≪Laos Study Tour REPORT≫ 世界最大の不発弾汚染国/SDGs〝18番目のゴール〟は LIVES SAFE FROM UXO
スタディーツアーの最終盤にメンバーが訪れたのは、ビエンチャンにある「ラオス不発弾処理機関(UXO Lao)」と「COPE(Cooperative Orthotic and Prosthetic Enterprise)ビジターセンター」でした。ラオスの人たちの生命や生活を根底から脅かす事実に直面しました。

▲ラオスではいまだに多数の不発弾が残されています
■残された不発弾は8000万個
SDGs(持続可能な開発目標)は、人間と地球が「やるべきことのリスト」として17のゴールを掲げています。しかしラオスでは独自に、18番目のゴール「 LIVES SAFE FROM UXO(不発弾のない暮らし)」を設けています。「世界最大の不発弾汚染国」と呼ばれているラオスは、不発弾の完全な処理なしに通常の社会生活を取り戻せないことを明確に示しています。

▲ラオスではSDGsに18番目のゴールを独自に定めています
ラオスは1975年までのベトナム戦争中に米軍の激しい爆撃を受けました。投下された爆弾は約200万トンで、国民1人当たりに1トンの爆弾を落とされたといわれるほど激しいものでした。「ベトナム戦争でなぜラオスを爆撃したのか」との疑問が出てくるかもしれませんが、ラオスは、米軍と戦っていた北ベトナム側の南ベトナム解放民族戦線への物資や兵員の補給輸送ルート(ホーチミンルート)があったことから、猛爆撃を受けました。ホーチミンルートの9割がラオス国内を通っていました。
当時投下された爆弾の20~30%が不発弾でした。最も多く落とされたのがクラスター爆弾でした。親爆弾から無数の子爆弾が放出される最も残虐な爆弾で、半径数百メートルにいる人を殺傷する能力があります。8000万個が不発弾としてラオス国内に残っているといわれており、現在の処理ペースでいけば、完全除去までに100年かかるとも200年かかるとも言われています。

▲爆弾の外殻や残骸がベンチや花壇、塀などに使われています
■被害者の4人に1人が子どもたち
畑仕事中に農機具が当たって爆発したり、たき火をしている真下に埋まっていて爆発するなど、ベトナム戦争が終わってから50年も経つというのに事故が続いています。不発弾事故で被害に遭った人は、5万人以上いるといわれていますが、政府などに報告されていない事故が多数あり、実情はよくわかっていません。


▲COPEビジターセンターに展示されている義手や義足
UXO Lao や COPEビジターセンターでは、不発弾処理の実情と不発弾の爆発事故で負傷した人たちへの支援活動について聴くことができました。

▲UXO Laoで不発弾処理の実情について聴きました
特に子どもへの被害が深刻です。被害者の4人に1人が18歳以下の子どもと言われています。ボール爆弾の不発弾をおもちゃ代わりにして遊んだり、不発弾処理が終わっていない場所に入り込んで事故に遭うケースが後を絶ちません。
子どもたちに「不発弾を見つけても決して触らない」「不発弾処理が終わっていないエリアには入らない」と伝えればよいという単純なものではないことが分かってきました。
UXO Laoで受けたレクチャーで、子どもへの指導にさまざまな問題点があることを知りました。
「ラオスには学校に行けない子どもがたくさんいます。不発弾について指導を受ける機会がない子どもがたくさん被害に遭っています」
「不発弾処理が進んでいない地域では、ワークショップやセミナーを開いて危険性を知ってもらう機会をつくっています。しかしそういう地域ほど、学校に行けない貧しい家庭の子どもが多くて参加してもらえません」


▲COPEビジターセンターの展示です
■ここでも「教育」がテーマだった
スタディーツアーのメンバーはそれぞれ、複雑な思いや考えを抱いています。
「ここでも教育がテーマでした。学校教育に限らず、直接的な指導がどこまで徹底できているかが問題だとわかりました。情報のネットワークをもっと整備しなければ被害は少なくならないとも感じました」
「ラオスが世界で最大の不発弾の汚染国だと知りませんでした。日本では、学校の授業で触れたり、マスコミによって伝えられることがほとんどなく、現地に来て初めて、いかに深刻な問題かということがわかりました」
「不発弾についての情報を知っているかどうかで生死が左右されてしまうにも関わらず、不発弾についての教育が完全に行きわたっているとはいえない状況に衝撃を受けました」
「COPEセンターの中に被災地を再現したエリアがあり一番印象に残っています。不発弾が家の敷地内に落ちてきたことが再現されており、とても怖くて、想像するのをやめたくなるような気持ちになりました。きっと来館者にその恐ろしさをできる限り伝えたいとの思いで作られたのだろうと感じました」
スタディーツアーへの参加者は、ラオスでは独自に、SDGsの〝18番目のゴール〟として LIVES SAFE FROM UXO を組み込んだ意味を重く受け止めました。

▲赤に塗られているのが不発弾に汚染された地域です
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