≪Sweden Study Abroad REPORT≫清水鈴さん(外国語学部英米語学科2024年8月卒)Vol.2/マイナーな立場を逆手にとって

 スウェーデンのリンネ大学に2年間(2022年9月~2024年8月)留学し、関西外国語大学とリンネ大学の2つの学位を取得した清水鈴さんにとって、ヨーロッパ最大の留学生団体「Erasmus Student Network(ESN)」との出会いは、留学生活を大きく飛躍させました。


■異例中の異例の会長就任
 

▲リンネ大学のあるスウェーデン・カルマルの冬です

 ESNを円滑に運営していくために、会長や副会長などの役員を毎年、年次会議の選挙で選出します。高校時代に米国・アイダホ州へ留学した際 、英語が十分に理解できず不安な思いをした経験があった清水さんは「留学生活を包括的にサポートして充実させてくれるENSの活動や存在意義に強く共感しました」と言い、役員への立候補を決意しました。

 清水さんは「せっかく役員になるのならトップに就きたい」とカルマル支部の会長に立候補することにしました。ヨーロッパ以外からの留学生が会長に出馬するのは異例中の異例でした。「ヨーロッパ以外から来た留学生であるというマイナーな立場を逆手に取りました。留学生活で起こるさまざまな問題に理解が深く、十分に対処できる」と主張しました。

 「マイナーな立場を逆手に取った」とはいうものの、日本出身の留学生が、世界中からスウェーデンに集まった150人もの学生を束ねていくのは容易ではありません。清水さんは2023年2月から8カ月間、ESNではとても珍しいヨーロッパ以外の出身者として会長を務めましたが、幹部メンバーをまとめていくだけでも四苦八苦しました。

 
▲ESNのカルマル支部の幹部たちと(左から4人目が清水さん)

 幹部を含めて多くのメンバーの第一言語は英語ではありません。さらにそれぞれが生まれ育った文化もさまざまです。言語や文化の違いが理由で、細かいニュアンスが伝わり切らず、幹部メンバー同士がぶつかったり、プロジェクトが予定通り進まないことは日常茶飯事でした。

 清水さんは「どれだけ準備を徹底しても、予想していなかったようなことがいつも起きてしまい、その度に解決策を考えなければいけませんでした」と苦笑し「〝何事にも柔軟に対応する〟ということは日本人の私にとって一番苦労したことの一つです」と話します。

 
▲リンネ大学のあるカルマル、ある日の夏の1コマです


■苦労の連続だが確実に成長

 清水さんは「ヨーロッパの学生団体は、日本と比べ物にならないぐらいすべてが本格的だ」と指摘します。ただ「自由度はとても高いのですが、大きなお金が動くうえ、さまざまな立場の人たちの利害が絡むため、役員の責任はとても重くなります」と強調しました。

 スウェーデンだけでもESN以外に学生団体が8つあります。すべての学生団体が参加する会議や、他の団体との交渉はすべてスウェーデン語でした。また、パブやレストランとの交渉も会長の大切な仕事の一つですが、スウェーデンの文化や法制度などの知識がなければ交渉が前に進みません。ESN自体は非営利団体ですが、オリジナル商品やイベントのチケットの販売で運営資金を確保する責任も負います。清水さんは「苦労の連続でした」と繰り返しました。

 
▲新入生歓迎ウィークでESNのスタッフと(右端が清水さん)

 しかし清水さん自身は、会長を務めた8カ月間で確実に成長しました。「ヨーロッパでの学生生活を本当の意味で深く体験することができたと思っています」と話すとともに「世界中から集まる幹部を懸命にまとめようとした経験から、グローバルなリーダーシップを発揮できる力と自信が身に付いたと思います」と自分自身を評価しました。


しみず・すず/兵庫県出身。兵庫県立宝塚北高校卒業後、2020年4月に関西外国語大学に入学。スウェーデンのリンネ大学に2年間留学し、両大学の学位を取得して2024年8月に卒業した。


≪Sweden Study Abroad REPORT≫清水鈴さん(外国語学部英米語学科2024年8月卒)Vol.1/スウェーデンで留学生団体のトップを務めました 2024/10/03


 
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