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概要

外大通信デジタルブック

[7] THE GAIDAI 2014年(平成26年)12月9日 第275号Campus Life 関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載しています http://www.kansaigaidai.ac.jp/日本学への関心 異文化理解に結びつけ 中央ユーラシアの芸能も探る│中宮と学研都市の両キャンパスで「日本学」を担当されていますが、授業内容はコアな感じがします。鵜島 学研では、日本の「祝祭日」の意味から入り、「絵馬の謎解き」「田植えの祭」、さらには「日本人は風呂が好き―桶風呂」「衣服―藤織り」「和菓子―寒天作り」の職人シリーズへ。そこから祇園祭、六斎念仏、盆踊まで。│中宮では、京都観光、世界遺産、そして「破格の美」「アホ・バカに見る日本的特性」から「紋章とパスポート」などが並びます。鵜島 留学から戻った学生が「日本の風呂に入れないのが辛かった」って話すのです。日本の風呂は湯につかり、清潔にするだけではありません。「疲れが取れる」というリフレッシュから娯楽に結びついています。この道一筋の職人を敬うのも特徴です。ユネスコの無形文化遺産になった和食も、日本は天ぷら、鍋などと専門化し、鍋はまた食材ごとに特化していく傾向があります。そこがフランス料理などと違う。外国人に接する機会が多い外大生は日本の伝統文化を話さないといけない時が来ます。そんなことも考えて授業を計画しています。│以前は京都府の専門技師として文化財に絡んで、さまざまなことに携わったとか。鵜島 そうですね。京都の文化財を扱うことは、日本文化を考えることにつながります。発掘した出土物の整理分類から「京舞」という無形文化財の保護継承や、日本三景「天橋立」の世界遺産登録に向けた行政上の環境整備にも関わり、日本文化研究のよい現場経験になりました。│一方で、「中央ユーラシアにおける探検隊考古資料を活用した無形文化遺産の保存伝承研究」も進めています。文部科学省などからの科研費研究として認められています。場所はどこですか。鵜島 中国の最も西にあたる新疆ウイグル自治区と、国境を越えて、さらに西のウズベキスタンです。│随分遠いところですね。何を対象としているのでしょうか。鵜島 新疆ウイグルでは「ムカーム」、ウズベキスタンは「シャシュマカーム」と呼ばれる楽曲に舞踊を伴った伝統芸能です。すでに、ユネスコの無形文化遺産になっています。中央ユーラシアについては、ヨーロッパのスタイン(イギリス)やヘディン(スウェーデン)などが、日本からは約百年前に大谷光瑞(元西本願寺法主)が指揮した探検隊による調査報告が知られています。それらをこれまでにない芸能の視点から活用します。│壮大ですね。何か手がかりがあるのですか。鵜島 大谷探検隊の一員・橘瑞超が残した記録「中亜探検」に新疆ウイグルの南西部ホータンでの「油皿踊」の見聞記があります。この踊りと、私が2006年から3年間、新疆ウイグルでのムカーム調査に加わった時に東部ハミで見た「油灯舞」は類似しており、研究テーマとして着想しました。いずれもシルクロード上の町です。│「京舞」などの芸能を担当していたときの経験が役立ちましたか。鵜島 先の調査で、ムカームは楽器なら二十数種に及ぶ多彩さで、中央ユーラシアで最大の合奏音楽と知りました。さまざまな踊りも見て、日本の雅楽や民俗芸能にも通じるものがあるのでは、と感じたのです。│科研費による研究の方はどこまで進んでいますか。鵜島 4年計画ですが、ウイグルの治安が微妙で、先方の文化庁の要請で当初計画を手直ししています。初年度の2013年度は、新疆ウイグル自治区を訪問する予定でしたが、隣接する甘粛、寧夏、青海の各省・自治区を回り、今年はウズベキスタンの首都タシケントとサマルカンドに行きました。│これからのウイグルが気がかりです。鵜島 共同研究者4人と分担していきます。「油灯舞」を挙げれば、後継者は少なく、〝絶滅危惧種?です。保護継承の意味からも調査は急がれます。無形文化財は、担い手や地域の当事者にとって見慣れすぎて、その価値に気づかないことも多いのです。よその人である私たちが関わることで、認識を改めてもらえる場合もあります。