2023年6月24日、慶應義塾大学(東京)で「第4回全日本大学生中国語スピーチコンテスト」兼「第22回『漢語橋』世界大学生中国語コンテスト日本予選」が開催されました。
同大会に参加した本学の佐野いつみさん(英語国際学科4年)が、「第22回『漢語橋』世界大学生中国語コンテスト日本予選」で2位に入賞しました。
この記事では、同大会の様子をはじめ、佐野さんが関西外大に入学した経緯や、これまでの中国語の取り組みなどに就いて詳しくご紹介します。
※インタビュー内容はすべて取材時のものになります
学生プロフィール
学生プロフィール
佐野 いつみさん(国際英語学部 国際英語学科4年)
京都府立福知山高等学校出身
幼少時から、お母さんが勧める英語教材を使って、会話を中心に自宅で英語の勉強に取り組んでいたという佐野さん。
自然と英語が得意となり、中学1年生のときには学校の代表として、地元・福知山市の英語スピーチコンテストに出ることになった。
そのときに指導してくれたのが、私が所属していた陸上部の顧問でもあった英語の先生です。その先生との出会いが、中国語に興味をもつきっかけにもなりました。
関西外大に入学するまで
佐野さんがはじめて中国語に触れたのは中学生のとき。
陸上部の顧問で、英語スピーチコンテストの指導をしてくれた先生が、自身の体験談として「中国に1年間留学していた」と聞いて衝撃を受けた。
小さいころから英語を勉強していたので、英語圏への留学のイメージはありましたが、「中国にも留学できるんだ!?」って驚いて。
そこから先生に挨拶などの簡単な中国語を習って、先生と廊下ですれ違ったときに軽く中国語で話すといったことをしていました。
高校に進学してからは、中国語にはいっさい触れなかった。
理由は、独学で中国語を勉強すると発音などに変な癖がつくと思ったからで、中国語は大学に入ってから本格的に勉強しようと考えていた。
得意だった英語が苦手に!?
幼少時から大好きだった英語はというと、高校に入ってから苦手になってしまった。
子どものときに取り組んでいた英語教材では「話すこと」を軸においたメソッドであり、「英文法」を中心とした英語は学んでこなかった。
一方、高校では大学受験を意識した英語教育となるので、文法の知識などが主に問われる。
会話でコミュニケーションは取れるんですけど、テストの穴埋め問題などで点数取るのは苦手でした。話せるのでなんとかなるかなと思ったりしましたが、ネイティブほど感覚的に問題を解けるわけでもなく…。
そのときに、「喋れていたのに、私は英語が苦手だったんだ」とネガティブな感情になったが、その気持ちは関西外大進学後に好転する(後述)。
進路決定の決め手は「中国に留学できる大学」
大学選びは、「中国に留学できるところ」を軸に進学先を検討した。
そのなかで目に留まったのが、英語と中国語を専門的に学べ、英語圏と中国圏の2カ国への留学も可能な関西外国語大学の国際英語学科だった。
オープンキャンパスにも参加し、中国語クラスの模擬授業を体験。その際に、学生の自発性をサポートをする先生方の熱量を感じ、この環境に身を置きたいと感じました。
1年次から継続的に中国語スピーチコンテストに挑戦
佐野さんが初めて中国語のスピーチコンテストに出たのは1年の秋学期。
関西外国語大学孔子学院が主催する「大阪府内中国語スピーチ・朗読コンテスト」に参加したのが最初だった。
とりあえずエントリーしてみましたが練習を自分で工夫することなく参加したので、入賞することができませんでした。
ただ、この結果を受けて、「聞き手を意識して言葉を伝えることが何よりも大切だ」と気づきを得られたのが収穫でした。
同じころ、所属する英語国際学科の中国語の授業で短文の朗読をしたときに、担当する相原里美准教授から「スピーチコンテストに一度出てるから、発音などもよくわかっている」と声をかけられた。
最初に出た大会では結果を残せなかったが、相原先生のその言葉で「自分らしく言葉を伝える練習をすれば結果がついてくるんだ!」と実感し、中国語の勉強がより楽しくなったという。
「JAL中国語スピーチコンテスト」などの大会で優勝!
