February 25, 2010

牛の伝承文学

 外国語学部の「文学」では、伝承文学について講義しています。概論を一通りやった後、各論として具体的なテーマに沿ってお話を取り上げていきます。昨年のテーマは「牛」でした。春学期は「水とかかわる牛」や「死後牛に生まれ変わる話」など、秋学期は「十二支由来」と「ささやき竹・牛の嫁入り」を取り上げました。
皆さんの身近なところに牛はいますか?その昔私の実家の近くに乳牛を飼っている家があって、毎日河原で草を食べさせるため、おじさんが牛を連れて家の前の道を歩いていました。兄にくっついて、ちょっと遠くにある兄の同級生の家に遊びに行った時、牛舎に入らせてもらったこともあります。私の実家も昔むかしには農耕用の和牛を飼っていたそうです。新しい家がどんどん建って、牛舎の臭いやハエが迷惑だ、と苦情が来たり、大手の乳業に押されて個人の酪農家がどんどん廃業して、結局私が小学生の頃にはそのおうちも廃業してしまいました。 つい100年前には牛が草をはんだ川原も、今は護岸工事でぴしっと整えられてしまいました。
きれいでさっぱりしていること・臭くないこと・出来上がったもの(牛乳とか薄切り肉とかレトルトのハンバーグとか)が目の前にあること……それって、本当に幸せなことなのだろうか。そして、牛に触ったこともない学生さんたちにとって「牛の伝承文学」を体感できるのだろうか。
毎年、「今年のえと」を中心に講義を展開していると、人間の社会と動物、人間と自然との関係にとても大きなギャップを感じてしまいます。

付  韓国のドキュメンタリー映画「牛の鈴音」を見てきました。老夫婦と老いた牛(なんと40歳、牛の平均寿命をはるかに越えています)の日々を淡々と撮った映画です。感想は……書き始めるときりが無いのでここでは割愛しますが、是非学生の皆さんに見ていただきたい一本です。