≪Laos Study Tour REPORT≫ 国際共生学部 福田和生准教授/「Experiential Learning」は Learning by Doing すなわち〝することによる学び〟

 国際共生学部2年の6人が2024年6月、「Experiential Learning」の一貫としてスタディーツアーでラオスを訪れました。「Experiential Learning」は日本語に直訳すると「経験型学習」ですが、実践の現場を見るとぴったりとくる和訳ではありません。スタディーツアーを計画したインフォーマルゼミ(研究会)を指導する国際共生学部の福田和生准教授に、「Experiential Learning」の意義と目指すところを聞いてみました。


▲「Experiential Learning」の意義と目指すところを聞きました

 福田准教授のインフォーマルゼミは現在、「Human Rights」「International Organization」「SDGs」を中心的なテーマにして、ゼミ生が自分の関心のある分野について研究を進めています。今回はその実践の場としてラオスへのスタディーツアーを実施しました。

■知識をどのように生かしていくか


▲「大学教育にどのように取り入れていくのか」熱のこもった話が続きました

―――日本の大学教育で「Experiential Learning」はまだまだ一般的ではありません。どのようなものでしょうか?

 あえて日本語訳にすれば「することによる学び」です。従来の大学教育は「Learning to know」(知るための学び)が主流でした。しかし世界的には、ここ20~30年の間に「Learning to know」には限界があるのではないかという考え方が広がっています。学生が自分で考える力や、自分で何かを動かす力を身に付けるためには、「Learning to know」だけでは十分ではないということです。知識をどのように生かしていくかが求められています。

 学生には「Learning to know」をはるかに越える潜在的な能力があります。たとえば教室で国連について百教えても、実際に国連を訪ねて国連で何が行われているか一見することにはかないません。まさに「百聞は一見に如かず」。「Learning to know」とは全く異なる見方や観念を供給してくれるのが「Experiential Learning」です。日本の大学教育に積極的に取り入れていくべきです。

―――とは言え最低限の知識は必要です

 もちろん最低限の基礎部分は「Learning to know」でカバーしなければなりません。「Learning to know」を完全になくしてしまおうということではありません。 知識の積み重ねがあってこそ「Experiential Learning」は有効です。知識の土台があって、そのうえで現場で知識がどのように作用していくかがポイントです。「Experiential Learning」を単なる「Doing」にしてはいけません。「Learning to know」と「Experiential Learning」が融合した形を〝HAPPY MARRIGE〟ということがあります。

■実際に途上国に行って考える国際共生


▲法律・司法分野で「ラオスの顔」として長く活躍してきた元最高裁長官で元司法省副大臣のKet Kiettisackさん(左)と話す福田准教授(右)

―――「Experiential Learning」の一環として実施された今回のスタディーツアーへの期待は大きかったと思います

 SDGsは世界共通ですけれど、ゴールに近づくためにはやはりグローバルサウスがメインになります。開発途上国を見ないで何が国際共生なのかとの思いがありました。ぜひ開発途上国に実際に行ってみて、現状を知ってほしいと思いました。ただ、目標としては最低限ですが「ラオスで、何であれ何かを感じてほしい」と思っていました。ゼミとして開催する初めてのスタディーツアーであったため、どこまで期待していいのか分からないというのが正直な気持ちでしたが、その点で結果は期待以上の120点でした。

―――参加した学生の取り組みはどのようなものでしたか?

 問題のとらえ方や感じ方、興味のある分野、現地での吸収の仕方は全員違っていました。良い意味でパーソナリティーが異なり、違った受け止め方や考え方をしていました。だれかに考えを押し付けるとか、無理に意見をすり合わせようというようなことがなく、多様性を受け入れながら自分の考えをしっかりと持っていました。言うのは簡単ですが、なかなかできることではないと思います。

―――次へ生かしたい課題はありましたか?

 もう少し予習ができる準備期間を置くべきだったと思っています。ラオスに到着直後からさまざまな体験が怒涛のように押し寄せる毎日でした。学生は、予想外の連続でなかなか頭がついていかなかったのではないでしょうか。

■どこにでもある学びのフィールド


▲「いろいろな形で知って、体験してほしい」と話す福田准教授

―――これから「Experiential Learning」をどのように展開していきますか?

 いろいろな形で「Experiential Learning」を知って、体験してほしいと思います。海外に行かなくても、開発途上国を訪れなくても、フィールドはどこにでもあります。

 2023年の秋学期から「Global Engagement in Action Series」という活動を始めました。第一弾は古着プロジェクトです。1学期間かけて地球規模の課題について具体的な行動に移せるかどうかを実践します。

 また、同じ時期に始めた「Global Engagement Mini-Series」では、地球規模の課題について学び、話し合い、自分たちに何ができるかを学生に考えてもらっています。今学期は両シリーズとも、国際共生学部の学生だけでなく他学部の学生も対象としていく予定ですので、「Experiential Learning」に興味がある、または実践していきたいと考えている学生の輪を広げていきたいと思います。

 加えて、近隣の小学校、中学校、高校とつながりを持って、SDGsをテーマに体験してほしい。外大全体で模擬国連もやってみたい。テーマは身近にたくさんあり、さまざまな機会があります。いずれにしても「Learning to Know」(知るための学び)から、「Learning by Doing」(することによる学び)、そして「Learning from Doing」(することからの学び)という学びの好循環につなげていきたいと思っています。

 失敗もあるかもしれません。でもやってみないと分かりません。反省や教訓でさらに学べることがあります。「Experiential Learning」は生きた実験室です。


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