イベロ研 連続公開講座「外国人労働者との共生」 第1回 筑波大・明石准教授

 本学イベロアメリカ研究センターが主催する2019年連続公開講座「外国人労働者との共生―ラテンアメリカと日本を結ぶきずな―」で、第1回の講座が11月4日、中宮キャンパスのICCホールで行われ、参加した一般市民や学生が熱心に耳を傾けました。筑波大学人文社会系准教授の明石純一氏が「転換期を迎えた日本の外国人・移民政策―課題と展望」と題して講演。明石氏は「2018年の入管法改正で、日本は転換期を迎えている。外国人との共生は今後数年が勝負どころ」と話しました。


▲筑波大学人文社会系准教授の明石純一氏
 
 明石氏は、移民政策や外国人労働者に関する著書を多数手がけ、法務省の難民審査参与員や入国管理政策懇談会委員などを務めるスペシャリスト。「日本の歴史において移民政策は進んでいなかった。昨年12月の入管法改正は大きな転換期となります」と説明しました。
 法務省の統計(2018年末現在)によると、日本在留の外国人は273万1093人。日本で働く労働者は年々増えており、2018年で約146万人と、10年間で約100万人増加しています。日本における外国人の受け入れの歴史について、明石氏は「バブル期に外国人労働者を受け入れたことで『サイドドア』が開いた」と話しました。以降、1990年代から外国人労働者の依存が始まり、リーマンショックや東日本大震災で減少するが、「2013年以降、受け入れが本格化した」と明石氏。
 続いて「入管法」の改正に至った過程を説明。2013年に「2020年オリンピック・パラリンピック東京開催」が決定したことで、労働力不足の問題が確実となることが分かりました。2016年の自民党の方針「『共生の時代』に向けた外国人労働者受け入れの基本的考え方」をターニングポイントに、「強烈なリーダーシップのもと短期間で成立させた」と解説しました。


▲公開講座の様子

 この法改正により象徴的効果や企業・事業主の意識、拡大運動の可能性が考えられる一方、相対的効果、相殺効果、総量効果としては「さほど変わらないのでは」と明石氏。さらに、日本社会において、外国人材の受け入れや共生に関する総合的対応策については、一元的窓口に係る地方公共団体への支援制度(「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮)」の創設、出入国在留管理庁の設置で、「これまでの縦割り行政ではなく一元化した対応が期待できる」。ただし、地方自治体の多文化共生施策の動向として地方間格差が拡大する危惧もあるとしました。
 「スタートしたばかりで、変化が現れるのは来年以降でしょう。オールジャパンの体制で、どうすれば外国人と共生できるかは今後数年が勝負どころではないでしょうか」と展望を述べました。


▲イベロアメリカ研究センター長の林美智代・本学外国語学部教授
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