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≪大学院にようこそ Vol.4≫ 金融行政・グローバル金融経済/出水博章・外国語学部教授
≪大学院にようこそ Vol.1≫「学部・大学院修士5年教育課程」が2025年度スタート/菊池清明教授に聞く
≪大学院にようこそ Vol.2≫大学院目指す2人に聞きました/外国語学部英米語学科4年・冨永友香さん、同3年・守田陵汰さん
≪大学院にようこそ Vol.3≫ 大学院の研究とは何か/2024年3月博士後期課程を修了した川口尚毅さんが語ります
≪大学院にようこそ Vol.5≫ 国際人権法・比較憲法/福田和生・国際共生学部准教授
大学院の新プログラムの導入に伴い、学生のキャリアパスの形成を見据えて、新たな分野から教員を抜擢します。三菱UFJフィナンシャルグループと金融庁での実務経験を持つ出水博章・外国語学部教授に語っていただきました。
でみず・ひろあき/大阪大学基礎工学部卒業。東京銀行に入社、主に内外リスク管理部門、コンプライアンス部門を担当。2015年より三菱UFJフィナンシャルグループ・アジア地域リスク統括部長としてシンガポール駐在。2019年より金融庁監督局兼証券取引等監視委員会特別検査官。2023年より関西外国語大学外国語学部教授。
■リスクマネジメント一筋30年
私は理系で、大学時代は物性物理学を学びました。金融機関に就職し、北米や東南アジア地域といった海外駐在も含めて、約30年間、リスクマネジメント分野専一の経験です。このユニークな経験が、私を、政府の一機関である金融庁に誘うことになりました。監督局及び証券取引等監視委員会において、金融システムの安定性という国家の課題に貢献する機会に恵まれました。
このように、民間部門、政府部門にて実務専一の私が、一転してアカデミア部門に転身し、また、大学院の言語文化専攻の領域で教鞭を取ることになるとは、私自身も全く想像していませんでした。私をこの領域に招き入れたのは、本学の建学の理念だと私は考えています。「建学の理念こそが、過去と現在と未来を貫く行動原理です」という言葉が本学のホームページには書かれており、その建学の理念とは、「公正な世界観に基づき、時代と社会の要請に応えていく実学」です。
私は実務家ですから、本学に来るまで教歴はありません。私のアプローチは少なからず異形であり、戸惑いを感じることも多いでしょう。2024年春学期に、私の公開授業を参観された教授のコメント、「出水先生の授業は、単なる教科書的な知識紹介とは一線を画し、事象の背景や目的に鋭く切り込み、学生たちに問題を読み解くための鍵を授ける刺激的なものであった」にもそれが表れています。
■リスクの定量化問題に取り組む
今秋の講義について、触れておきたいと思います。私の専門領域でもあった、リスクの定量化問題を扱ってみる予定です。リスクマネジメントの出発点は、「リスクを早期に認識できるかどうか、そして、それを組織の形式知に変換できるかどうか」に全てがかかっています。組織の形式知に変換できなければ、単なる個人の感想でしかありません。単なる個人の感想では、問題解決のための協力態勢をチームアップすることも、問題解決のための資源を調達することも出来ないのです。
人間の身体のリスク認識は健康診断のデータで定量化されるように、社会問題のリスク認識もデータで定量化されねばなりません。定量化されなければ、薬の量や投薬の種類の特定ができないのと同じです。数学の知識が必要であり、授業外課題も少なくなく、独習では講義をフォローすることは難しくなる内容です。ですが、社会問題のリスクを定量化できることは、社会に出た時に大きなパワーを発揮します。一人でも多くの学生が、そのパワーを身に付けられるように、私も努めて参りたいと思います。