≪Laos Study Tour REPORT≫国際共生学部2年 狩野桜子さん Vol.2/障がい者施設から見えてきたもの

 「Experiential Learning」を通してオールイングリッシュで学んでいる国際共生学部の2年生が2024年6月、スタディーツアーでラオスを訪れました。参加した外大生は何を見て、何を聴き、何を感じて、何を考えたのかレポートします。

 「何かビビッとくるものが見つけたい」と、テーマも思いもあいまいなままラオススタディーツアーに参加した狩野桜子さんは、現地で活動する人たちの〝熱量〟に圧倒され、無力感すら感じることもありました。

 ツアーの前半にAAR Japan(難民を助ける会)を訪ねました。AAR Japanは1979年に日本で誕生した国連公認の国際NGOで、現在は18の国と地域で「難民支援」のほか「障がい者支援」などの分野で活動しています。AAR Japanは「ラオスの障がい者支援の現状をぜひ知ってもらいたい」と政府が運営する公立の職業訓練校に案内してくれました。

 障がい者を支援する公立の職業訓練校を訪ねた狩野さんは、少なからず衝撃を受けました。画面が変色した古いパソコンと、壊れかけたキーボードが並んでいました。エアコンはなく、生温かい空気をかき混ぜる扇風機があるだけで、汗が噴き出してきます。とても快適に学べる環境ではありませんでした。

 
▲快適な環境ではありませんが訓練生は懸命に学びます(右端が狩野さん)

 狩野さんは「私なら到底耐えられません。でも訓練生たちは毎日7時間、一生懸命に学んでいるんです」と語気を強めました。スタッフは一言も不満を言わず、限られた財政の中で、懸命に支援活動を続けていました。

 
▲壊れかけたパソコンですが大切に使っていました(左から2人目が狩野さん)

 狩野さんは高校時代に経験したボランティア活動を思い出していました。学校で参加募集があり、障がい者施設で3日間ボランティアをしました。積極的に参加したというわけではなく、施設のこともボランティア活動のことも何も知りませんでした。

 正直言って、最初は「怖い」と思ったと言います。障がいを持つ人たちと接した経験がほとんどないので、「普段通りに接することができるかどうか、失礼な態度になってしまわないだろうか」と不安でした。「知らず知らずのうちに差別的なことがでてくるのではないかと心配になりました」といいます。

 しかし実際に活動してみると、「怖い」などという感情はたちまち消えました。みんなとても純粋でした。いきなり入ってきた狩野さんに対してでも、何かお手伝いをするたびに、ことばやジェスチャーで感謝の気持ちや自分の素直な気持ちをしっかり伝えようとしてくれるのを感じました。「とてもうれしかったです」と話します。

 狩野さんがボランティア活動した障がい者施設も、ラオスの職業訓練校ほど深刻ではありませんでしたが、壊れたままの設備を使ったり、経費が限られているのか空調は快適といえない温度に設定されていました。

 先進国でも開発途上国でも、障害者や福祉への問題意識はまだまだ改善されるべきだと狩野さんは感じました。そして「障がいがあるというだけで社会の動きから取り残されるべきではないのに、社会の隅に置かれがちな現実に憤りを感じます。自分もなんとか力になれる存在になりたいと考えるようになりました」と静かに語りました。

 
▲AAR Japanのオフィスで活動についてプレゼンテーションを受けました(左が狩野さん)

 さらに「ラオス不発弾処理機関(UXO Lao)」と「COPE(Cooperative Orthotic and Prosthetic Enterprise)ビジターセンター」を訪れたときには、さらに深刻な現実に直面しました。ベトナム戦争中に激しい空爆を受けたラオス国内には約8000万個の不発弾が残っているといわれ、事故の被害者は年間5万人を超えてたくさんの障がい者を出しています。

 COPEには多数の義足や義手が展示されていました。自分の畑を安心して耕すこともできない現実に狩野さんはショックを受けました。「いまだに多くの死傷者を出し、ラオス社会のさまざまな側面で深刻な影響を及ぼしている」と感じました。

 自分の国を発展させたくても、まず土地の安全を確保するために膨大なお金と時間がかかるという事実を目の当たりにしました。「不発弾の問題はSDGsの17のすべての項目と直結しています」という狩野さんは「私たちの視点から想像し難い状況が、ラオスの社会問題をより一層複雑にしている」と話しました。

 
▲COPEでは不発弾被害の現実を知ることができます

 ぼんやりと考えていたことが、少しずつ明確に見えてきたような気がしました。


かのう・さくらこ/鳥取県出身。鳥取敬愛高校卒業後、2023年に関西外大国際共生学部に入学した。福田和生准教授のインフォーマルゼミ(研究会)に所属し、ラオスへのスタディーツアーに参加した。



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