「ディープ・アクティブラーニング」を提唱 松下佳代・京都大教授 FDシンポ

 第9回関西外大FDシンポジウムが「主体的・創造的な学びを育成する授業を目指して」をテーマに23日、中宮キャンパス・多目的ルームで開かれた。京都大学高等教育研究開発推進センターの松下佳代教授が「深い学習につながるアクティブ・ラーニング―ディープ・アクティブラーニングのすすめ―」と題して基調講演した後、角野茂樹・英語キャリア学部教授と篠原信貴・外国語学部教授が授業実践例について発表した。

▲松下佳代・京都大高等教育研究開発推進センター教授
 

 松下教授は、アクティブ・ラーニングとディープ・ラーニングを結びつけた「ディープ・アクティブラーニング」という考え方の理論について紹介し、アクティブ・ラーニングでは学生の深い学習につながる授業が必要だと説いた。従来のアクティブ・ラーニングに関し、学生や教員の間で「授業は盛り上がっても深いところまで内容を理解したのかどうかわからない」「活動的に見えても深く考えていない授業もある」といった意見があることから、学習の深さに着目したという。
 

 ディープ・アクティブラーニングの内容については、学習者と他者、対象世界との関係において、「学生が他者と関わりながら、対象世界を深く学び、自分のこれまでの知識・経験と結びつけると同時に、これからの人生につなげていけるような学習」と定義する「学びの三位一体論」を紹介。201612月の中央教育審議会答申の中で、アクティブ・ラーニングに関して打ち出された「学びの3つの軸」のうち、「深い学び」を対象世界との関係、「対話的な学び」を他者との関係、「主体的な学び」を自己との関係ととらえ、ディープ・アクティブラーニングでは、「深い学び」を主軸に、「対話的な学び」や「主体的な学び」の実現も目指すと位置づけた。

▲中宮キャンパスで開かれた第9回FDシンポジウム
 

 国立情報学研究所などのAI(人工知能)プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を担当した研究者の「効率良い暗記より、意味を深く理解でき、推論できる教育こそがAI時代の学校や家庭で必要」との発言も引用しながら、AI時代に必要な教育は、意味を深く理解し、自らの実体験に基づいて、論理的、想像的に推論できる力を伸ばすことと指摘した。
 

 実際の学習活動のプロセスでは、能動的学習に必要とされてきた、書く・話す・発表するなどの「外化」だけでなく、「内化」(知識の習得)も必要だとし、「内化と外化をどう組み合わせるかが重要」と話した。また、自身が京都大で担当する全学共通科目「学力・学校・社会」に触れ、内容と能力のそれぞれに関する目標を設定していることや、批判的に読み、議論し、書くための論証モデルを使っていることが学生のプレゼンテーション、論文作成に効果を上げていることを紹介した。

▲角野茂樹・英語キャリア学部教授(左)と篠原信貴・外国語学部教授
 

 一方、授業実践発表では角野茂樹教授が「実践的教育指導観を」と題し、英語キャリア学部小学校教員コースで担当する授業を紹介しながら、教職課程を学ぶ学生たちが理解すべき学習活動(指導法)、今日的な課題と向き合いながらもつべき教育指導観について語った。知識や理解は活用することで深まり定着するとし、そのための「学習リテラシー」(情報の扱いやプレゼンテーション技術)が身についていないといい授業ができないと話し、授業は、学習リテラシーの獲得を通じて「学びを学ぶ」場でもあると指摘した。
 

 法解釈学・労働法を専門とする篠原信貴教授は、座学のスタイルとが一般的な法学の講義の中でアクティブ・ラーニングの手法を取り入れている試みについて語った。例えば、「鉄道会社が女性のみ優遇した料金体系を採用することは憲法14条に違反するか」といった「発問」を教師が投げかけ、問題点を学生に発見させたうえで「議論」に導く方法で、特定の論点の理解を深める目的からだという。ただ、発言する学生が限定される、議論誘導の程度をどうするか、期末試験との関係をどうするかといった課題も示された。

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