「中南米と日本をつなぐ架け橋」 中前隆博外務省中南米局長が講演 外交講座

 キャリアアップをめざす学生が現役外交官から外交の現場について聞く「外交講座」が11月7日、中宮キャンパスのマルチメディアホールで開かれ、外務省中南米局の中前隆博局長(58)が「中南米と日本をつなぐ架け橋」と題して講演しました。国際関係やラテンアメリカについて学ぶ学生ら約90人が聴講しました。御殿山キャンパス・グローバルタウンの会議室でも中継されました。


▲外交講座で講演する中前隆博・外務省中南米局長

 中前局長は1985年、外務省入省。総合外交政策局国連政策課国際平和協力室長、中南米局中米課長、国連日本政府代表部公使、在ブラジル日本大使館公使、在サンパウロ日本総領事館総領事などを経て、2017年7月から中南米局長。

 中前局長はまず、中南米について、33カ国で構成され人口6億人、GDP5兆㌦などと説明し、「そのうちの3分の1がブラジル、その3分の1がサンパウロ。ブラジルは世界一の親日国といわれる」と話し、ブラジルで年中行われている盆踊りや、百人一首の競技の映像を見せて日本文化の浸透ぶりを紹介しました。

 そのうえで、「今の外交は、相手国の世論の支持がないと、政府と政府が合意したことが前に進まない」と述べ、外国の世論に働きかける「パブリック・ディプロマシー」(広報文化外交)の必要性について話しました。


▲中前局長の話を熱心に聞く学生たち

 その一例として、日本外務省が対外情報発信拠点として、ロサンゼルス、ロンドン、サンパウロの3カ所に設けた「ジャパン・ハウス」の活用が挙げられました。日本の工芸品の展示や日本の有名音楽家のコンサートを行ったり、ブラジルの著名人を集めたりすることで、日本文化を印象づける取り組みが紹介されました。

 中前局長は、「日本はこれまで支援する外交を行ってきたが、これからは民主主義や法の支配など大切にしてきた価値を前面に出し、『一緒にやろう』と理念やアイデアに訴える外交が重要だ」だとし、そのためには相手国の世論に理解してもらう必要があると述べました。また、中南米諸国と取り組める共通の課題として、非核化や防災などを挙げました。


▲質問する学生

 質疑応答では、学生から「日本の国益だけではなく、中南米の国益も考えていかなければならないのでは」「これからの国際社会で大切と思うことは何か」「日本と中南米のよりよい関係のために何が必要か」などの質問が出ました。


▲谷本義高学長と懇談する中前局長

 講演に先立ち、中前局長は、谷本義高学長を表敬訪問し、意見交換しました。中前局長は、外交について国内で話をすることがあまりないのでいい機会になると話し、谷本学長は学生にとって国際社会で活躍する人の話が聞ける貴重な講座になるなどと応じていました。
 
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