中米文明の母 オルメカ文明を紹介 イベロ研主催連続講座最終回 名古屋大助教、伊藤伸幸氏

本学イベロアメリカ研究センターが主催する連続公開講座「古代への情熱―米大陸アーケオロジーの最前線―」で最終回となる第3回の講座が11月29日、ICCホール4階で開かれ、約50人の一般や学生の聴衆が熱心に耳を傾けました。

 この日の講師は名古屋大学助教、伊藤伸幸氏。主に紀元前1200年から同400年にかけ、現在のメキシコ南部からグアテマラの地域(メソアメリカ)で栄えたオルメカ文明について紹介、解説しました。

▲名古屋大学の伊藤伸幸氏


 オルメカ文明で知られるのは、巨大な石を加工した人間の頭部の彫刻。「この石の人間の頭部を見たとき、さまざまに想像力がかきたてられ、研究の道に進もうと思った」と伊藤氏。会場のスクリーンに映された巨石人頭像は重さ約4トンで、人頭像のなかでは小さい方だといいます。人頭像はあたまにヘルメット様のものをかぶっており、宗教的儀式だった球技への参加を示しています。

▲スクリーンで紹介されたオルメカ文明を象徴する巨石人頭像。「サン・ロレンソ4号記念物」は重さ約4トン

 石彫だけでなく、オルメカ文明では高度な技術が用いられていました。巨大な人頭像かその材料となる石材を運搬したり、硬い蛇紋岩(じゃもんがん)や翡翠(ひすい)を加工、土で作った巨大なピラミッドのような建造物や、現在のサッカーグラウンドと同等の広さを持つ球技場を建設する土木技術を持っていました。

 メソアメリカにおける考古学の進展に伴って、なぞとされていた巨石人頭像の制作や意義も解明されてきました。遺跡には巨大な石を加工した玉座とみられるテーブル状祭壇が残されています。この玉座を詳細に調べたところ、玉座を加工して人頭像にしていることが分かったといいます。「玉座に座っていた支配者が亡くなるなどした後、その支配者をしのんで玉座を人頭像にしたのではないかとみられる」。

 オルメカ文明は、メソアメリカの最初の文明とみられており、後の文明にさまざまな影響を与えたとされています。

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