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溝上慎一・京大教授を迎え第8回FDシンポジウム開く

 「学びが深化し、学ぶ意欲が高まる授業を目指して」をテーマに、第8FDシンポジウムが23日、教員ら約60人が参加して中宮キャンパス・多目的ルームで開かれた。第1部は京都大学高等教育研究開発推進センターの溝上慎一教授が同じタイトルで基調講演。第2部は市原麻衣子・外国語学部准教授と西村孝彦・英語国際学部教授が、それぞれ授業の工夫などを発表した。質疑応答も行われ、締め括りは溝上教授が「アクティブラーニングを取り入れると、授業だけでは時間が足りなくなる。いかに、学生たちの授業外学習に結びつけていくかが今後の課題だ」と総括した。

▲ 教員ら約60人が参加したFDシンポジウム

 

 溝上教授は講演の冒頭、「アクティブラーニングは高校でも行われるようになってきた。来年、再来年、その経験者が多くなる新入生に、大学がどんな教育をどれだけ提供できるか、大きな課題だ」と指摘した。続いて、手のひらに乗る大きさで、択一問題に学生が数字を押して回答すると、瞬時に教員のパソコンで集計できる双方向授業の小道具「クリッカー」を紹介。参加者全員に体験してもらい、「250人規模の授業でも使っている」とアクティブラーニングへの活用について話した。

▲ アクティブラーニングの手法などを語った溝上慎一・京都大学教授
 

 
▲ 双方向授業に使われる、リモコンに似たクリッカー
 

 アクティブラーニングを取り入れた授業ではグループワークをさせ、大切なのは「必ず発表させること」。考え方を共有し、他のグループの考えを知ることが学生たちを成長させると語った。神奈川県・桐蔭学園の中学・高校での実例を示し、「人前に出て自分の考えを発表するのはしんどいが、力がつく。他者があってこそ発達する」と語った。

 また、アクティブラーニングは単なる授業の形態を示しているが、学びの質にまで考えを進めたディープ・アクティブラーニングという考え方も紹介した。

 
▲ 「国際関係論」の授業を実践例に挙げた市原麻衣子・外国語学部准教授
 

 第2部では市原准教授が「学修深化のための自己効力感向上に向けた取り組み」と題して発表。まず、①ほめること②教員が勉強すること③忍耐力をもって学生と接すること――の3点を心がけていると話した。実践例として挙げたのは、外国語学部のコース必修科目で、日本語での講義科目「国際関係論」。「理論に基づき、自分で国際関係を分析することができる」という到達目標を設定し、中心テーマは国家間戦争に絞っている。中間テスト、期末テストのほかグループ発表を行うことで、学生の相互刺激を促しているという。

 グループ発表は、学年、性別でシャッフルしてグループ分けし、上級生がリード。「リーダーがロールモデルになり、他のメンバーの活躍につながる動機づけになるケースもある」といい、「学生に『自分にもできるんだ』と思ってもらうことが大切。活躍の機会を与える授業を意識している」と強調した。

 試験や学生対応にも工夫を凝らし、質問を持った学生が殺到する日もあるという。また、ほめる際にも工夫が必要で、素晴らしい発表や発言
などは、言葉で最大限に評価することが学生のモチベーションアップにつながると語った。そのうえで、「弱点は、提供できる情報量に限りがあること」と悩みも口にした。


▲ 教職課程履修生の学びの深化について話す西村孝彦・英語国際学部教授
 

 西村教授のテーマは「アクティブ・ランゲージ・ラーニング・ストラテジー 意識と気づきによる内的動機づけを基礎としたアウトプット重視の言語学習戦略」。英語教員をめざす教職課程履修生への授業で心がけていることを語った。教員採用試験合格までの道のりを、1年生には山登りにたとえ「登り続け、頂きをめざそう」と励ます。2年になると、1本の木に見立てて、「根っこが大事」と説明。34年生には合格までのロードマップを描こうと呼びかける。

 教職履修学生の学びの基本3原則として、①Don’t afraid of making mistakesBe conscious of being in front of studentsBe conscious of Visualizing――を挙げ、「人は誰でも,意識と気づきで劇的に変わる瞬間がある。その気づきを行動力の根底にすることによって飛躍をとげ、誰でも変わりうる」という考え方を紹介した。

 ブレーンストーミングやイメージトレーニングの重要性にもふれ、「学習定着率は、講義だけだと5%、読書10%、視聴覚20%、デモンストレーション30%、グループ討論50%、自ら体験70%、他人に教える90%」と説明。Visualizingの重要性も指摘し、五輪招致請負人とも呼ばれるニック・バーリー氏がリオデジャネイロ五輪誘致に使った、南米が開催ゼロと一目で分かる世界地図を示し、「1枚のビジュアル・メッセージがこれだけの威力を発揮する。学生にも『心の中にビジュアルを』と語りかけている」とも述べた。

▲ 締め括りのコメントを語る溝上教授(左)

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