イベロ研「メキシコ・日本芸術文化研究会」が開かれました

 イベロアメリカ研究センター主催の「メキシコ・日本芸術文化研究会」が10月21日、中宮キャンパス本館302号室で開かれ、メキシコ・イダルゴ州立自治大学芸術研究所の横井川美貴教授とメキシコ国立自治大学の有村理恵准教授が、メキシコにおける日本の芸術文化研究について発表を行いました。研究会には、本学のラテンアメリカ学やスペイン学研究の教授らが参加しました。

 初めに、林美智代・イベロアメリカ研究センター長(外国語学部教授)のあいさつの後、横井川、有村両氏が、今回のテーマである「メキシコから見た日本」についてまとめた書籍「メキシコ日本芸術文化研究 常設セミナー試論集 第一巻:文化交差へのまなざし」を紹介しました。


▲プレゼンする横井川教授(左)と有村准教授

 横井川氏は、現代美術における日本とメキシコの交流について発表。メキシコに渡った画家の北川民次や村田簣史雄らの文化的な功績を示し、幅広い色彩や神秘思想を取り入れた造形表現など、それぞれの作品の中に「メキシコ性」を見出すことができると解説しました。
 
 また、メキシコシティの美術館に戦後日本の前衛美術運動「もの派」の作品が多数所蔵されていることや、メキシコの日系移民の記憶をオーディオビジュアルアートとして解釈する取り組みについて説明しました。


▲紹介された本の書影(左上)とロザリオの遺跡(右上)、(下)は研究会の模様

 有村氏は、比較文化研究の視点から、南蛮時代に伝わったキリスト教のロザリオと仏教の数珠に接点があることを解説。宣教師たちが数珠をどう理解し、日本人がロザリオをどう受け止めてキリシタン信仰に取り入れていったのかについて論じました。そして、キリシタン信者らの間で、ロザリオと仏教の祈りが共存していたと説明しました。
 
 さらに、メキシコと日本の映画作品「ローマ」と「シン・ゴジラ」の比較分析を通じ、日本におけるモダニティ(近代性)とポストモダニティの享受と抵抗について深く掘り下げることができると話しました。

 最後に、外国語学部のトロヌ准教授が「2022年は初めて日本人がメキシコに移住した『榎本殖民団』から125周年に当たります。移民に関する研究は進んでいますか」と問いかけました。

 横井川氏は「大切なのは移民2世3世の証言や子供、女性といったマイノリティーに注目することです。移民の記憶を後世に伝えるためにも研究を続けていきます」と答えました。


▲メキシコ日本芸術文化研究常設セミナーのホームページ https://cenidiap.net/sepiacmj/

 横井川氏は、同研究所の視覚芸術学術領域主任研究教授で専門は現代芸術。「視覚現代芸術におけるジェンダー」「近現代メキシコでの日本的意味合いを含む芸術表現」などについて研究されています。
 
 有村氏は、メキシコ国立自治大学のモレリア国立高等研究学校准教授で、専門は副王領期芸術と南蛮美術。ヌエバ・エスパーニャに設立された修道院建築の建設期と、その資材や技術の学際研究プロジェクトに参加されています。
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