大学院主催「英語教員のための夏期リフレッシャーコース」 約50人が学ぶ

 関西外大大学院主催の「英語教員のための夏期リフレッシャーコースー英語教育の理論と実践の統合をめざしてー」(大阪府、大阪市、枚方市各教育委員会後援)が8月5日から9日まで、中宮キャンパスのICC(インターナショナル・コミュニケーション・センター)で開かれました。中学・高校を中心とする英語教員らが英語教育学の成果を学び授業力の向上につなげるのが目的で、英語教員を志望する学生や市民も含め約50人が参加。本学教員13人が講師を務めました。


▲開講式であいさつする大庭幸男・大学院外国語学研究科長(外国語学部教授)

 初日の5日に開講式があり、大学院外国語学研究科長の大庭幸男・外国語学部教授があいさつで「大学ではさまざまな分野で事実の追究や理論の解明を行っており、その過程で得られた知見やデータは学校教育に生かすことができるものが多い。大学に求められるのは、それら知見やデータを教育現場や地域の人々に紹介し、英語教育に生かしてもらう形で貢献することだと思う」と述べました。
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学習の定着を図る指導法を考える
 8日に行われた村上裕美・短期大学部准教授の講義は「学習の定着を図る指導法―英語授業学の観点から」をテーマに、学習者の参加型授業やコミュニケーション能力の育成を求める声が強まっている中で、学習動機を刺激しつつ、学習内容が定着し、自律した学習者を育成する授業が必要との立場から進められた。


▲講義の中で参加者に声をかける村上裕美・短期大学部准教授(左)

 講義の冒頭、色とりどりの卵形プラスチックケースが参加者に配られた。中には、「いつ富士山に登れる?」などと英語で書かれたメモが。同じ色の卵形プラスチックケースを配られた参加者同士がペアとなり、メモの質問に答え合う形で授業が進んだ。

 「イエス、ノーという答えだけでなく、いろいろな質問を繰り返すとパターンができてくる。大学生でも単語はたくさん覚えても、整理できずに言葉が出てこない人もいる。引き出しの中がパンパン状態。パターンやフレーズを使えるようになれば、モチベーションにつながるのではないだろうか」と村上准教授。

 英語の各技能の指導法やその理論を考える英語科教育法に対し、実際に授業で起きている現象に着目し、改善や工夫を促す英語授業学の観点から話が進む。「教師だけが苦労しても授業をよくできない。生徒や学生を理解する必要がある」「名人芸の授業をまねるだけでは改善と工夫とはいえない。名人芸に対する分析や考察が重要」「自身の授業を内省すべき」などと考察点が示された。


▲参加者同士が意見交換する場面が多い村上准教授の講義

 「自分の授業風景を思い出して」と、用意された紙に思い思いの授業の風景を描いてもらう。村上准教授は「学生に描かせると、ほとんど全景が前向きで、先生がおり、その後ろにホワイトボードがある絵になる。前から先生が消えるにはどうすればいいか」と問いが投げかけられ、再び、同じ色の卵型プラスチックケースの参加者同士が話し合う。この後、参加者が良いと思った絵が張り出されたーーグループ討議する生徒の間を教員が動き回る絵。

 講義中、参加者はディスカッションを繰り返しながら、学習の定着と教員の役割、ペア・グループを活用した学習活動のあり方、身体の動きを伴う記憶方法などの課題を考えた。まとめとして、「教師の役割は学びの水先案内人(ファシリテーター)である。真の学びの定着はそこから生まれる」などの指摘があった。
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 最終日の講義終了後に修了式があり、参加者一人ひとりに大庭教授から修了証が手渡されました。この後、講師を交え、懇談会が開かれました。

講師とテーマ(日程順)
 大庭幸男・外国語学部教授「動詞の特性と自他交替」
 新里眞男・外国語学部教授「授業でのInteractionの試みーCEFRのSpoken Interactionを参考にして」
 近藤富英・外国語学部教授「アメリカのドラマから見る英語圏の発想と価値観の違いについて」
 益岡隆志・外国語学部教授「日本語から英語を見るー言語対照による言葉の相対比」
 西村孝彦・英語国際学部教授「 “Visualizing and Output” 」重視の英語教育―発信型アクティブラーニング」
 小栗裕子・外国語学部教授「学習意欲を高める指導法―コミュニケーション能力育成の視点から」
 小谷克則・英語キャリア学部教授「言語教育とコーパス」
 澤田治美・外国語学部教授「意味論・語用論を活かした英語の授業― “will be ~ing” 構文の意味解釈をめぐって」
 村上裕美・短期大学部准教授「学習の定着を図る指導法―英語授業学の観点から」
 中嶋洋一・英語国際学部教授「今、登らせようとしているのは『正しい山』ではなく、『正しい(と教師が思い込んでいる)山』になっていませんか」
 山梨正明・外国語学部教授「認知言語学―英語教育への適用の可能性を探る」
 岡田伸夫・英語キャリア学部教授「場面や文脈を利用した文法指導」
 伊東治己・外国語学部教授「English Language Education in Japan and CLIL (Content and Language Integrated Learning): With a special reference to CLIL in Finland」


 
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