│異文化交流や理解の波及効果といえますね。鵜島 ウイグルの人々は、「歩き始めれば踊り、しゃべり始めたら歌う」といわれるほど芸能好き。仕事の後、木陰の下にみんなが集まり、楽器を奏でながら、人生を謳歌しているようでした。そのライフスタイルに魅了されています。現代の日本、老いも若きもスマホに夢中で黙りこくっている。日本はかつてない不機嫌の時代です。本来、日本人もコミュニケーション上手でした。専門は、文化史学、文化財学。立命館大学大学院文学研究科博士課程前期史学専攻修了。財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センターや京都府教育委文化財保護課などを経て、2008年、関西外国語大学准教授。14年に教授。文化庁文化財部伝統文化課調査員や枚方市景観審議会委員も務める。プロフィル研究室から英語国際学部・国際言語学部鵜島 三壽 教授Vol. 33国留学生の声も聞いて授業計画帰化財保護の現場で経験を積む文イグルの平穏を祈り、共同研究を続けるウ中央ユーラシアの略図うしまみつひさ新疆ウイグル自治区タクラマカン砂漠パミール高原ホータンカシュガルウルムチ敦煌楼蘭ハミウズベキスタン中国サマルカンドタシケント天山山脈バルハシ湖崑崙山脈天山北路天山南路西域南道あまのはしだてこうずいたちばなずいちょうあぶらざらおどりゆとうまい 「FDカフェ」の第5話が10月30日、英語国際学部の鵜島三壽教授を話題提供者に迎え、中宮・多目的ルームで開かれた。「外大生にふさわしい『日本学』を模索して」というテーマで、日本人の美意識や言葉のとらえ方を中心に、興味深い話を披露した。学研都市キャンパスと同時中継され、教員や学生ら約40人の参加者は、「日本文化の楽しさ」を堪能した。 鵜島教授は「日本学研究概論」、「Japanology B・日本学B」の授業で、「留学先の博物館に日本のものが展示されていたら、説明できるか」という観点から、日本の文化的伝統とは何か、自分はどこに立脚しているのか、という「気づき」を学生に促している。日本の焼き物については、「日本人は作品の傷や修理跡など、不完全さの中に美を見いだしている」と「破格の美」という概念を説明した。また、言葉の面では寿司の「助六」が、歌舞伎の題目から名付けられたという話を紹介。言葉遊びで名前が付いたことについて、「日本人はこういう〝変化球?が好きなのです」と話した。 「歴史を学ぶ魅力は、事象を推理し、論証すること」と強調。外大生にふさわしい授業というテーマが参加者の関心を集めた。この日のFDカフェには、就業体験で来学していた枚方市立長尾西中学2年の男女4人も参加。1人ずつ感想を述べた。外大生にふさわしい日本学F Dカフェ鵜島教授が「気づき」促す 1990年ノーベル文学賞を受賞したメキシコの詩人・批評家・外交官であったオクタビオ・パス生誕100周年を記念して「オクタビオ・パスの時代」と題したシンポジウムを開催した。詩人でもある本学のアシアイン教授のほかに、メキシコ政府の派遣で来日した詩人・作家のアルマンド・ゴンサレス・トレス氏とフリアン・ヘルベルト氏がそれぞれ講演を行った。 アシアイン教授は、パスが幼少期から自宅の日本風庭園を通じて日本文化の一端に親しんでいたことにまず言及し、長じて旧スペイン大使、林屋永吉氏と松尾芭蕉の『奥の細道』を共訳したことをきっかけに俳諧にも通暁したことが彼の詩作に影響を与えたことを指摘した。ゴンサレス氏は、秀でた対象分析力ゆえに、パスが詩人にとどまらず、批評家・外交官としても活躍し、メキシコの政治・社会に影響力をもったと述べた。ヘルベルト氏は50年代?70年代初頭をパスの活動最盛期と位置付け、外交官として赴任したインドにおけるパスについて触れた。 アシアイン教授はパスの詩を芭蕉に倣った「旅人の詩」と指摘したのに対し、ヘルベルト氏は旅することで詩作する伝統は西洋にも存在したことに言及し、芭蕉作品を訳した経験が、パスをして同じアジアであるインドを理解することを助け、愛着を育んだのではないかと述べた。飛び入りで留学生別科のカベサ教授がパスの詩を朗読する一場面もあった。(外国語学部教授 林美智代)右からアシアイン教授、ゴンサレス氏、ヘルベルト氏オクタビオ・パスその神髄に迫るアシアイン教授ら3研究者講演