英語国際学部「アジア共創学科」2025年春スタート/「異文化と歴史」の授業から/言葉の違いから探る文化の違い

※関西外大通信「THE GAIDAI」319号を基にまとめています

 英語国際学部のアジア共創学科が2025年4月にスタートします。アジア地域からの留学生と外大生が共に学ぶ機会が設けられる予定です。中国人留学生が日本語で学ぶ授業をレポートします。

 中国人留学生が履修している「異文化と歴史」の授業をのぞいてみました。


▲「異文化と歴史」の授業はほぼ日本語で進みます

 英語国際学部の靳衛衛教授の指導で、日本のエッセイや評論文を教材に、中国と日本の文化の違いを学んでおり、授業の8割は日本語です。日本人学生がアジアの留学生と共に学び成長する可能性を探ることができそうです。

■授業は冒頭から日本語で

 授業では国語学者の寿岳章子や金田一春彦の評論文、宮本輝のエッセイなどを教材にしています。

 授業は冒頭の挨拶からすべて日本語です。そして、靳教授の授業の鉄則は「自宅で必ず大きな声で音読しておくこと」「読み方や意味が分からない言葉は必ず辞書で調べておくこと」の2つです。

 留学生は順番に音読していきます。時折、靳教授の厳しい声が飛びます。

 「自宅で音読してきていないことはすぐ分かりますよ」

 「予習も復習もせずに〝理解できた〟と思っていてはダメです」


▲「言葉を通して文化や社会が見えてきます」と講義が続きます

■足を向けて寝られない

 授業では、言葉を通して中国と日本の文化の違いと共通点、そしてその背景を探ります。靳教授は「言葉を通して文化が見えてきます。日本の文化や社会を知ることができます」と繰り返します。

 金田一春彦の評論文「日本語のこころ」を教材にした授業では、頭や腰、足といった体の部位の言葉を使った慣用句がテーマになりました。

 日本語では「足を向けて寝られない」「揚げ足を取る」「足がつく」というように、足を使った慣用句にマイナスのイメージがあります。

 しかし中国では昔から、足は「美しいもの」「大切なもの」というプラスイメージがあり、女性の美しさを足に求めます。靳教授は「足を向けることは日本では失礼に当たりますが、中国人には理解できません」と説明します。

 また靳教授は、日本で興味を持ったことの一つとして〝鼻毛〟を挙げました。来日した当初は、鼻毛を切る道具がたくさんあるのに驚いたと言います。「中国には鼻毛を伸ばしている人がたくさんいますが、日本にはほとんどいません」と、少し変わった点からも文化の違いを指摘しました。

 靳教授は「体の部位の言葉を使った慣用句は直訳しても意味は分かりません。言葉の裏側には中国と日本のそれぞれの文化が絡んでいます」と解説しました。


▲言葉の裏側に絡む中国と日本のそれぞれの文化を探ります

■僕はウナギだ???

 中国語と日本語で共通する点もあります。日本語では髪を切るのに「頭を刈る」といいますが、中国語でも「頭を刈る」「頭を切る」といいます。この表現を聞いた欧米人は一瞬ギョッとします。

 また、日本語では食堂で注文する際に「僕はウナギだ」と言います。また「あそこのすし屋はうまい」という言い方をします。中国語でも似たような言い方をします。人間がウナギであるわけではなく、すし屋を食べるわけでもなく、西洋語を母語にする人たちから「日本語も中国語も論理的ではない」と言われることがあります。

 靳教授は「語いの違いや文法の違いを比較しながら、言葉の後ろにある文化の違いを考えるのはとてもおもしろいことです」としたうえで「言葉から文化を見てみましょう、そして文化から言葉に戻ってみましょう」と呼び掛けます。

■興味を持った言葉を掘り下げよう

 「異文化と歴史」の授業では、受講生が興味のあるテーマを決めて、資料を集めて分析し、プレゼンテーションすることを目指します。テーマは、日本でも中国でも欧米のことでもよく、それぞれを比較することも可能です。

 言葉の違いから文化の違いを探り出す醍醐味を知ることができます。「自分の興味のある面白い言葉を見つけて、深く掘り下げてみてください」と靳教授は指導します。

■中国人留学生に聞く


▲(右から)張涵琪さん、王晶さん

【張涵琪さん(四川省出身)】

 日本語を学び始めて4年になるという張涵琪さんは、日本語や日本文化のほかに経営学にも深い関心を持っています。「学業の傍ら、四川省でコーヒー店を経営しています。将来は自分の会社を持ちたい」と目を輝かせます。中国と日本の文化の違いを研究したいという考えとともに、日本の進んだ経営学を学び中国でその理念を生かしたいと言います。

【王晶さん(山西省出身)】

 日本語のほかにピアノや陶芸に興味があるという王晶さんは、日本のさまざまな風景に思いをはせ「建物や庭園などへの日本の美意識がすばらしいと思います。古いものと新しいものを織り交ぜた風景が美しい」と話します。中国でも日本語を学びましたが「少し違うなと思いました。もっと実用的な日本語を学びたいと思っていました」と言います。


 
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