「日本の国際協力外交―SDGsから地球温暖化問題まで―」をテーマに、外務省の「ODA出前講座」が開かれました

 国際社会で日本が果たしている役割について理解を深めてもらおうと12月8日、中宮キャンパスで外務省「ODA 出前講座」が開かれ、約70人が聴講しました。

 講座は、外務省国際協力局参事官(地球規模課題担当)の北村俊博氏を講師に招き「日本の国際協力外交―SDGsから地球温暖化問題まで―」と題して行われました。

 北村参事官は1992年に外務省入省。欧州局西欧課長、大臣官房報道課長、在スリランカ日本国大使館参事官、在スリランカ日本国大使館公使、大臣官房兼国際協力局国際協力局長補佐などを経て、2021年9月から大臣官房参事官兼国際協力局、アジア大平洋局南部アジア部。


▲SDGsについて説明する外務省国際協力局の北村俊博参事官

 北村参事官は、学生にとって身近で関心を持ちやすいSDGsをテーマに話を進め、持続可能で多様性と包摂性のある社会実現のための「17の国際目標」や、国連サミットで2015年に採択されて以降の政府の取り組みについて、分かりやすく解説しました。

 日本の進捗状況を示すスコアは、163カ国中19位(持続可能な開発報告書2022より)で、なかでも「教育」「イノベーション」「平和」の3目標が高評価だと述べました。

 一方、世界平均のスコアは3年連続横ばいで、「ジェンダー」「生産・消費」「気候変動」「海洋資源」「陸上資源」「実施手段」の6目標は、実現が危ぶまれる主要課題となっていることを、詳細なデータを示しながら説明しました。

 特に「気候変動」に関しては、20世紀後半以降、気温上昇や温室効果ガスの増加が顕著で、豪雨災害の増大や生態系への影響が世界中で見られると指摘。このままのペースでいくと、2050年の日本は、8月に東京で40.8℃を記録、熱中症で6500人以上が亡くなり、京都の紅葉はクリスマスに見頃を迎える―との予測を示し、警鐘を鳴らしました。

 また、気候変動対策として、国連広報センターが国内メディア136社とともに展開しているキャンペーン「1.5℃の約束」を紹介。個人でできる取り組みとして、節電や公共交通機関の利用、廃棄食品の削減、リサイクル・リユースを心掛けるといった対策を挙げ、学生たちに行動を促しました。


▲国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の成果を披露する北村参事官

 また、北村参事官は外交の最前線の話として、2022年11月6日~20日にエジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に出席した際のエピソードを披露。先進国と途上国が対立する構図ではなく、全締約国に対し気候変動対策の強化を求めたことが最大の成果だったと話しました。


▲若手人材を国連機関に派遣する「JPO制度」

 最後に、外務省が人件費を負担して、日本人の若者を2年間、国連機関へ派遣する「JPO制度」を紹介。北村参事官は「将来、国際機関に就職したいと考えている学生さんがいたら、ぜひチャレンジしてほしい」と呼びかけました。


▲活発な質疑応答が行われました

 質疑応答では、学生から「COP27で途上国寄りの合意に至った背景を教えていただきたい」「2030年までにガソリン車をなくす方針を掲げている国がありますがどう思われますか」などの質問が出ました。


▲谷本榮子理事長と懇談する北村参事官(中央)と鶴見直人准教授

 出前講座に先立ち、北村参事官は谷本榮子理事長を表敬訪問し、意見交換しました。北村参事官は、「これからはもっと若い方に国際社会で活躍してもらいたい」と話し、谷本理事長は「本学は毎年、数多くの留学生を送り出しています。海外でのボランティアやインターンシップを希望する学生も多いです」と応じていました。
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