「トランプ政権とヒスパニックの関係は」 関西大学・大津留(北川)智恵子教授が講演

 イベロアメリカ研究センター主催の2016年連続公開講座「アメリカにおけるヒスパニックパワーの拡大」の最終講座が1125日開かれ、国際関係論、アメリカ政治が専門の大津留(北川)智恵子・関西大学教授が「拡大するヒスパニックの政治力とアメリカ社会の反応―2016年アメリカ大統領選挙を通して」のテーマで講演。予想を覆す結果となった大統領選挙を振り返った。

▲アメリカ大統領選でのヒスパニックが果たした役割などについて解説する大津留智恵子教授

 大津留教授は今選挙の争点として、トランプ次期大統領が▷メキシコ国境の壁▷イスラム教徒排除▷オバマケア(医療保険制度改革)の撤廃▷同盟国と距離をおく―などを掲げ、クリントン氏側は▷移民法改正▷難民受け入れ▷オバマケアの維持―などをあげたが、実際はトランプ氏の女性問題、クリントン氏は私的メール問題を最後まで引きずり、スキャンダルの応酬と情報操作に終始。クリントン氏にとって、FBI(連邦捜査局)長官の「調査発言」は陣営にとって大きな衝撃だったという。

▲アメリカ大統領選後すぐの講演とあって多くの市民、学生、教職員が詰めかけた

 ヒスパニックは、アメリカ政治のなかで明らかに拡大しており、ヒスパニック有権者の増加は明らか。「ヒスパニックは民主党しか相手にしないと思われがちだが、共和党も『ヒスパニックは自分たちの有権者』として、党のサイトで共和党のヒスパニック系有権者の活躍を紹介している」という。一方で、こうした党の努力を真っ向から否定したのがトランプ氏陣営のサイトで、サイトを開くとすぐに「移民問題」が出てくる仕組みになっていたという。

 「力のないマイノリティがアメリカ社会に入り、彼らはどの政党が自分たちを保護してくれるかを重視していたが、次は自分たちが政治を動かす側になろうということで、市民権獲得を重視した。移民の場合はまず市民権を持たなければ、1票を投じることができない。投票できない移民は政治家が相手にしてくれないからだ」と話す。 オバマ政権が残した課題は移民法の改正だったが「2014の議会選挙で共和党が上下両院で多数派を握った時点で改正をあきらめた」という。

トランプ政権誕生後のヒスパニックとの関係は、共和党主流派の立ち位置、司法長官や教育省長官など、新政権での人事が大きく影響するという。4年後、2020年の大統領選では、若者の3割をヒスパニックが占め、今回のような「マイノリティ攻撃」による勝利は難しいはずだと語り、最後に「対立を越え得るアメリカに期待を込めて…」とのメッセージで講演を終えた。

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