片岡修教授の研究成果 太平洋の巨石文明「世界遺産ナンマトル」写真展 1月末から奈良・東京で開催

 国際言語学部の片岡修教授が太平洋に浮かぶミクロネシア連邦ポーンペイ島で発掘調査を進めてきた世界遺産ナンマトル遺跡の写真展が1月末から2月中旬にかけて、奈良と東京で開催される。写真展は科学研究費補助金に基づく研究成果の公開の一環として開かれ、片岡教授は「この機会に太平洋の巨石文明の魅力に触れてほしい」と話している。

▲写真展のポスターと片岡修教授。ポスターの写真はシャウテレウル王朝の首長たちが
埋葬されたナントワス島

 

 写真展は「世界遺産ナンマトルー太平洋の巨石文明の痕跡を求めて―」(関西外国語大学、NPO法人パシフィカ・ルネサンス主催、東京文化財研究所協力)のタイトルで、奈良では131日から25日まで「ナラマチギャラリー2016」(奈良市公納堂・ならまち工房Ⅲ内)で、東京では27日から12日まで「HAGISO」(東京都台東区谷中3)で開催される。展示されるのは片岡教授と研究者仲間が発掘調査の際に撮影した約25点。

▲ナントワス島の北外周壁
 

ナンマトル遺跡は20167月にユネスコ(国連教育・科学・文科機関)の世界遺産に登録された。巨大な玄武岩を用いて構築された大小約100の人工の島からなる古代の巨石文明の遺跡で、「太平洋のベニス」「ミクロネシアのアンコールワット」などと呼ばれる。

 
 片岡教授は米オレゴン大学大学院に留学していた1980
年代前半から30年以上にわたりナンマトル遺跡の調査を手がけてきた。

 
片岡教授によると、遺跡は島を統一した王朝のもので、紀元1000年頃から石造建築が始まり、その後500年かけて人工島の建設が行われたとみられる。口頭伝承に、島ごとに墓、儀式の場、王の住居などいろいろな役割が伝えられてきた。王たちの墓として建設されたナントワス島には、直径5060㌢の柱状の巨石が6万本以上も使われている。中には、80㌧もある巨岩を4段に積み上げた人工島もあるらしい。これらがどのように運ばれ、積み上げられたのかはわかっていないという。
 

 世界遺産登録に向けては、ミクロネシア政府の支援要請を受け、片岡教授ら日本チームによる現地調査が2011年にスタートした。15年にかけてワークショップや説明会、追加調査などを続け、申請書を提出。審査を経て16年に登録が確定した。この間、片岡教授は「ミクロネシアにおける巨石文化の成立と社会複雑化のプロセスを探る考古学的研究」の代表者として科学研究費補助金(基盤研究B)を得て研究に取り組んだ。


 片岡教授は、今後の課題として、遺跡・周辺環境の保全と保護や、文化遺産保護などにあたる人材の育成などを挙げており、こうした課題に向けた協力のため、一般財団法人・国際協力推進協会(APIC)の活動に加わり、2月に現地を訪れる。

一覧を見る