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RESEARCH 教員・研究レポート

【研究室から】外国語学部 スティーブン・C.・フェドロウィツ教授  

外国語学部 スティーブン・C.・フェドロウィツ教授

文化人類学、視覚人類学(ビジュアル・アンソロポロジー)

 

※関西外大通信「THE GAIDAI」321号の記事を基にまとめています

▲スティーブン・C.・フェドロウィツ教授

―研究テーマを教えてください

 現在の研究分野は、ろうコミュニティ、手話、視覚人類学、民族誌写真(エスノグラフィック・フォトグラフィー)、マルチモダリティ、研究方法論、宗教、儀式、パフォーマンス、そしてグローバリゼーションです。

―視覚人類学とはどのような学問ですか

視覚人類学は、人間の営みを視覚文化的形態から研究します。その研究と分析には映像や写真などの視覚的方法が使われます。

具体的には、民族誌研究に写真を活用しています。また、日本のろう者(聴覚障がい者)コミュニティの研究に視覚人類学を採用しており、最近では下町や商店街にある「伝統的」な酒場に関する研究にも取り入れています。

▲伝統的な酒場も最近の研究対象の一つ
(Photo by Steven C. Fedorowicz Copyright © 2025)

プロカメラマンをしていた父親は、撮影対象の人々と長い時間を共有するフォトストーリーが得意で、私は父の影響を受けました。研究や文章の補足のため、ろう者の写真を撮るようになりました。

▲研究室で愛用のカメラを手に

―専攻分野に進むにあたって、最も興味をひかれた点は?

実は大学3年まで、自分が何を勉強したいのかわかりませんでした。大学のアドバイザーが勧めてくれた人類学は、面白く、魅力的で、特にフィールドワークと民族誌学が好きになって大学院に進みました。

―重要な研究対象としている手話に興味を持ったきっかけは?

大学院の修士課程で、インドネシアのバリ島で遺伝性難聴プロジェクトの研究助手をしていた際に初めてろう者と出会い、手話を目にしました。

とても興味深く、研究場所を日本に切り替えたとき、主に関西のろう者コミュニティについて研究したいと思いました。日本の手話は目に見える文化形態です。

―関西外大では、2004年に日本手話研究会を創設しました

私が教員として外大に赴任した時、ろう者のコミュニティと手話についての講義を提案しました。そして、「日本における身体とコミュニケーション」というテーマの授業を受け持ち、手話を教えました。

学生からもっと手話を学びたいという希望もあり、KGU日本手話研究会を設立しました。現在は「日本のろう者コミュニティの社会言語学」という授業をしています。

―1997年から98年に交換留学生として関西外大で過ごしています

片鉾キャンパスで学びました。教員として外大に戻ってきたときには中宮キャンパスに移転していて、環境も設備も全く違っていました。

学生時代に学んだ先生も何人かは新しいキャンパスにおられました。日本で就職が決まって研究を続けられること、才能豊かで卓越していて、協力的な教員の一員に加わることができて、とても嬉しかった。もちろん、思い出があふれる外大に戻れたことは何より良かったと思います。

―自宅がある門真市城垣町で、2008年から「城垣町だんじり祭り協会会員」をされています

門真市城垣町のだんじりは、長さは7メートル、高さ4メートル、重さは3・2トンもあります。城垣町に来て初めての年、3階の窓の外にだんじりが見えたときは「これは何?」と驚きました。翌年の祭りのときには、私は少しの間行列についていき、3年目はカメラを手に、行列を追いかけ、近所の人たちと話をしました。

祭りの参加者は年々減少していて、私は、だんじりを押すよう勧められました。ここから、祭りに深くかかわるようになり、もう15年以上、祭りの写真を撮り、研究対象の一つにもなっています。

▲門真市城垣町のだんじりを撮影した一枚
(Photo by Steven C. Fedorowicz Copyright © 2025)

―研究室には阪神タイガースの応援グッズもあります

私はアメリカ・ミシガン州で育ち、メジャーリーグの地元チームといえば、デトロイト・タイガースでした。当時はあまり強くなく、初めて日本に来たときに知った阪神タイガースも同じで、親しみを覚えました。

阪神ファンの盛り上がりは関西文化の一部だと感じています。学生にも、日本の重要な文化体験の一つとして、甲子園球場に観戦に行くよう勧めています。

Profile

Steven C. Fedorowicz/アメリカ出身。ミシガン州立大学(国際研究、人類学)、ワシントン州立大学大学院(人類学修士、人類学博士)、1997年~1998年、関西外国語大学交換留学生。ワシントン州立大学人類学部講師などを経て、2003年関西外国語大学講師、2004年准教授、2025年から教授。2023年、国際文化研究所(IRI)共同研究プロジェクト代表者。2004年に学内で日本手話研究会を創設したほか、写真展・映画祭のコーディネーターを務めるなど、視覚文化にかかわる企画、運営に取り組んでいる。

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