April 23, 2008

「鬼」のこと

2007年度、外国語学部の共通教育科目「文学」では、二学期に鬼の伝承文学を取り上げました。日本における「おに」「オニ」「鬼」に関連する伝承は、とても多様であり、重層的です。古代の歴史書『日本書紀』に始まって、中古・中世の文献の中から資料を挙げて解説をしていきました。最初から分かっていたのですが、講義中改めて何度も「本当に鬼を考えることは難しい」と思い、学生さんたちにもそのように話してきました。鬼の伝承文学の最初の講義で、学生さんたちに自分の『鬼のイメージ』を一言ずつ話してもらいました。何人も何十人もの学生さんの回答を板書していくと、次のような姿に収斂(しゅうれん)していきます。
「鬼は大きくて、赤かったり黒かったり、角が生えていて牙がむき出し。人間のような体つきだが人間よりごつい。人を食べてしまう怖い存在。虎の皮のふんどしをしており棍棒を持っている。節分の時に追い払われる。」

確かに、上記のイメージで理解できる鬼の話も多々ありますが、実際に文献を見ていきますと、ここからはみ出すものが続出します。例えば、最後の「節分の時に追い払われる」ですが、2月3日を中心に各地で行われる節分行事を見ても、追い払われるのは学生さんたちがイメージしている「鬼」だけではありません。例えば、六波羅蜜寺(ここには平清盛のお墓もあります)の節分会では、「土蜘蛛」が住職の祈祷の力、住職の撒く福豆によって退散します。

土蜘蛛は妖怪であり、秩序をみだすものであり、人間に悪をなすものです。しかし、日本の歴史の中では、まつろわぬ人間達を「土蜘蛛」と呼んでもいたのです。

うーん、「鬼」というのは一体何者なのか。簡単に見つかる答えはありません。
しかし、答えが簡単に見つからない問題、というのは、往々にしてとても大切な、あるいは根源的な問いであるのです。人が生きていく上でも、簡単に答えが見出せない物事は山ほどあります。でも、だからといって放り出さないでくださいね。