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≪外大人≫ 西井健さん(大阪府警本部国際対策係警部補、外国語学部英米語学科1997年卒)/仕事の基本は「人対人」 外大は人と向き合う力を磨いてくれた

※関西外大通信320号の連載企画・第一線で活躍する卒業生にインタビュー「外大人Vol.31」の記事を基にまとめています

にしい・けん/広島市出身。広島県立五日市高校卒業。1997年外国語学部英米語学科卒業。同年、大阪府巡査となり警察学校入校。捜査第三課、国際捜査課勤務、在トリニダード・トバゴ日本国大使館二等書記官などを経て2023年11月から現職。趣味はランニングで、フルマラソンは14回完走、サブ4(4時間切り)を達成。

 市民に身近な交番勤務に始まり、事件捜査、犯罪を未然防止する生活安全対策、交通安全対策や要人警護……。

 警察の業務は多岐にわたる。その遂行能力の高さから「西の警視庁」とも呼ばれる大阪府警。仕事の間口は、管内、国内だけでなく世界に広がっている。

 ■きっかけはささいなこと


▲東警察署勤務時代の西井さん

 「警察官になったのは、自分でも想像しなかったくらいささいなことがきっかけでした」。

 西井さんは振り返る。在学中、3年生までは教師を意識して教職課程を履修、教育実習も行った。4年生に進級して就職先を真剣に考え始めた時、所属していたサークルの同級生から「大阪府警を受験しない?」と誘われた。警察の仕事を詳しく知っているわけではなかった。しかし、「まっすぐな気持ちで仕事ができる」「人に役に立ちたい」。そう思うと、強く興味がわき、採用試験に臨んだ。

 1997年4月、警察学校に入校、半年後大阪市内にある東警察署に配属された。ただ、「当時はまだ、警察の仕事の奥深さは知りませんでした」と話す。東警察署では交番勤務や留置管理(看守)などを経験。主に窃盗犯、つまり「泥棒」を担当する盗犯係の刑事も経験した。そして2004年3月、盗犯を専門とする府警本部捜査第三課に勤務した。

 外国人犯罪が急増し始めていた。学生時代に培った英語力を仕事で使う場面もあった。そんな時期、府警の警察学校には「英語専科」という、捜査や刑事訴訟法にかかわる専門用語など、警察官の仕事に関する英語を中心に学ぶ教育プログラムがあることを知り、半年間、英語専科で知識力と語学の能力に磨きをかけた。

 2009年には府警本部国際捜査課に勤務、国際犯罪の防止を目的に各国の警察機関で組織された国際組織「国際刑事警察機構(ICPO=インターポール)」との国際手配のやりとりをはじめ、日常的に英語を使う業務にあたった。

■クラブ活動で学んだ


▲学生時代、国際事情研究部の仲間と(左端が西井さん)

 広島市内の高校を卒業し、関西外大外国語学部英米語学科に入学した。「英語だけは得意科目と言えたから」と、英語を学べる大学を選び、進学した。

 在学中は4年間、文化会の「国際事情研究部」に所属した。世界情勢のなかで国際的な社会問題をテーマに選び、週1回、部員がそれぞれ調べたことや考えたことを発表することが主な活動内容で、毎年6月に開かれる「文化博覧会」(現文化フェス)でも発表、3年生では部長も務めた。

 「活動を通して、リーダーとしてグループをどのようにまとめるか、代表として他のグループやサークルとどのように接するのか」を考えるようになった。「この時の経験が、人と接するときに最善の対応ができるよう、自分の能力や立ち位置を考えることの大切さを知りました」と話す。

 ■念願の海外公館勤務


▲トリニダード・トバゴの英国高等弁務官事務所を訪問した西井さん

 大阪府警の英語専科で学び始めたころ、外務省に出向し、海外の公館で勤務することができると知り、「いつかは海外で働きたい」と希望を持つようになった。卒業後も1、2年に一度はTOEICを受験し、語学力の維持に努めた。

 応募資格の一つとなっていた階級昇任試験に合格して警部補になると、外務省出向の募集に応募、選考を通過し、2017年4月から2020年6月まで、トリニダード・トバゴの首都、ポートオブスペインにある日本大使館に二等書記官の肩書で赴任した。

 在トリニダード・トバゴ大使館は、カリブ海に浮かぶ島国など9カ国を受け持つ。主な業務はビジネスや観光で訪れる邦人の保護や、渡航の際の注意事項の発信のほか、警察官として、現地の警察を表敬訪問し、治安情勢の聞き取り、邦人保護の依頼なども行った。

 「国や文化は違っても、同じ志(こころざし)を持つ警察官として、快く受け入れてくれ、まさしく同志として通じるものがありました。この3年あまりは何にも代えがたい貴重な経験をしました」と話し、「関西外大で英語を学び、卒業後も勉強を続けていて、本当によかった」と心から思う。

 ■「世界」があふれるキャンパス

 現在は大阪府警本部教養課にある通訳センターで国際化対策係を務めている。府警の警察官に言葉の壁に対応するための「やさしい英語」、さらには外国人にも通じる「やさしい日本語」の教養を高めてもらうため、関連情報を発信したり、大阪で暮らす外国人に向けた防犯教室を企画したりするほか、府警へ視察などに訪れる外国の警察関係者の案内も行うなど業務の範囲は広い。「大阪・関西万博もまもなく始まり、やりがいのある仕事が増えそうです」と笑顔を見せる。

 インバウンドや外国からの留学生、居住者が全国で増え続け、交番勤務の警察官も外国語の翻訳機を携行する時代になった。いつかは、AIが人に代わって仕事をする時代が来るという言葉を聞くたびに思う。「警察官が『人対人』の仕事である以上、AIが人を超え、警察の仕事ができるとは思えません。人の苦しみや悲しみを理解できるのは、つまりは人だけ」と確信している。

 さらに、こう言葉を続ける。「人に対する力を磨いてくれたのが、関西外大です」

 日本人の仲間や先生はいうまでもなく、外国人留学生や外国から来た先生との交流を通して、いろいろな考えや文化に触れることができた。学生時代に留学の経験はないが、関西外大のキャンパスには確かにいたるところに「世界」があふれていた。

 こうした環境で学ぶ後輩たちには「学生時代には人とのかかわりを特に大切に。視野を広げ、人間力を磨いて、自信を胸に社会へ羽ばたいてほしい」と願っている。

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