イベロ研 連続公開講座「外国人労働者との共生」 第3回 立命館大学Disner Gutarraさん

 本学イベロアメリカ研究センター主催の2019年連続公開講座「外国人労働者との共生―ラテンアメリカと日本を結ぶきずな―」の第3回講座が11月26日、中宮キャンパスのICCホールで行われました。立命館大学環太平洋文明研究センターのDisner Gutarra(宮多良 ディスネル)さんが「日本に住むスペイン語圏の国にルーツを持つ児童生徒が直面する問題と現状について」をテーマに講演。参加した一般市民や学生が熱心耳を傾けました。
 Gutarraさんは15歳のときにペルーから来日した日系4世で、大阪外国語大学、大阪大学大学院を卒業。現在、本学外国語学部の非常勤講師も務め、大阪府内にある小中高の外国人児童生徒の母語サポーターとしても活動しています。今講座では、自身の体験を交えて、スペイン語圏の国をルーツに持つ児童生徒が抱える問題と現状について講演しました。


▲自身の体験を交えて講演する日系4世のDisner Gutarra(宮多良 ディスネル)さん

■日本での生活で直面する3つの壁 「制度」「ことば」「人とのつながり」
 はじめに、現在、日本語指導が必要な外国人児童生徒は4万485人とされており、また2019年度文科省の全国調査では1万9654人の外国人児童が不就学の可能性があると説明しました。Gutarraさんは「来日した日系人が、日本で生活するには3つの壁があります」と話します。それは①就学に関する制度の壁②言葉の壁③人とのつながりです。
 まず、①の制度の壁とは、義務教育・小中学校と高校の違いで戸惑いが生まれるほか、奨学金の受給資格といった金銭面の問題も生じます。次に②の言葉の壁については、母語の定義を説明。日本に住む外国人児童が母語と日本語を自在に操るバイリンガルになるのではなく、なかにはどちらもおぼつかないダブル・リミテッド型の子供もいると解説します。日本語の指導や母語とのリンクがうまくいかないと〝学習困難〟つまり学力が身につかず、「マイナスの概念がない15歳の子もいました」と話しました。そして③人とのつながりについて、言葉の壁が影響し、人間関係が築けず学校で疎外感や孤立感を感じると話します。また「母語喪失への不安」を挙げ、学校で日本語を使うために母語を話せなくなり、母語を話す家族とコミュニケーションがうまくいかない問題があると続けました。
 Gutarraさん自身は以前、友人が日本語で発した「子供の面倒を見る」に違和感を覚えたといいます。日本語の「面倒」は「嫌なこと」と理解していたため、その友人が「子供の世話をするのが嫌な人」と捉え、誤解しそうになったといいます。また、来日して高校に編入した際、担任教師の大阪弁が理解できなかったり、友人に質問を繰り返したりするなど「今でいえば、空気の読めない子供でした」と明かしました。
 
 
▲Gutarraさんの講演に耳を傾ける参加者たち

■外国人児童生徒が直面する問題 課題と取り組み
 続いて、外国人児童生徒が直面する問題への課題について、「学校での受け入れ体制の確立」「外国人児童生徒に対する理解」「教育委員会、地域との連携」「進路サポート」を挙げました。そして現在では国内でさまざまな取り組みをしていることを紹介。日本語教育や通訳サポート、母語教育(母語教室)、教科学習サポートなどがあります。Gutarraさんも長年、母語教室に携わり「10年前に関わった子供が現在、この活動に加わっていると知り、感動しました」といい、このように次世代へつながっていくことが大事と話します。また「次の母語教室を楽しみにしてくれている子供もいて、オアシス的な存在になっている。今後も活動を続けようと思いました」と締めくくりました。

 最後に、林美智代・イベロアメリカ研究センター長(本学外国語学部教授)が「ラテンアメリカ研究に携わる者として、日本に住む日系人の話や専門家の話を聞いていました。そして外国人労働者の受け入れを進める政府の政策にはそんな実情が生かされているのだろうかと疑問を抱いていました。身近でリアルな問題として今回の連続講座のテーマとしました。3講座を通して、『働く人の背後には必ず家族がいる』という問題を含め、外国人労働者との共生を考えなければならないと再認識しました。少しでもみなさんのお役に立てればと思います」とあいさつし、今年の連続公開講座が終了しました。


▲林美智代・イベロアメリカ研究センター長


▲司会を務めた小林貴徳・短期大学部助教
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