イベロアメリカ研究センター主催の連続公開講座 第1回は80人参加 青山茨城大教授がマヤ文明を語る

 関西外大イベロアメリカ研究センター主催の連続公開講座「古代への情熱-米大陸アーケオロジーの最前線-」(全3回)が中宮キャンパス・ICCホールで始まりました。1回目は1110日、青山和夫・茨城大学人文社会科学部教授が「マヤ文明の研究の最前線と魅力」と題してグアテマラの熱帯雨林にある遺跡発掘調査の成果を紹介するなどし、市民ら約80人が聴講しました。
 

 アメリカ大陸には中米のメソアメリカと南米のアンデスの二大文明圏があり、古代アメリカ人はその宇宙観を神殿や都市の構造、石彫、暦、広大な大地などに投影し、自然と一体化しました。だが、今なおその全容は解明されていません。古代人たちは何を考えていたのでしょうか。連続講座では米大陸アーケオロジー(考古学)のフロンティアを探ります。

▲マヤ文明について語る青山和夫・茨城大教授
 

 初回の青山茨城大教授はまず、「誤解だらけのマヤ文明」として、「マヤ人が毎日のように神に生け贄を捧げていた」とされるのは、スペイン人がおおげさに話したためであることや、「なぞの水晶ドクロがマヤ遺跡から見つかった」とされるが、実際は19世紀にドイツでつくられたものであることなど、マヤ文明をめぐって誤解が多いことを紹介しました。
 

 さらに、旧大陸の諸文明が相互に影響し合いながら発展したのと対照的に、中米メソアメリカと南米アンデスの文明は、これら諸文明と交流することなくアメリカ大陸で独自に生まれたことから、「人類史における古代アメリカの二大文明の特異性は明らか」と指摘。マヤ文明の特徴として、洗練された石器の都市文明、多様な自然環境の文明、統一王国がない、多神教、マヤ文字などを挙げました。

▲中宮キャンパス・ICCホールで開かれたイベロアメリカ研究センター主催の連続公開講座
 

 青山教授は、198695年にホンジュラスのラ・エントラーダ地域と世界遺産コパン遺跡を、982007年にグアテマラのアグアテカ遺跡を調査しました。2005年から継続しているグアテマラ・セイバル遺跡の調査により、マヤ文明の起源は従来の説より200年ほど早い紀元前1000年頃までさかのぼることや、公共祭祀を形作り物質化したイデオロギーは地域間交換や戦争などほかの要因と相互に作用し合い支配層の形成に重要な役割を果たしたことなどが判明したといいます。
 

 マヤ文明を学ぶ今日的意義として、マヤ文明は現在進行形の生きている文化であることから異文化を理解すること、さらに西洋中心史観や四大文明から離れてバランスのとれた「真の世界史」の構築に貢献できることなどにあると指摘し、マヤ文明の盛衰は「文明とは何か」という問題を問いかけていると語りました。
 

 青山教授は京都市生まれ。東北大文学部卒。米ピッツバーグ大人類学部大学院博士課程修了。専門はマヤ文明学、メソアメリカ考古学・人類学。1986年以来、ホンジュラスとグアテマラでマヤ文明の調査を行っています。著書に「マヤ文明」(岩波新書)など。
 

 連続公開講座の第2回は1120日、山形大人文学部の坂井正人氏が「世界遺産ナスカの地上絵-最近の研究成果をめぐって-」のテーマで、第3回は11月29日、名古屋大大学院の伊藤伸幸氏が「メソアメリカ文明の先古典期文化-オルメカ文化を中心に-」のテーマでそれぞれ講演します。

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