是非とも豊かなマングローブの森を一度見学してみてはいかがでしょうか。