鵜島三壽教授が研究するユネスコ無形文化遺産「シルクロードの楽器」写真展 奈良・東京で開催

英語国際学部の鵜島三壽教授が研究に組んでいる中央ユーラシアの伝統芸能を取り上げた写真展「シルクロードの楽器作り」が27日から奈良市で開かれる。これら芸能は、ユネスコ(国連教育・科学・文化機関)の無形文化遺産に登録されている。写真展は、鵜島教授が代表を務める科学研究費補助金を使った研究成果公開の一環で、今月下旬からは東京でも開かれる。これに先立ち両会場では、片岡修・国際言語学部教授によるミクロネシア連邦の世界遺産「ナンマトル遺跡」の写真展も開催され、本学の科研費研究成果公開の第2弾となる。

▲写真展のポースター。右上は鵜島三壽教授
 

 写真展は、奈良会場が27日から12日まで「ナラマチギャラリー2016」(奈良市公納堂町、ならまち工房Ⅲ内)で、東京会場が221日から26日まで「HAGI ROOM」(東京都台東区谷中3、HAGISO内)で開催される。展示されるのは、中国・新疆ウイグル自治区で伝承される伝統芸能「ムカーム」と中央アジアのウズベキスタンで伝承される「シャシュマカーム」。ともにさまざまな楽曲によって構成される歌と踊りからなり、音楽や舞踊の形態はさまざまで、多くの楽器が使われる。

▲中国新疆ウイグル自治区ハミの踊り
 

 シルクロードに残る伝統芸能は、各地にあった音楽をもとにイスラムやペルシャ、アラブの影響を受けて完成されたとされる。いずれも多様な旋法による旋法音楽で、アラビア語やトルコ語では「マカーム」、中央ユーラシアでは「ムカーム」「マコーム」などと呼ばれている。多彩な音楽、歌、踊りからなり、収穫祭や結婚式など祝いの席で演じられる。特に、使われる楽器が1020種類と多いのが特徴。だが、20世以降の近代化の過程で社会環境が大きく変化するなか、伝承が難しくなっており、2005年にユネスコの無形文化遺産に登録された。

▲中国新疆ウイグル自治区イーニンの踊り
 

 今回展示される写真のうち、ウイグルやウズベキスタンの撥弦楽器「ドゥタール」は、ペルシャ語でドゥは「2」、タールは「弦」を表し、「2弦」の意味。全長135㌢の長棹に2本の絹の弦を張り、音量は小さく柔らかな音色で、5本の指でかき鳴らして演奏する。また、台形の木箱に張りめぐらされた金属弦を両手にもった細いバチで打ち鳴らす「チャン」は、鍵盤を使わず、ハンマーで直に打つピアノに相当する。中国へはキリスト教の宣教師によって伝えられたため、「ヤンチン」(洋琴、揚琴)と呼ばれている。
 

 鵜島教授が代表を務める科研費補助金を使った研究は基盤研究B(海外学術調査)「中央ユーラシアにおける探検隊考古資料を活用した無形文化遺産の保存伝承研究」(201316年)。19世紀末から20世紀にかけてヨーロッパや日本の探検隊が発掘するなどした資料から芸能に関するものを調査し、現状との変化などを研究するもの。日本の大谷探検隊が現在の中国新疆ウイグル自治区ホータンで体験した記録から音楽関係の研究も行っている。
 

 鵜島教授は「中国では隋、唐代に国家として音楽を集大成したが、半分は中央アジア由来のものだった。それが、やがて日本に伝わり、雅楽へとつながっていく。現在の中央ユーラシアの音楽は、日本の音楽とも関わりがあるわけで、写真展を通じて、この地域の音学文化に親しんでもらいたい」と話している。

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