「ヒスパニック・ラティーノとは誰か」 京都外大の牛島万氏が講演

 イベロアメリカ研究センター主催の連続公開講座が11月2日、スタートした。25日まで4回にわたって開催される。今シリーズのタイトルは「アメリカにおけるヒスパニックパワーの拡大」。アメリカのトランプ大統領候補による「移民政策」「国境の壁」発言などで、ヒスパニック系の存在感が高まっているが、第1回講座では講師に、京都外国語大学国際言語平和研究所の牛島万(たかし)氏を招き、「ヒスパニック/ラティーノとは誰か―言語文化・音楽・アートを中心に―」のテーマでお話しいただいた。

▲市民や教員、学生らを前に講演する牛島氏

 牛島氏はまず、ヒスパニック・ラティーノの定義は「米国に在住している、スペイン語を公用語とするスペイン・ラテンアメリカ出身者およびその子孫」で、人種の枠組みではないとする。ヒスパニックは、ポルトガル語のブラジル系は含まないが、ラティーノは、スペイン、ポルトガル、フランス、イタリアなどのラテン系欧州の言語文化、歴史的伝統の影響を受けた人たちを指すという。

 2010年の米国の国勢調査によるヒスパニック・ラティーノは5050万人で米国人口全体の16%を占め、最大のマイノリティとなっている。5050万人のなかには不法労働者(1170万人)は含まれていないという。

 また牛島氏は、音楽や映画、アート面からヒスパニック・ラティーノの自己表現を分析。ラップのヒスパニックの歌詞に隠された優れた表現部分を何度も繰り返し聴かせ、作詞の高度な技法を説明した。またスライドで、ヒスパニック系といわれている俳優、スポーツ選手、政治家などが紹介された。

▲ラップの演奏動画を流し、歌詞の質の高さを説明した

 最後に、大統領選挙におけるヒスパニックの投票資格者は全体の12%。しかし、州によっては40%近い州もあり、ヒスパニックが持っている票のウエートは大きいという。また、2012年の前回大統領選から4年後の今回選挙で、ヒスパニックは最も増加率が高く、ヒスパニックの投票の意義は大きいと語った。

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