≪大学院にようこそ Vol.3≫ 大学院の研究とは何か/2024年3月博士後期課程を修了した川口尚毅さんが語ります

※関西外大通信「THE GAIDAI」318号の特集「大学院の新プログラム」を基にまとめています
 
≪大学院にようこそ Vol.1≫「学部・大学院修士5年教育課程」が2025年度スタート/菊池清明教授に聞く

≪大学院にようこそ Vol.2≫大学院目指す2人に聞きました/外国語学部英米語学科4年・冨永友香さん、同3年・守田陵汰さん

≪大学院にようこそ Vol.4≫ 金融行政・グローバル金融経済/出水博章・外国語学部教授

≪大学院にようこそ Vol.5≫ 国際人権法・比較憲法/福田和生・国際共生学部准教授

 大学院の魅力はどのような点にあるのでしょうか。大学院での学び・研究に大切なものは何でしょうか。2024年3月に博士後期課程を修了して学位を取得し、現在、第一工科大学の助教を務める川口尚毅さんに語っていただきました。


▲学位記を授与される川口さん(2024年3月)

■その魅力とは?

 大学院の魅力は主に、次の点に存在していると感じています。

 (a) 学際的である

 (b) 社会人とは異なって勉強に割ける時間が確保できる

 (c) 少人数ゆえのきめ細かな添削指導が可能である

 (d) 発見する感動を味わえ、努力の成果が論文などにより明示的に理解できる

 大学院には各分野の先生が在籍されています。この学際性が、どこに息を潜めているかも分からぬ学問的真実のありかを「さまざまな分野に求める」という姿勢を育成してくれました。これを行うための時間を十二分に確保することができ、先生方からは論文に対する綿密かつ愛情のこもった指導をいただきました。

 私にとってその成果が、修士論文、博士論文、ならびに、博士後期課程在籍中の査読付き論文5本であると理解しています。論文を書くという営みは、自らの退路を断ちながら崖沿いを歩くという孤独なものであったと記憶しています。

■目指す皆さんへ

 博士前期課程は論文を書く練習、後期課程は研究者・教育者として「長年にわたり活躍・自立する」ための練習期間です。

 学部はこれらを行うための準備期間です。お勧めしたいことは、言語学に限らず幅広い講義を受けて、予備知識をつけることです。そして何よりも、言葉に対する興味を持ってください。「mustとhave toの意味って何が違うんやろ?」と思えたら、もう研究という山の登山口に立っているのです。それを大学院で深堀りしてください。

 径を拓くことは険しいことです。しかし、その径は「閉ざされているわけではありません」。毎日の積み重ねで、最後には必ず展望が開けます。そのための伴走者(先生方)もおられます。それが大学院です。


▲博士後期課程の3年間で英語学の関連学会誌に5本の論文が掲載されたことが評価され学長賞を授与されました(2024年3月)

■期待すること

 大学院生に次の点を期待しています。

▼英語、日本語、中国語などに対する幅広い知識の育成

 現代の英語、日本語、中国語などに目が行きがちなのはやむを得ないことだと思います。しかし、研究対象の言語の歴史と過去にも少し目を向けてください。二次元的、面的観察だけでは浮かばぬ着想が、突如浮上することでしょう。

▼将来の教育者としての自覚の育成

 大学教員は研究者であるのと同時に教育者です。ぜひ日々の生活や研究への姿勢を通して、将来の教育者であることの自覚を育成してください。

▼文献の精読力

 私、そして私の指導教員の先生方がもっとも重要視していることです。文献を「原著で」「一言一句読み飛ばさず」「背景知識をも援用しながら」精読することが大切です。走り読みや読み飛ばしで得られるものは何もありません。逆に名著や名論文を精読すれば、論文の構成方法、表現が習得され、自身の母語も外国語のように俯瞰できるようになります。

▼言語事実の重視

 言語が関与するいかなる研究にも適応される大切な点です。言語研究は言語事実に基づいて行われます。「事実」を正確に観察して、精緻に記述できるようにする力を今後育んでください。


 
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