伝承の世界の価値観はとても多様です。まじめに頑張る者が最後に幸せになる話があれば、その一方でちゃらんぽらんな奴が得をする話もある。ことわざでも「渡る世間に鬼はなし」と言いながら「人を見たら泥棒と思え」。「嘘つきは泥棒の始まり」と言いながら「嘘も方便」。一体どれを信じればええんや、と突っ込みたいところです。が、これが世の中ってことです。結局は自分自身の世界観を豊かにしておかなきゃね、と。
世の中にはさまざまな人がいて、さまざまな暮らしがあります。「◎」と見えるものが鉛筆のおしりだったり、人参の断面だったり、お茶碗をひっくり返して上から見たものだったり。「これは○○に見えるけど、ほんまにそうかいな?」と疑ってみる。これはとても大事なことです。たとえば新聞のニュース。書いてあることは読めるけれど、書いてないことは読めない。たとえば今アフリカの小さな国に何が起こっているか、日本で普通に生活している私たちはなかなか知ることができません。でも、「それ」は起こっているわけです。
伝承文学に触れることは、自分にとって「知らない世界」の存在や、別のものの見方に気づくことにつながることだと思っています。