その後、相原先生の勧めもあって2年次の秋学期に日中友好協会が主催する中国語の「スピーチコンテスト大阪府大会」に参加。
同大会は発表原稿を作成するところから始めるスピーチではなく、既定の文章を暗唱して発表するという内容で、このときは事前準備もしっかりと行い、みごと優勝を果たす。
3年次の春学期はアメリカに留学し、帰国後の秋学期には、
- JAL中国語スピーチコンテスト
- 関西学生漢語連盟中国語スピーチ大会
- 第8回大阪府内中国語スピーチ・朗読コンテスト
に出場し、それぞれ優勝を果たした。
スピーチは、アメリカの大学に留学した際のエピソードをまとめました。「中国語を勉強しています。話しかけてください」と書いたTシャツを着た現地の学生と出会い、その姿を「友人をつくる魔法の道具」に例えて交流を紹介しました。
しっかりと準備をして大会に臨んだ結果として優勝することができ、うれしかったですし、自信にもなりました。
第22回「漢語橋世界大学生中国語コンテスト」にチャレンジ
4年次となった佐野さんが取り組んだのが、第22回「漢語橋世界大学生中国語コンテスト」だ。
大会の概要は、
- 中国語でスピーチ(3分) ※演題「天下一家」(One World, One Family)
- 中国百科知識クイズ(予選3問、決勝4問)
- 中国文化関連の特技披露(5分以内)
といったもので、地方予選、日本予選を経て、勝ち抜いた一人が日本代表として中国での世界大会に進む。
佐野さんは2023年5月27日に開催された西日本ブロックの地方予選で優勝。
同6月24日、各ブロックの優勝者20人で争われる日本予選(東京・慶應義塾大学で開催)に進んだ。
―スピーチ以外に、クイズや特技披露があるんですね。
クイズは事前に問題集(170問掲載)が配られ、例えば「中国のシルクロードを通っている省を7つ答えなさい」といった問題が出されます。
―勉強していないとわからないような問題ですね。
本番の2週間前に問題集が配られたので、対策が大変でした。ちなみに、特技披露では中国民族舞踏に取り組みました。
―こちらは専門の先生に指導を仰いだりされたんですか?
先生はいなくて、ビデオを見て練習しました。あとは、昔からチアダンスを習っていたので、その動きを取り入れたり、自分なりに工夫をして。
―スピーチはどういった内容を披露されたんですか。
「天津飯」をテーマに、日本では中華料理としてポピュラーだけど中国にはないという内容のものにしました。
また、中華料理屋で働く中国人のアルバイトの子と、天津飯をきっかけに仲良くなったエピソードを絡め、「中国の食べ物ではないけれど、日本人にこんなに愛されているのは、お互いに文化を認め合っているからではないか」というような内容を話しました。
決勝の日本大会は惜しくも2位に。世界大会の見学旅行も!
得意のスピーチは満足のいく出来で、クイズも全問正解。
中国民族舞踏も納得のいくパフォーマンスが行うことができ、優勝の手応えはあった。
しかし、結果は2位だった。
僅差だったと後で聞きましたが、自信があったので、すごく悔しかったですね。
ただ、世界大会に進めるのは1位の優勝者のみだったが、2位入賞者には「世界大会の旅行」が副賞として与えられた。
期間は8月31日~9月7日までで、世界大会の決勝を見学するとともに、万里の長城などの観光地を巡る。
また、9月8日~9月14日は日本大会の決勝に進んだ全員に、中国大使館からの招待として旅行(深圳、上海)が授与された。
3年次に予定していた中国への留学はコロナ禍で中止となったので、1年後に中国を訪問できることになったのは本当にうれしかったですね。
以下、取材後に佐野さんから届いた現地での写真になります。
世界大会観戦旅行では各国の代表が一人ずつ集まり、スピーチコンテストのテーマ『天下一家(one world, one family)』を強く意識しました。
みんなが互いを尊重し各国の特色あふれる姿に感動し、この素晴らしい経験を大学生のうちに得れたことを誇りに思います。1週間で家族になったようです。
中国語スピーチコンテストの勉強法について
2年次から本格的に中国語スピーチコンテストに取り組み、参加した各大会で好成績を収めてた佐野さん。
集大成として取り組んだ4年次の「漢語橋世界大学生中国語コンテスト」でも全国大会に出場し、僅差の2位と大健闘した。
そんな佐野さんの中国語スピーチコンテストに向けての対策、勉強法ついて聞いてみた。
スピーチの原稿を約1カ月かけて完成させる
スピーチコンテストに向けてまず取り組むのが、スピーチの原稿の作成だ。
設定されているテーマにもとづき、話す内容を考え、それを中国語の文章に落とし込んでいく。
完成した原稿を相原先生に添削してもらうのはもちろん、それとは別にネイティブチェックも行い、中国人の先生や留学生の友だちなどにも共有し、意見をもらう。
文法的な間違いや表現の確認など、内容とともに中国語としての間違いがないかも細かくチェックしてもらいました。制作には1か月、長いときで2か月近くかかりました。
スピーチの練習は、先生には毎日見てもらう!?
