アシアイン教授 「百人一首」をメキシコで出版 歌も解説もスペイン語で

 外国語学部のアウレリオ・アシアイン教授が今夏、百人一首をスペイン語訳し、解説を加えた“Centena de cien poetas : Hyakunin Isshu”(100歌人の100首:百人一首)をメキシコで出版した。大学教授のほか作家、詩人、翻訳家など様々な顔を持つアシアイン教授が念願にしていた“百人一首のスペイン語版”だ。日本文学に精通し、『奥の細道』をスペイン語に訳したノーベル賞作家、オクタビオ・パスとともに編集の仕事に携わったこともあるアシアイン教授。日本文学への関心は俳句から短歌に移り、「2007年に和歌を翻訳した“Luna en la hierba”(草の月)を出版しましたが、百人一首をまとめるのには15年かかりました。次は日本の現代詩に挑戦したい」と話している。

 

▲「出版までに15年かかった」と話すアシアイン教授

 

 本はA5の変形版、216ページ。母国・メキシコのベラクルス大学から出版された。パスなどの影響で俳句は愛好家が多く、著作も見られるが、「百人一首の解説本は初めてではないか」(アシアイン教授)という。

 翻訳したのは、藤原定家が選者の小倉百人一首。天智天皇から順徳院までの百首を、歌番号順に1首2ページを使って展開している。奇数ページに、歌番号と作者名、歌のスペイン語訳、日本語の作者名、歌とローマ字の読みが並ぶ。偶数ページには長短様々な解説文を載せている。スペイン語訳の歌は、5・7・5・7・7に合わせて訳文の音節を五七調に配列しており、アシアイン教授は「翻訳の難易度が歌によって全然違うので、相当苦心しました」と感慨深そうだ。

 解説文は、古典文学全集や詩人の大岡信さんの著作など日本語の文献や、スペイン語はもちろんフランス語、英語、イタリア語に翻訳された資料を参考にした。お気に入りの歌を尋ねると、小野小町、藤原定家、菅家(菅原道真)を挙げた。

▲「百人一首」(左)とオクタビオ・パスと日本についてまとめた2冊

 

 また、アシアイン教授は昨年11月、オクタビオ・パスと日本の関係を集大成した“Japón en Octavio Paz”(オクタビオ・パスと日本)をメキシコの出版社から出している。これは、アシアイン教授自身による約50ページのエッセーを冒頭に置き、紫式部や松尾芭蕉などについて書いたパスのエッセー、パスの詩、パスによる短歌と俳句の翻訳などを収録。“SENDAS DE OKU”と題した芭蕉の『奥の細道』スペイン語版も載っているほか、アシアイン教授が依頼した、ドナルド・キーン博士の寄稿もスペイン語に訳して掲載した。

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