【卒業生の皆さま・ご家族の皆さまへ】関西外国語大学 学長からのメッセージ(式辞)

卒業生のみなさんへ

 ご卒業おめでとうございます。

 関西外国語大学から新たな一歩を踏み出すみなさんに、教職員を代表して、お祝い申し上げます。そして、これまでの長きにわたり、ご子息、ご息女の成長を支えてこられたご家族のみなさまに、深く敬意を表しますとともに、心よりお祝い申し上げます。

 学位記授与にあたり、私からみなさんに贈る言葉、それは「常に目的意識を持ち、自律して主体的に学び続ける」です。これは入学式において、私がみなさんに課した宿題であり、卒業までにみなさんが取り組むべきテーマでもありました。さらに、もう一言、「本学への入学はゴールではなく、新たな出発であり、分岐点でもある」とも述べました。
 
 本学に入学してから卒業までの日々を、みなさんはどのように過ごしてきたでしょうか。みなさん一人ひとりが、関西外大でつかんだチャンスを最大限に生かし、実りある大学生活を送ってくれたことと思います。そして、人間的に大きく成長し、豊かな知識を身につけたみなさんは、社会に出る準備を整えました。

 みなさんが生きる社会は「グローバルな社会」です。情報技術のめざましい発展によって世界は密接に結びつき、人々の生活は格段に便利になりました。グローバル社会は、「多文化共生の社会」でもあります。経済や情報が、国や地域の境界を越え、異なる多様な文化に接する機会がますます増えていくことでしょう。こうした社会の中で私たちは、自分と考え方や意見の異なる人々と共に、ものごとを進めていく必要に迫られています。

 入学したばかりの頃、外国語を話せることがグローバルに活躍することだ、と思っていた人が少なからずいただろうと思います。最近でも、「グローバル人材」という言葉ばかりが独り歩きして、グローバル人材イコール英語が話せる人、との誤解が生じている嫌いがあります。また、多くの大学で唱えられているグローバルの内容として、授業を英語で行うこと、国際系・言語系の学部を作ること、留学生をたくさん送り出し受け入れること、の3つが挙げられます。果たしてこれが本当のグローバルなのでしょうか。

 本学での学びを通じて、みなさんの認識は変わったはずです。語学を習得したとしても、「ツール」や「道具」を手に入れたにすぎません。それら「ツール」を使いこなすだけの知識や教養が備わって初めて「語学」という「道具」を生かすことができるのです。

 それでは、グローバルに活躍するために、本学で身につけた知識や教養、技量、能力、人格とは何でしょうか。みなさんはどのように答えますか。それは、困難な事柄に立ち向かっていく強さや、自らが行動を起こす積極性であり、またそれは、互いの立場を尊重しながら、意見の相違点を調整できるコミュニケーション力、あるいは、異なる価値観を持つ仲間と新たな考えを創造していく力、ではないでしょうか。

 私が考えるグローバル人材とは次のようなものです。高度な語学力を有し、異なる国や文化、民族、歴史、宗教への洞察力と、異なる価値観への寛容さを持ち、客観的で論理的な思考力を身につけ、「コミュニケーション」「ネゴシエーション」「ファシリテーション」の力を培った人材です。

 それは、どこの国に行っても対応していける力があり、タフな精神力を有した人間と言ってもいいでしょう。みなさん一人ひとりが学びや経験を通じて身につけた力は、グローバル社会をたくましく生きていく力です。これからキャリアを築いていくための力強い支えとなるでしょう。在学中、みなさんはこのような力を身につけることができましたか。今一度、学生生活を振り返ってください。

 さて、みなさんは社会への新たな出発のときを迎えました。人生における岐路、分かれ道でもあります。高度な語学力とともにグローバル人材力を身につけた人とそうでない人との分かれ道は、大学生活のスタートとともに、すでに敷かれていたのです。これからもどのような岐路、分かれ道をたどるか、その答えは無限の可能性を持つみなさん自身の中に秘められています。

 すなわち、「常に目的意識を持ち、自律して主体的に学び続ける」ことにより、一本一本の紐が解かれ、最後に探していたものが見つかるようになるのです。簡単に言えば、我慢して、頑張り続けることですが、実は、これが簡単なようで大変難しいのです。

 「常に目的意識を持つ」こととは、常に思考しながら問題意識を持って取り組むことをいいます。思考を停止させ、日々同じことを繰り返していたのでは進歩がありません。自身の進化とともに問題意識も絶え間なく進化していきます。分かりやすく言えば、バージョンアップです。

 次に、「自律して主体的に」ということです。難しい問題に直面し、不安になったり弱気になったりする時にこそ、自分が設けた規範に従って自身をしっかりとコントロールしなければなりません。他人に言われるのを待つのではなく、目の前にある問題に粘り強く取り組んでください。

 「学び続ける」とは、学校で学ぶことだけに限りません。社会に出ても、五十歳、六十歳になっても、まだまだ学ぶことはたくさんあります。絶えず問題意識を設定し、弛みなく学ぶ真摯な姿勢があれば、みなさんの努力は必ずや報われる結果となるでしょう。

 みなさんは本学で、自らの未来を自らの力で切り開くことができる素養を磨いてきました。多様な価値観で構成されるグローバル社会は、持ち前のチャレンジ精神や探究心を発揮する絶好の場です。みなさん一人ひとりが、人と人、人と社会、そして国と国をつなぐ「架け橋」となり、新しい価値観を創造していく力になると信じています。
「常に目的意識を持ち、自律して主体的に学び続ける」。この言葉を忘れず、これから社会に旅立つみなさんが大いに活躍されることを心から願っています。


2020年3月14日
関西外国語大学
学 長   谷 本 義 高
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