英国の大学と教育を紹介するセミナー「エリート教育の選択」を東京で開催 秦由美子・外国語学部教授が講演

 外国語学部の秦由美子教授が代表を務める日英欧研究学術交流センター(RIJUE)とインターグループ(小谷寿平代表)が主催し、イギリスの大学や教育について紹介するセミナー「エリート教育の選択」が4月6日、東京・赤坂インターシティコンファレンスセンターで開かれました。秦教授が「パブリック・スクールと日本の名門校」と題して講演しました。


▲セミナーで講演する秦由美子教授

 幕末には英国における最初の日本人留学生と言われている伊藤博文、井上馨ら5人の長州藩士がロンドン大学に留学し、明治維新における近代国家の礎を築きました。それから150年が経過した現在、国際社会の中で日本の将来を担う人材を育てるための一環として、優れた人間教育を行っていると考えられるイギリスの教育やイギリスの大学への理解の醸成に資すべく、このセミナーが開催されました。

 果たして、グローバル化の進む中、ITの進展やAIの進化による劇的な社会変化が引き起こされているこの時代を生き抜くために必要な人間としての素養とは何なのでしょうか。AIでは代替できない人間教育について秦教授は語りました。

 第一部で秦教授が行った講演の内容は、①日本の大学を巡る概況(イギリスとの比較)②イギリスの教育③パブリック・スクールと日本の名門校。そして、④日本の教育への示唆を述べました。

 第二部はパネルディスカッションが行われ、日本人のオックスフォード大学生4人が英国式の教育について、モデレーターのNHK報道局・国際部の長尾香里氏と活発な意見交換をしました。


▲秦由美子教授(中央)とセミナー参加者

 オックスフォード大学生4人は、清泉インター中学・高校からオックスフォード大学に進学した女子(心理学専攻)、 ロンドンのプレップ・スクールからハロウ校を経て進学した男子(テクノロジー専攻)、巣鴨中学・高校からシックスフォームを経て進学した男子(物理学専攻)、スイスでの学校を経て、イートン校から進学した男子(ロシア語・仏語専攻)。長尾氏も、パリ、ブリュッセルでの駐在を経験し、イギリスだけでなく、ヨーロッパ各国への留学の窓口を日本でもっと広げるべきだと痛感したと話しました。講演の情報は文部科学省を通じて、在日英国大使館にも伝えられました。
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 以下は、秦教授の講演の背景

グローバリゼーションの包含する意味
 グローバリゼーションという言葉が引用され始めたのは年代的には古く、1960年代にマクルーハン(Herbert M. McLuhan)が唱えた「グローバル・ビレッジ」の概念からと言われている。マクルーハンはグローバル・コミュニケーション・ネットワークにより世界が一つの地球として結ばれると示唆した。社会現象としてのグローバリゼーションは経済の領域から始まったとされるが、その後、1990年前後の「ボーダーレス化」、「トランスナショナル」を経て、社会学者が「グローバリゼーション」という言辞を使用し始め、2001年9月11日の同時多発テロ以降、更に「グローバリゼーション」という言葉が頻繁に使用されるようになったように思われる。

 コミュニケーション技術の進歩、情報テクノロジーや輸送手段の目覚ましい発達が「時間と空間の圧縮」し(Harvey 1989)、多くの国が国際コミュニケーション・ネットワークにアクセスできるようになり、「船あるいは飛行機で」求めた学びも自国の自室に居りながら手にすることができるようになった。

 世界経済の統合はグローバリゼーションを促進しているが、トムリンソンによれば、グローバリゼーションは、政治的、社会的、文化的、経済的要因の結合によって引き起こされているという。グローバリゼーションは、「経済、政治、社会、対人関係、テクノロジー、環境、文化」といった領域を複合的に結合(複合的結合性)しているのである。

 しかし、メリットのみではない。その一方で、グローバリゼーションの進展の結果、世界が直面する問題がローカルな我々の生活にも直接かつ重大な帰結をもたらすという事態をも引き起こした。つまり、グローバリゼーションは民主化プロセスを可能にもするが、他方で不平等の拡大も誘発し、グローバル・ジャスティスを求める側からは、その手段としてテロリズムが利用されたのであった。

 大野は、グローバリゼーションには「中心国がすでに優位に立つ分野に自分が設定するルールで他国を参加させ、その優位性を拡大再生産するという側面があることも否定できない」(大野 2000,iii)と述べていることも一見識である。 (秦由美子)
 
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