2022年秋学期より関西外の留学生別科で学ぶSTEELE, Seth Landisさん。
漢字が得意で、読み書きはもちろん、日常的な会話もほぼ問題なくできるほど日本語の運用能力が高い。
そんな Seth(セス)さんのおすすめの日本語勉強法は、
で、セスさんが日本語を学んできた経緯については、以下をご参照ください。
※クリックすると該当箇所に飛びます。
*インタビュー内容は取材時のものになります。
学生プロフィール

学生プロフィール
- STEELE, Seth Landisさん(愛称:セスさん)
- ノースカロライナ大学 ウィルミントン校(University of North Carolina Wilmington)
- 専攻 Film Studies、副専攻 Japanese, Philosophy
来日し、現在は外大生と留学生が協働生活を送る「GLOBAL COMMONS 結 -YUI- 」で生活を送る。
毎週末には関西圏の観光スポットなどにお出かけし、これまでに神戸や奈良、USJなどに赴いた。

アメリカに帰りたくないくらい、日本での毎日が楽しく、充実しています!
セスさんが日本語・日本文化に触れ、学んできた経緯

セスさんが日本に興味を持ったきっかけは、幼少期に見た『NARUTO -ナルト-』のアニメだった。

「ナルト」の中で神道とか仏教のことが出てくるので、日本の宗教的なことに興味をもちました。
それでマンガはもちろん、日本の宗教や文化に関する本を英語で読みだした。
そして、日本語を意識的に勉強し始めたのが中学生のときだった。
中学校の授業で日本語に触れる

通っていた中学校で日本語の授業があり受講した。
教科書は担当した先生が自作したオリジナルのものだったが、今から振り返ると日本語的におかしいところが少なからずあったという。

細かな間違いもありましたが、基本的には教科書の中だけでしか使わないような言葉で、自然な感じの文章ではありませんでした。
――日本人が英語の教科書で「this is a pen」とかやってるような感じ?

そんな感じ! 言うとしたら「this pen」。もっと短い。
だから俗語というか、日常的な言い回しからはかけ離れた表現が多かった。
――その間違いなどについては、当時気づいてたんですか。

そのときは今ほど知識がないから、そんなにおかしいと思ってなかったけど、その後、自分で勉強しているときに「おかしい!」と思いました。
アプリを使って漢字を効率的に学習!

基本的には独学で日本語や日本文化について学んでいたセスさんだが、高校になった頃、新しい勉強方法に出会う。
それが「WaniKani」という漢字学習アプリだ。


漢字の勉強が一番好きで、WaniKaniを使ってこれまでに1,700の漢字をマスターしました。
レベル60くらいまであって、現在私のレベルは50です。
――かなりレベルが高いですね。好きな漢字はあったりするんですか?

全部好きだけど、あえていうと「藤」が好き。複雑なところがいいですね。
大学から日本語を本格的に学び始める

セスさんが所属するノースカロライナ大学 ウィルミントン校では、
- 映画
- 日本語
- 哲学
の3つの専攻があり、日本語が学べることも同大学に進学する理由のひとつとなった。
映画(Film Studies)を専攻しているが、今では副専攻の日本語の比重が大きくなり、「他の何よりも日本語に精進しています(笑)」とセスさん。

仏教への興味も深くなり、英語と日本語で仏教関連の本を読むようになりました。
また、先学期(2021)にはオンラインで関西外大の関西弁の授業を受けた。
関西外大に来て、関西弁の理解も今まで以上に深まったという。

話すことはできないけど、特定の言葉、表現だったら少し話せます。
――どんなのを覚えたんですか?

「行けたら行くわ」「お金貸してくれへん?」(笑)
――誰に教わったんですか(笑)

関西外大で出会った日本の友だちに(笑)
関西外大の図書館で本を読むのが最高の時間

学内の図書館に行って、アットランダムに本を読むことが関西外大に来てからの日本語の一番の勉強方法となっている。
日本語で、主に
- 宗教
- 哲学
の本を読む。
特に興味深いのは宗教の本だそうで、例えば同じ仏教の本でも、英語と日本語では大きく内容が違うという。

例えば死後の世界で、仏教には極楽浄土という考えがありますが、その説明がキリスト教の「天国」のようになっている。
実際のコンセプトは全然違うけど、英語の本はわかりやすく伝えるために、キリスト教のイメージに意図的に寄せていっている。
大学に入ったころに仏教徒になり、今も書籍を通じて日々勉強をしているというセスさん。
日本だと、お寺をはじめ歴史的な仏教関連の建物がたくさんあるので、京都や奈良を中心に寺社仏閣を巡るのも楽しみの一つとなっている。

月1回、清水寺でガイドを行っている関西外大の通訳ガイドクラブ I.G.C.にも入りました。現在、清水寺について勉強中で、ガイドとしてデビューする日を今から楽しみにしています。
日本に来てスピーキングが飛躍的に向上する

アメリカにいる時から熱心に漢字を勉強していたこともあり、日本語を読む力はそれなりに自信があったが、逆に話すことはそれほど得意ではなかった。
ただ、関西外大に来てわかずか1カ月あまりで、飛躍的にスピーキング力が向上したという。

アメリカにいたときは日本語を話す機会がほとんどなかったけど、来日してからは日常的に話すので、必然的に上達していきました。
外大生の友だちはもちろん、コンビニに行くときとかも「日本語を使える機会があるかも」って、いつもワクワクします。
――コンビニで店員さんとお話したりするんですか?

