グアム島から400キロほど南西に、ヤップ島があります。この火山島には、不思議なストーンマネー(石貨)と呼ばれる世界最大の石のお金があります。まるで原始時代を描いたアニメに出てくるまんがチックな石のお金です。小さなものは30センチくらいですが、大きいものは4メートルもあります。中央に棒を差し込んで運搬するための四角形や円形の穴があいています。70年前に調査した日本人研究者は、なんと13,000個もの石貨を記録しています。
各地域の村々の中心には儀式や話し合いが行われる集会場があり、数キロ離れたそれらの村々はジャングルを貫く石敷きのトレイルでつながれています。先史時代のそのみごとなネットワークに驚かされます。集会場前の通路には、石のお金がずらりと並べられ、ストーンマネー・バンク(石貨銀行)と呼ばれています。儀式の時には、そこで伝統舞踊が繰り広げられます。
ところで、石のお金はヤップ島で作られたのではなく、およそ450キロ南のパラオ島で作ってカヌーで運ばれたものなのです。パラオ島には、石貨製作跡として先史時代の遺跡が残っています。石のお金の価値は、実は大きさで決まるわけではありません。どこで何人の人で作られ、どのように運ばれたのかなど、それぞれの石貨の歴史によって価値が決まるのです。ヤップ島の全ての石のお金について、製作と運搬過程や所有者などの詳しい話が口頭伝承で伝えられています。
かつて、一攫千金をもくろんだヨーロッパ人が、大型船と近代的な方法でたくさんの大きな石のお金をパラオ島から持ち込んだのですが、価値は決して高いものにはなりませんでした。時間をかけ、危険を冒してまで作ったものだからこそ、価値が上がるのです。
今でも石のお金には価値が認められ、伝統的な冠婚葬祭や土地の売買などに使用されています。ちなみに、東京の上野公園に、日本のミクロネシア統治時代にヤップ島から持ってこられたストーンマネーが置かれているそうですよ。