「Global Commons 結 -YUI-」開設から5年/〝初代〟のRAを務めた外大生が記者として飛び立ちました

 ■「Global Commons 結 -YUI-」が原点

 御殿山キャンパス・グローバルタウンの開学とともに開設された「Global Commons 結 -YUI-」が、2023年で5周年を迎えました。海外からの留学生と外大生が24時間生活をともにする教育施設としてオープンしましたが、コロナ禍で海外からの留学生が一時激減しました。昨年の夏から再びにぎわいを取り戻しています。


▲結の仲間たちと(左端が比嘉さん)

 RA(レジデント・アシスタント)は、日本での生活に慣れない留学生に寄り添い、入居する外大生との橋渡しの役割を担います。2018年の開設と同時にRAとなり、1年半務めた比嘉祐也さん(外国語学部英米語学科2020年卒)が、2023年4月からジャーナリストとして働くことになりました。

 比嘉さんがジャーナリストを目指した原点は「Global Commons 結 -YUI-」でした。

 〝初代〟のRAとして、さまざまなバックグラウンドを持つ外国人と共同生活を続ける中で、弱い立場にいる人たちの声が届かず、誤解や差別が生まれていることを実感します。「声なき声を届けて、差別や争いのない世界をつくることができる仕事がしたい」との思いが結実しました。

 ■初代RAとして試行錯誤

 比嘉さんは「日本語教師になりたい」と関西外大に入学しました。当時はメディアの世界で仕事をすることなど想像もしなかったといいます。

 
▲オープンキャンパスで結の見学ツアーを企画しました(右端が比嘉さん)

 転機は2018年、Global Commons 結 -YUI-にRAとして入居したことでした。

 当時3年生になったばかりの比嘉さんは、オープン直後のGlobal Commons 結 -YUI-で、初代のRAを務めました。「外国人と気軽に交流できて、海外留学と変わらない体験ができる」と期待に胸が膨らみました。

 しかし、全国にほとんど例がない斬新な施設で、すべて「ゼロ」から「イチ」を創り出す必要に迫られました。「ルールやマニュアルをつくることから始めました。何かイベントをしようとしても前例がありません。議論がまとまらなかったり、トラブルが続いたりと、1年目は大変でした」と振り返ります。

 ■記録にも記憶にも残したい

 
▲留学生に書道を体験してもらいました(左端が比嘉さん)

 日本ではまだ、LGBTQ(性的少数者)をオープンにしづらい雰囲気がありました。最初は、オープンにしている留学生と出会うと「本当にいるんだ」と思ってしまいました。さまざまなバックグラウンドを持つ留学生と寝食を共にしていると、当然のことですが「結局、外国人も日本人と全然変らないじゃないか」と思うに至ります。

 「日本では、外国人であるがゆえに差別を受けている人がいます。差別を受けたり、いわれのない不利益を被っている人が身近にいることを実感しました」と言います。そして「そういう人たちの声を広く伝えたい、代弁者となるような仕事がしてみたい」との思いが募ってきました。

 
▲「小さな声を広く伝えるような仕事がしたい」と語ります

 オープンしたばかりのGlobal Commons 結 -YUI-を多くの人に知ってもらおうと、大学の広報誌「関西外大通信」にPR記事を書くことになりました。比嘉さんはRAの仲間と共に紙面づくりに携わりました。

 「文章に表現して社会に発信することに大きな意味があることを知りました。記録にも記憶にも残すことが必要だと思いました」と話します。自分の思いを体現できる仕事としてジャーナリストを目指したいと思うようになりました。

 ■ハンガリーで学んだこと


▲ハンガリーの大学院で修士を取得しました

 ジャーナリストとして働きたいと思うと同時に、大学院でジャーナリズムを学んでおきたいと考えました。留学先として選んだのが、ハンガリーの首都・ブダペストにあるメトロポリタン大学大学院でした。

 ハンガリーの大学院を選んだのには2つの理由がありました。

 1つは、政府が強権的で言論への弾圧があるといわれている国でメディアについて学び、日本とは異なるメディアの現場を知りたいと考えたことです。

 
▲外大の元留学生の女性たちとブダペストで(右から2人目が比嘉さん、左端が最初に仲良くなったハンガリー出身の留学生)

 もう1つは、最初に仲良くなった留学生がハンガリー出身だったことと、3年の春学期にハンガリー語の授業をとり、ハンガリーへの関心が高かったことです「姓名の順とか、住所表記の仕方とか、日本語とハンガリー語は共通点が多いんです」と話します。

 修士論文のテーマは「ジャーナリズムとフェミニズム」。フェミニズムもジェンダーも詳しくありませんでした。しかし「調べていくうちに奥深いことが分かってきました」といい「日本の報道機関もまだまだ女性が少ないですから。新聞社の受験でも女性の面接官は1人もいませんでした」と苦笑します。

 ■声なき声を届けたい

 
▲4年生にメディア学の授業を受講、担当の魚住真司教授(右)に新聞社への就職を報告しました

 10社ほど受験した新聞社のうち、最初に内定が出た中日新聞社への入社を決めました。「別に英語を売りにしたわけではありませんが、英語の能力を評価してもらえたようです。関西外大で英語を頑張って良かったと思います」と話します。

 「Global Commons 結 -YUI-で経験したことや考えたことが今、大きな糧になっています。入管や在日外国人のことをぜひ取材してみたいし、弱い立場の人の声を届けることができる記者になりたいと思います」と決意を語りました。


比嘉祐也(ひが・ゆうや)さん

1998年1月23日生まれ
大阪府四条畷市出身
大阪国際大和田高等学校卒業

2020年3月
外国語学部英米語学科卒業
2021年2月
メトロポリタン大学大学院(ハンガリー)修士課程入学
コミュニケーション&メディアスタディーズ専攻
2023年1月
メトロポリタン大学大学院修士課程修了
2023年4月
中日新聞社入社

 
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