ひらかた市民大学 牛承彪教授が日中韓の「歌の力」について講演

 枚方市と市内5大学で組織する「学園都市ひらかた推進協議会」主催の市民講座「ひらかた市民大学」が114日、中宮キャンパスのICCホールで開かれ、英語国際学部の牛承彪教授が「歌の『力』を考える~日本・中国・韓国の事例から~」と題して講演しました。
 

 牛教授はまず、歌の概念として、「一定の場で、一定の意味を含んだ言葉を一定の節をつけてうたったもの」と定義。歌には、歌詞・旋律・声によって表現された虚構の空間(虚構の場)と、歌い手・聞き手が置かれた具体的な空間(現実の場)の二つの場があると指摘しました。

▲日中韓の歌について語る牛承彪教授
 

 そのうえで、日本古代の男女が詠み交わした「歌垣」(うたがき)、中国の少数民族トン族の「歌掛け」、韓国の田植歌、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された広島県北広島町の壬生の花田植などを紹介しました。
 

 このうち、中国湖南省と貴州省で実地調査したトン族の歌掛けは動画や音声を使って詳しく解説しました。村の市が開かれる日には「歌場」と呼ばれる一種の歌掛けが催され、若者の男性グループと女性グループが恋のやりとりをする例や、村同士の交流行事で、道を遮る障害物を挟んで歌を披露し、歌い終わったら障害物を取り除いて招き入れる慣習が紹介されました。

▲講演を聞く市民ら
 

牛教授は「中国の歌掛けは、率直に気持ちを表さず、歌詞に象徴的な意味が含まれている。歌は架空の内容で遊戯的な意味を含むと同時に、生活空間をきれいにし、けがれを取り除く機能もあった」などと話しました。
 

 韓国の田植歌については、労働歌であるとともに、穀物が速く成長するようにとの願いを込めて「はやす」機能を含んでいること、広島の壬生の花田植は問答の形式を取りながら、生活のさまざまな要素が歌われ、芸術性が高いことが特徴として挙げられました。
 

 最後に牛教授は「歌は場とともに機能も変化する」と述べ、「歌の力」として、恋の成就、心の癒やし、歓迎の儀礼、おはらい、豊作祈願、牛や馬の供養などさまざまな機能があると総括しました。

 

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