原稿が完成すると、今度はスピーチの練習となる。
先生とのレッスンはどれくらいの頻度でやっていたんですか?と訊ねると、「放課後とかに30~40分時間をとっていただいて、毎日やっていました」とのこと。
発音が気になるところはもちろん、
- ゆっくり話すところ
- 間を入れる箇所
- 表情を注意するところ(ドヤ顔ほか)
など、細かなチェックが入り、スピーチの完成度を高めていく。
相原先生には親身なってアドバイスいただき、本当に感謝しています。先生とのレッスン以外の自主練習としては、日常生活のなかで歩いているときなどに原稿をそらんじたりするなど、大会前は常にスピーチのことを考えている感じでした。
勉強や課題制作は図書館で
スピーチコンテストの勉強に限らず、課題や日々の学習などで利用する佐野さんのお気に入りのスペースがある。
御殿山キャンパス・グローバルタウンにあるLEARNING COMMONS(図書館学術情報センター)3階にある自習スペースだ。
周囲が囲まれた自習スペースがあるんですけど(上の画像参照)、この場所が大好きでよく活用しています。落ち着くので、勉強や課題もはかどるんですよ。
同施設4階にはカフェがあり、気分転換の休憩に限らず、こちらでも自習勉強に取り組むお気に入りの席がるという。
また、佐野さんは御殿山キャンパス・グローバルタウン内に開設されている教育施設「GLOBAL COMMONS 結 -YUI- 」に入居している。
※「GLOBAL COMMONS 結 -YUI- 」の詳細については以下の記事をご参照ください。
「結」の中にも共有スペースとして、24時間使えるコンピュータルームやスタディルームがあり、“勉強をする場”に困ることはありませんでした!
中国語の最良の勉強方法はスピーチコンテストに挑戦すること!?
ちなみに、スピーチコンテストに出ることと、中国語スキルの向上の相関関係について聞いてみたところ、
- 正統的な中国語の文章
- 正しい中国語の発音
を学ぶという意味では、最良の勉強法となるとのこと。
また、先生がマンツーマンで指導してくれるので、これ以上ないくらい贅沢な環境で中国語の勉強ができるのも魅力だという。
大学の代表という思いで臨むので、練習のときから集中して中国語に取り組め、勉強のモチベーションも上がります。
また大会に出ると、全国のいろんな大学の学生と出会い、ライバルとしてお互いの存在がいい刺激にもなるし、大会が終ると仲良くなって勉強方とかを共有したりもできるし、メリットは大きいですね。
中国人留学生とも交流!「倶楽部はなしちゃいな」
先生の熱心な指導もあり、中国語スピーチコンテストで好成績を残すことができた佐野さんだが、その語学力の素地となったのが日々の授業だった。
ただ、学び始めた1年次のころはコロナ禍で、特にスピーキングに関しては不安を感じており、「もっと話す機会をつくりたい」と感じていた。
そうしたニーズを解決するため、1年次の終わりごろに先輩と立ち上げたのが、「倶楽部はなしちゃいな」(準公認サークル)だ。
本学に留学する予定だった中国の学生たちと、オンラインでの交流を目的に、週に3回さまざまなイベントを企画・運営しました。
コロナ禍が落ち着き、外国人留学生の受け入れが本格的に再開した2022年秋学期からは、関西外大に来ている中国人の留学生と月1回のペースで交流イベントを実施。
イベントの事例を挙げると、
- 中国語のお菓子の食べ比べ
- 12月にクリスマスソングを中国語でいっしょに歌う
- 中国のドラマの鑑賞会
といったことに取り組み、交流を深めるなかで中国語のスキルアップを図った。
▼「倶楽部はなしちゃいな」のInstagram(以下の投稿は2022年活動の振り返り)
そして、2023年春学期からはスピーチコンテストに出場を目的とした活動することになった。
月に1回の交流イベントは継続しつつ、毎週1回のミーティングではスピーチの練習に取り組む。
中学人の留学生にも活動をサポートしてもらい、発音などをチェックしてもらっています。
私自身、スピーチコンテントを通じて大きく成長できたので、ぜひ後輩たちにも活動を引き継いでいってもらいたいですね。
留学先のアメリカで英語を話す楽しさも再認識
大学に入ってから中国語に触れ、語学力を飛躍的に伸ばした佐野さんだが、幼少期から勉強に取り組み、もともと得意だった英語(=高校でちょっと嫌いになる)に関しては、どうだったのだろうか?
