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沈韻之さん(国際言語学部4年)が司馬遼太郎フェローシップ受賞

 国際言語学部国際言語コミュニケーション学科4年の中国人留学生、沈韻之さんが第19回司馬遼太郎フェローシップ(司馬遼太郎記念財団主催)を受賞した。受賞式は220日、東京都内で開かれる。


▲第19回司馬遼太郎フェローシップを受賞した沈韻之さん
 

同フェローシップは司馬作品にインスピレーションを得た知的世界を探求する企画(調査、研究、旅行計画など)が対象。応募資格は1625歳の若者で、日本語2000字以内にまとめる。
 

沈さんの受賞企画のテーマは「華族女学校と振華女中から見る中日近代女子教育」。
 

司馬遼太郎「坂の上の雲」に登場する3人の女性――正岡子規の妹・律、秋山好古の妻・多美、秋山真之の妻・季子について、明治時代の3つの階層を代表する女性像としてのヒントを得た。特に、宮内庁御用掛の娘だった季子が通った華族女学校(1885年創立)の生徒たちを追跡すれば、当時の女子教育の特徴を捉えられると考えた。
 

さらに、同時代の中国を代表する女学校として、江蘇省蘇州に振華女中(1906年創立)があることから、両校のカリキュラムや校訓、卒業生の進路を研究し、日中両国の近代以降の女子教育を比較することを提案した。
 

明治時代の日本では、「良妻賢母」の育成が女学校の教育方針で、女性は教育を受けても妻や母親としてしか社会的価値が認められなかったと見る。これに対し、清朝末期以降の近代中国の女子教育は、女性を旧式家庭の束縛から解放することを方針としたとする。
 

こうした教育方針の違いを双方の近代化の歩みの中に位置づけようとする試みで、「中日両国の近代女子教育とその近代化の過程に着目した探求は、今のジェンダー問題のヒントになる」可能性もあると結んだ。
 

沈さんは、振華女中の後身の中学・高校の出身。北京語言大学に入学し、3年生から関西外国語大学に留学した。「振華女中は、最初から庶民向けにスタートした中国でも珍しい存在。卒業生は、教育、医療、科学、文学などさまざまな分野で活躍してきました」と、女性の社会進出を目指してきた校風を語る。
 

 北京語言大時代、歴史の教師に頼まれ、昭和天皇の晩餐の献立に関する資料の翻訳作業を手伝ったことから、日本の和洋折衷料理の成立に関心を持った。日本の女学校に料理の授業があったことも知り、日本の食文化と近代女子教育の研究を志したという。
 

 今回のフェローシップには、北京時代に知り合った日本人の友人の勧めで応募した。「女子教育について疑問を持っていたので企画の原稿を書きました。この1年間、きちんと資料を収集し、意義のあるレポートの作成を目指します」と話している。

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