日本人の友だちに、この前「あざす!」(ありがとうございます)を習った。
だからレジ終った後、「あざす!」って(笑)
――店員さん、びっくりしたんじゃないですか(笑)

「日本語、上手ですね」って。そこからまた会話が生まれるから楽しい。
コンビニはいろいろ売ってて便利だけど、それとともに、教わった言葉をトライする場にもなっています。
また、関西外大で開講されている日本語の授業もスピーキングやライティングの上達に大きく貢献した。
アメリカでは教科書的な言葉しか学べなかったが、日常的に使われる俗語や敬語、論文で使う言葉などを授業で学んでいる。

日本語だけしか使わない授業があるんですけど、クラスメイトも日本語が上手な学生ばかりで、とても楽しく、勉強になっています。
日本語の授業は、アメリカにいたときより断然関西外大で学ぶ方がいいですね。
セスさんのおすすめの日本語勉強法

セスさんの日本語勉強法の基本は、マンガでも書籍でもまずは作品に当たり、そのコンテクスト(背景、文脈)を読み解き、言葉の意味などの理解を深めていく。
例えば、アニメを題材にした場合、
- まずはアニメを見る
- 作中に出てきた語彙をピックアップ
- その語彙を調べ、日本語の理解を深める
といった感じだ。
この勉強法を自分で考え、主に大学入学以降に実践している。
そんなセスさんが、日本語勉強の教材として特にお勧めするのが、
- マンガ
- 漢字学習アプリ(WaniKani)
で、具体的にそのおすすめポイントについて聞いてみた。
日本のマンガを日本語で読む

初学者にも上級者にもおすすめなのが日本語でマンガを読むこと。
小説よりもマンガの方がオススメだという。

画があって文章があるので、文字がしっかり読めなくても画を見たらだいたいの意味がわかります。
特に複雑な漢字が出てきたときとかは、小説よりもマンガの方が理解が進みやすいので、いい勉強法だと思います。
アメリカにいるときは英語でマンガを読んでいたが、日本に来てからは日本語のマンガを数多く読んでいるというセスさん。
よく利用するのがブックオフで、100円売られているマンガを少年漫画、青年漫画などジャンルを問わず、まとめ買いしている。

この前もお店に行って30冊以上買いました。いろいろなジャンルのものを買って、気になってた『乙嫁語り』も手に入れました!
漢字学習はアプリ(WaniKani)を活用

上でのご紹介したように、セスさんは高校生の時から「WaniKani」という漢字学習アプリを使って、漢字の知識を増やしてきた。
今でも毎日1時間は同アプリを使って勉強しているそうで、これが何よりも漢字の習得につながっているという。

レベルに合わせて、効率よく学べるのでおすすめです。
スマートフォンが見られる環境であれば、いつでも、どこでも勉強できるのもいいですね。
また、セスさんいわく、「漢字を理解できると、日本語がちょっと簡単になる」とのことで、その詳細については次の断章で紹介する。
漢字を理解することで、日本語の勉強が簡単になる!?

一般的に、欧米をはじめアルファベットを用いている言語を母国語として使用している国の人たちが、日本語を勉強する際に口をそろえるのが「漢字の難しさ」だ。
セスさん自身、初めて漢字に触れた際は、とっつきが悪く、全然わからなかった。

ただ、私にとって日本語の文法は英語ほど理不尽じゃなくて、漢字のおかげで、漢字さえわかっていれば、だいたいの意味が読み取れます。
――もう少し詳しく教えてください。

アルファベットが全部読めても、言葉がすべて読めるわけではないし、意味もわからない。
例えば、難解な英語の文章があったとして、特定の言葉が全然わからないと意味は理解できません。
――逆に日本語の場合、漢字の意味さえわかっていれば、文章が正確に読めなくてもある程度の文意は理解できると?

そうです。日本語の場合、漢字が読めたら、意味もわかりますよね。多少、前後がわからなくてもそれでフォローできるみたいな。
というわけで、日本語の初学者にとって漢字のハードルは高いけど、それをクリアすることによって、日本語の学習が飛躍的に楽になるというのがセスさんの実体験を踏まえたアドバイスだ。
さいごに

読むこと、書くことと比較して、話すことに関しては自信がなかったというセスさん。
ただ、関西外大に来て、日常的に日本語に触れる機会が増え、スピーキング力が飛躍的に伸びたと言います。
そんなセスさんのオススメの日本語勉強法は、
というもの。

日本語能力試験は現在N3(=日常会話を理解できるレベル)ですが、引き続き日本語の勉強に精進し、次のレベル(N2)をめざすとともに、漢字検定も受けたいと考えています。
大学卒業後は日本の大学院に進む予定で、将来は日本で哲学の研究者になるのが目標。それ以外の道としては、通訳か翻訳家など、日本語のスキルを活かせる仕事に就きたいなと考えています。