「しゃべれるけど、文法が得意ではない」という高校のときに感じた苦手意識は大学入学後も消えなかったが、そんな印象を一変させることになったのが、3年次春学期に参加したアメリカでの留学体験だった。
留学に行って気づいたことは、「自分はこんなに英語が喋れるんだ!」ということです。
高校のときに勝手に苦手意識をもったけど、現地の学生たちとの交流を通じて、子どものときに楽しく英語で会話していた感覚がよみがえってきました。
その背景には、苦手だった文法などを大学入学後に改めて学んだことで、理解が深まったことも一因としてあったという。
そして帰国後、中国語と並行して、英語も意識的に使うようになる。
具体的には、「GLOBAL COMMONS 結 -YUI- 」に入居したことで、外国人留学生と日常的に英語で会話をする機会が生まれた。
いっしょにテレビや映画を観たり、日常会話を楽しんだり、英語で楽しくコミュニケーションしています。
また、授業や「倶楽部はなしちゃいな」でネイティブの先生や学生と中国語を話せ、関西外大では最良の環境で語学学習に取り組めました!
就職活動を経て、第一志望の企業に就職内定
佐野さんが就職活動を始めたのは3年次の12月。
特に業界は絞らず、学内の就職セミナーなどに参加していたが、漠然と「将来、中国で就職するにはどうしたらいいのかな」と考えたときに出てきたのが、人材紹介、人材派遣やコンサルティング業務を行う内定先の企業だった。
中国に現地法人があり、中国の人材紹介も積極的に行っており、語学をはじめ、自分がこれまで培ってきたことを活かせるところに魅力を感じました。
人材系を選択したのは、モノやサービスを売ることよりも「人そのもの」に興味があったから。
別の大手人材・広告企業からの就職内定ももらっていたが、最終的な進路の選定では、中国とのつながりの有無が決め手となった。
中国の方を日本に紹介するのはもちろん、日本の方を中国に紹介する橋渡しをするなど、「日本と中国」をつなぐ仕事への共感性を高く感じました。
また、語学をはじめ「自分にしかできないことが手掛けられるのでは」と思ったことも決め手となりました。
なお、就職内定が出たのが4月中旬で、実はこの時期に内定が出たことが「漢語橋 世界大学生中国語コンテスト」にも大きな影響を及ぼしている。
先ほど紹介したように、中国語スピーチコンテストには脚本の作成からスピーチの練習まで、仕上げるまでに数カ月の時間を要する。
そして、2023年の「漢語橋 世界大学生中国語コンテスト」のスケジュールは以下の通り。
- 5月27日 西日本ブロック予選
- 6月24日 日本予選
就職内定が出なかった場合、就職活動と並行して大会の準備をすることになり、「原稿づくりは4月から進めていましたが、練習と就活の両立は難しいよと思うので、大会の出場は断念していたと思います」と佐野さん。
逆算して練習する時間が十分あると思ったので、大会に参加しました
あと一歩のところで優勝は逃してしまいましたが、日本大会まで進み、好成績を残せたので参加できてよかったと改めて実感しています。
さいごに
佐野さんにとって中国語とは?と訊ねてみると、「とにかく楽しいです」という答えが返ってきた。
もともと人とコミュニケーションを取るのが好きで、中国の友人たちに「中国語の発音が上手になってきた」「どんどん喋れるようになってすごい!」と褒めてもらったりすることも学びのモチベーションにつながっている。
そんな佐野さんに、関西外大学英語国際学科に来てよかったことは?と最後に訊いてみた。
たくさんありますが、一番は中国語の相原先生との出会いですかね。先生と出会ってないとスピーチコンテストに挑戦していないし、出たとしても入賞もできていなかったと思います。
私にとってそれは「中国語」でしたが、高校生の皆さんも「素直に心が動いた方向」へ進んでみてください。そこには、あなたの情熱に引き寄せられた、あなたの助けになる力強い仲間も待っているはずです!