「恩地食品」営業本部の成田淳子さん(国際言語学部2011年卒)/大阪うどんをUDONに。世界へ広げます

 成田淳子さんは現在、枚方市に本社がある「恩地食品」営業本部の営業グループで班長を務めています。商品開発と海外への販路拡大を担当し、2025年の大阪・関西万博をきっかけに「大阪うどんを世界の味に」と奮闘しています。



 成田さんは、1988年に高槻市で生まれました。2007年に短期大学部の国際コミュニケーション学科に入学し、2009年に国際言語学部の3年次に編入学しました。同年秋学期にはリンカーン大学(ニュージーランド)への語学留学を経験しています。


 
関西外大通信314号の連載企画・第一線で活躍する卒業生にインタビュー「外大人Vol.26」の記事を基にまとめています


 
 1970年の大阪万博の会場で多くの日本人が味わったのをきっかけに、全国に広まった〝アメリカの味〟があります。

 ハンバーガーとフライドチキンです。

 2025年の大阪・関西万博をきっかけに、成田さんが世界中に広めたい〝日本の味〟〝大阪の味〟があります。

 大阪うどんです。

■就職決まらぬまま卒業式

 うどんが大好物な子どもだったわけではありません。

 大学時代に〝日本の味〟を世界に広めたいとの思いを募らせたわけでもありませんでした。

 卒業した2011年は、まだリーマンショック後の就職難が尾を引いていました。成田さんは、就職先が決まらないまま卒業式を迎えていました。

 「貿易の実務英語が大好きで貿易商社を志望していたので、食品会社はまったく関心ありませんでした」と振り返ります。そして「〝英語できる人〟を条件に恩地食品の求人があったので、英語を使う仕事ができるのならと応募しました」と苦笑します。

 配属された営業本部は、商品開発も大切な業務の一つでした。折から大阪・関西万博の開催が決まりました。

 「大阪うどんを海外に広めよう」「関西のうどん文化、だし文化を外国に発信しよう」が、恩地食品の重要ミッションの一つとなりました。


▲空港に並ぶ〝日本食パワーブランド〟。外国人観光客向けにPRしています

 もちろん成田さんは得意の英語を駆使してPR活動する最前線に立ちました。

■外国人は受け入れると確信

 取り組み始めると「うどんを海外に広めること」がそんな簡単なことではないとすぐにわかりました。

 ▽海外で日本の麺といえば、ラーメンのイメージがあまりに強い

 ▽だしを味わってもらいたいが、外国人には少し淡白すぎる

 ▽うどんは生麺が主流だが、生麺はもちろん、半生麺でも日持ちがしない

 ▽ハラールやビーガンなどに対応しなければならない

 成田さんは、外大に来ている外国人留学生に〝モニター〟になってもらうことを思いつきました。米国やフィンランド、オーストラリア、イタリアなどの留学生を試食会に招き、調査に協力してもらいました。


▲外大のPBL授業の七夕イベントでコラボしました(2017年)

 タイやシンガポール、台湾で試食会を開き、片っ端から生の声を聞きまくりました。

 意外な結果が出てきました。

 「ラーメンよりあっさりしていて健康に良さそう」

 「トマトソースにもカルボナーラにも合う。ソフトパスタのようだ」

 「どんなスープにも合いそう。食材とうまく合わせたらどんなメニューもOK」

 成田さんは「うどんは既に外国人に受け入れられつつあると思いました。工夫を重ねたら〝大阪のうどん〟を〝世界のUDON〟にできる」と確信しました。


▲台湾では試食会を開きました

■万博に向けてフル回転

 外大時代に磨いた英語力が随所に生かされています。

 SNSで世界にUDONをPRするYouTube「おんちゃんねる」では、うどんとだしを使ったオリジナルレシピを考え、発信を続けています。うどん餃子やだしで作るポトフなどを紹介しています。


▲世界にUDONをPRするYouTube「おんちゃんねる」

 また、うどんの歴史を英語版のアニメにしたり、パッケージを英語表記にするなど、世界へのうどん売り込みの先頭に立ち続けています。





 恩地食品では、コシも風味も生麺と変わらず10カ月保存が効く輸出用の乾麺の商品化に全力を挙げています。また、健康志向に沿い、塩を一切使わない無塩うどんの積極的な展開にも力を入れています。

■就職活動を振り返って

 大学時代に目指していた貿易商社での仕事とは、少し隔たりがあります。しかし成田さんは今の仕事を120%満喫しています。

 「自分の提案したことに挑戦できる機会がとても多いんです。会社の規模に関係なく、自分のやりたいことができる場面がどれだけあるかで仕事の充実度は全く違います」と言います。

 自分のやりたい仕事や興味のある企業しか見えていなかった自らの就職活動は反省点ばかりです。

 「もっと視野を広げていろいろな職種や企業を見ておくべきだったと思います。たとえ有名企業でなくても、どんな規模の会社でも、自分のやりたいことができる場面は必ずあります」と強調します。

 そして現役生に対して「大企業や有名企業に就職して人間関係で悩んでいる友人が結構います。就職活動は幅広く、いろいろな業種を検討してください」とアドバイスします。

 コロナ禍で中断していた海外への大阪うどんの売り込みが、ようやく再開しました。

 外大時代の留学で学んだのは「文化や考え方で自分と異なる意見でも、頭から否定するのではなく、いったんは相手の意見を受け入れることが大切だ」ということです。


▲留学で学んだことが現在の仕事の大きな糧になっています(手前右が成田さん)

 異なる文化や習慣の人たちに「UDON」や「DASHI」を受け入れてもらうのは容易なことではありません。

 成田さんは、留学で身に付けた〝多文化共生〟を肝に銘じて、世界への発信を続けています。


 
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