イベロ研 連続公開講座「新大陸からの贈物」 最終第3回はスーパー野菜トマトがテーマ

 イベロアメリカ研究センター主催の連続公開講座の最終となる第3回講座が11月26日、中宮キャンパスのマルチメディアホールで開催されました。この日のテーマは「アンデス原産スーパー野菜―トマトの魅力―」。本学短期大学部の沼田晃一教授が講義を行い、48人の市民や教職員が聴講しました。

▲第3回の公開講座のテーマはトマト

  沼田教授は住友商事株式会社の商社マン出身。ペルーの現地法人社長などを経て、退職後は東京農大で博士号(環境共生学)を取得した“トマトの専門家”です。この日の講義では、日本ではあまり知られていないトマトの実態について、さまざまな角度から解説しました。


▲質問に答える沼田晃一教授

  トマトは世界で最もたくさん生産されている野菜で、最大の消費国は中国です。一人あたりの年間消費量ではギリシャ、イタリア、スペインなど南欧や、トルコ、イスラエルなど中近東、アメリカ、カナダなど北米が多くなっています。日本は、トップのギリシャの13分の1の消費量にとどまっています。
 沼田教授はこの現象について、日本では生食用のピンク系のトマトがサラダなどで食べられ、トマト消費の多い国は赤系のトマトを料理の材料や調味料として用いるためだと分析しています。
 トマトは5000年前ごろにはもうアンデス山脈で食用になっていて、メキシコに伝わりアステカ族が栽培していたとみられます。16世紀に入って中南米に上陸したスペイン人がトマトをヨーロッパにもたらしました。17世紀に入って、ヨーロッパ経由かアメリカ経由で日本に伝えられました。江戸時代は真っ赤な色から食用ではなく観賞用とされていました。


▲日本に伝わったトマト。カボチャのようにひだが入っている。左は狩野探幽のトマトの画

 沼田教授はトマトについて、まず「グルタミン酸を有していて、甘味、酸味、旨味のバランスのとれた天然の調味料である」と定義します。特に肉や魚介が持つイノシン酸と合わさった場合、料理をとてもおいしくすると説明しました。
 またトマトは、活性酸素を消去する力を持つリコピンを多く含んでいます。美白、がん予防、糖尿病予防、肥満、動脈硬化予防に効能があるとされます。沼田教授は約20年間、トマトジュースを飲み続けて、自ら実証実験を行っていると明かし、「赤系、つまり生食よりトマトジュースのトマト方がリコピンは豊富で、オリーブオイルとともに摂取すると吸収率が高くなります。ただし、毎日継続して摂取しないと効能はありません」と話していました。
 実業界での経験が長いことから、沼田教授は、トマトの栽培法の新たな発見、収穫したトマトの消費方法、料理方法やトマト製品の種類まで、具体的に事例を挙げて解説していました。


▲具体的な事例や商品を示して解説した沼田教授の講義

 この日は公開講座の最終回で、イベロアメリカ研究センター長の林美智代教授が「無事に今年の公開講座を終えることができました。来年も同じ時期に行いたいと思っておりますので、お誘いあわせの上、ぜひお越しください」とあいさつしました。
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