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≪The future starts here≫大野正寿さん(デロイトトーマツベンチャーサポート)Episode 01
すべては1枚の写真から 多様性を理解し異文化と向き合う
※関西外大通信「THE GAIDAI」321号の特集を基にまとめています
先行きが不透明で予測が困難な時代に正解はありません。急速な変化や複雑な世界に対応するため、求められるのは「次代を切り拓く、学びの力」です。関西外大で得た学びを活かして、卒業から10年経った今、社会で活躍する卒業生に〝これからの時代に必要な力〟を聞きました。

おおの・まさとし/福井県立美方高校出身。外国語学部英米語学科2015年卒。高校時代はサッカー部キャプテンとして活躍。大学時代は米国・イースタンミシガン大学へ1年間交換留学した。卒業後は、イギリスの大学院へ進学、国際機関での勤務を経て現在に至る。
「自分の労働力を使って、不条理に苦しむ人を減らしたい」その出発点は、大学1年のときに大野さんが履修した「国際ボランティア論」の授業で、スクリーンに映し出された1枚の写真でした。
国際ボランティア論の授業で、めばえた夢
「飢えに苦しむ少女」と「その少女を狙うハゲタカ」エアコンの効いた教室で授業を受ける自分とは、まるで別の世界が広がっていました。国際機関や貧困問題、紛争地支援などの言葉がシラバスに並んでいたことから「何となく面白そうだ」と直感で選んだ授業でしたが、「同じ地球上で、なぜここまで違うのか」とその答えを知りたくなりました。
授業を受けるごとに新たな世界の現実を知りました。それは義務感ではなく、純粋な好奇心として、いつの間にか学ぶことが楽しくなっていました。そして関心は経済学、政治学へとどんどん広がっていきました。
大野さんは卒業してコンサルティング会社に就職しました。しかし、少女とハゲタカの写真から受けた衝撃と「自分の労働力を使って、不条理に苦しむ人を減らしたい」との熱い思いが揺らぐことはありませんでした。もっと専門性を高めようと、2年後にはイギリスの大学院で学ぶことを決めました。
その後は国際機関や政府機関での勤務を経て、現在、世界四大監査法人グループ「BIG4」の一つであるデロイトトーマツで、オープンイノベーションやスタートアップ支援を担当しています。熱い思いは揺らいでいません。特に新興国のスタートアップ支援を通じて、社会にインパクトを与えようと奔走しています。
言語を学ぶことは人の痛みを知る入口

大野さんは大学3年のときに、アメリカのイースタンミシガン大学へ交換留学し、経済学と政治学を学びました。今でも思い出すのが、「マイノリティ」としての経験です。肌の色や国籍によって、相手が態度を変える場面に何回も直面し、「なぜ自分がこんな扱いを受けなければならないのか」と悔しさを感じました。そのような経験が、異文化を理解することへの興味をさらに深めていきました。その経験は今も、生きています。
今の大野さんの仕事は、プロジェクトごとにメンバーが変わり、上司も同僚も外国人です。バックグラウンドが異なる仲間と短い期間で信頼関係を築き、成果を出さなければなりません。大野さんは「留学中のマイノリティとしての経験やそこで自分なりに試行錯誤して異文化に向き合い理解しようとした経験が、今の環境に溶け込むことを助けてくれています。人種や言語、文化の違いを越えて働くことができるようにしてくれた」と思っています。
日本の企業のグローバル化が進み、外国人労働者が増えています。だからこそ、自分とは異なる考えや背景を持った人とのコミュニケーションがますます重要になります。
大野さんは、語学を学ぶ目的の一つは「人の痛みを知ること」だと考えています。人種や宗教、性的嗜好などの違いを目の前にしたとき、その違いを理解しようとする姿勢を持てるかどうかが問われます。語学の修得は「人の痛みを知る」ための入り口になるに違いありません。
関西外大は一歩を踏み出す最適の場
大野さんは「関西外大には、世界中から集まる留学生と交流したり、オールイングリッシュで授業を受けたり、海外に留学したりするなど機会があふれています。多様性を理解し、異文化と向き合う力を養える場所だといえるでしょう」と話し「すべてが、グローバルな視点を持つための土台となります」と力を込めます。
語学を学ぶことは、単に英語を話せるようになることではありません。異文化の中で自分をどう表現し、何を受け入れることができるかを学ぶことです。キャンパスはその実践の場です。挑戦することを恐れず、自分の視野を広げ、多様な価値観に触れることで、新しい世界が開けます。
大野さんは繰り返します。「関西外大は、その第一歩を踏み出すための最適な場所です」
