IRI連続公開講座 野村亨教授がラテン語とサンスクリット語を語る

 国際文化研究所(IRI)の連続公開講座「見ぬ世の友との出会い―東西の古典を原典で読む―」が1013日と20日の2回に分けて中宮キャンパスのICCホールで開かれました。講師は両日ともIRI所長の野村亨外国語学部教授が務め、2日間で教職員や市民ら約50人が聴講しました。

▲連続公開講座で講義する野村亨教授


 テーマの「見ぬ世の友との出会い」は、「徒然草」第13段の「ひとり灯(ともしび)のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなうなぐさむわざなる」から引いており、野村教授は冒頭、「古典は人類の英知の集積です。講座を通して、古人のいぶきに少しでも触れてください」と参加者に語りかけました。


 講義はラテン語とサンスクリット語について行われ、第1回はラテン語が取り上げられました。野村教授は、この二つの言語が属するインド・ヨーロッパ語族に関して、その祖地は現在のウクライナやトルコだとする説があり、ヨーロッパからアジアまで広く分布し、近代以降は、南北アメリカやアフリカ、オセアニアにも話者が移住して使用地域が広がったことなどを解説しました。現在、同語族は100以上の国で公用語となり、母語話者人口は25億人を超え、国連の6つの公用語のうち、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の4つを占めるといいます。

▲インド・ヨーロッパ語族の分布(オレンジ色の部分)


 ラテン語は、古代ローマ共和国の公用語として普及し、カトリック教会の公用語としてヨーロッパ各地に広まり、現在、バチカンの公用語となっています。野村教授は、「ラテン語は近代においても広く欧州知識人の公用語として用いられました」と述べ、現在も生物の学名や元素名に付けられるなど学術分野で影響力を残していることを指摘しました。


 また、近代ラテン語で著述した思想家や哲学者が多かった例を挙げ、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」という言葉のラテン語訳「Cogito, ergo sum.(コーギトー、エルゴ―・スム)」を原語で発音して紹介しました。さらに、現代日本語で使われているラテン語として、「AERA」(朝日新聞出版の週刊誌、aera=時代)、「プリウス」(トヨタ自動車の乗用車、prius=先駆け)、「りそな銀行」(resona=共鳴せよ)などの例が挙げられました。このほか、ラテン語の文法に関し、7種類の格変化、4種類の活用があることなど初歩的な解説が行われました。

▲講義に聴き入る市民ら


 第2回は、サンスクリット語について話が進められました。インド・ヨーロッパ語族が約4000年前、さまざまな言語に分化したなかでインド語派が生まれ、その中の最も古いヴェーダ語が紀元前5世紀頃にサンスクリット語として標準化・成文化された歴史が語られました。サンスクリット語は死語ではなく、インド憲法で認められた22の公用語の1つで、現代でもごくわずかながら話している人がいるということです。


 野村教授は、サンスクリット語の文字と表記について、母音と子音を実際に発音して解説しました。それは日本語の50音とそっくりな体系であり、「もともと50音はサンスクリット語から日本語に必要な部分だけを集めて成立したからです」と指摘しました。 また、サンスクリット語がかつて日本で梵語と呼ばれたのは、ヒンズー教の神、梵天に由来するためであることが紹介されました。

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