公開講座 第4回IRI言語・文化コロキアム バイリンガル教育とイマージョン授業

 本学国際文化研究所が主催する公開講座の「第4回IRI言語・文化コロキアム」が1月27日、ICCホールで行われ、教職員や学生、一般の受講者ら計35人が参加しました。司会・進行を同研究所所長で外国語学部の野村亨教授と、京都大学の杉本均教授がつとめ、東洋学園大学の末藤美津子教授と亜細亜大学の小張順弘講師が基調講演。その後、4人でパネルディスカッションを行いました。

 

開会の挨拶をする野村亨教授

 

 公開講座の冒頭、杉本教授が、この日のテーマ「多文化社会におけるマイノリティ言語と英語の教育―バイリンガル教育とイマージョン授業の可能性―」について概要を説明しました。

 近年、クローズアップされているイマージョン教育とは、母語でない言葉―多くは英語―で、理科や算数など認知的な内容の理解を行う教育。杉本教授は多言語を学ぶ教育土壌を持つシンガポールと、英語が授業言語になっているブータンの例を引いて、バイリンガル教育とイマージョン教育の特徴などを示しました。

 

▲杉本均教授

 

 続いての基調講演では、まず末藤教授が「アメリカにおけるバイリンガル教育の歴史と現状」と題して、異なる言葉を用いる多民族で構成される国での変遷を分析しました。バイリンガル教育のなかには、母語から英語への言語の移行を目指す「移行型」▽母語と英語の2言語両方の発達を目指す「維持型」▽英語が母語の子供にもマイノリティの言葉の習得を促す「双方向イマージョン・プログラム」があります。

 アメリカの言語教育政策の特徴は、合衆国憲法に言語に関する規定がないことです。このため、英語以外の言語に寛容な時代は、不寛容に、そして連邦政府の政策関与へと対応が変わってきました。バイリンガル教育法に対しても、支持、反対、復活と変遷。マイノリティ言語―ほとんどがスペイン語―と、英語を一般授業で両方使用する「双方向イマージョン・プログラム」を採用する学校が急増している現状が紹介されました。

 

▲末藤美津子教授

 

 次に基調講演をしたのは小張講師。「フィリピン多言語社会の言語教育政策―日本の英語教育を視野に―」がテーマです。方言なども入れると184言語と言われるフィリピンの言葉は主に、「国語・公用語」のフィリピン語▽「公用語」の英語▽「広域通用語」のセブアノ語やイロカノ語に分類されます。第2次世界大戦後の独立で70年代半ばまでは土着言語政策。その後、英語教育の利点が再評価され、バイリンガル教育に転換。2009年に母語と国語、英語を橋渡しする「母語を基礎とする多言語教育」に変遷してきました。

英語教育と密接につながったフィリピンでは、英語を利用した産業が勃興しました。そのひとつが英語以外を母語とする人向けの英語教育(ESL)産業。2010年ごろから、日本人向けにカスタマイズされたプログラムが盛んになっています。こうしたトレンドは、フィリピン英語留学のパッケージング、オンラインでの英会話教室など、手軽で安く、効率良く快適な英語教育という選択肢をもたらすようなったと、小張講師は分析していました。

 

▲小張順弘講師

 

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