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概要

外大通信デジタルブック

[11] THE GAIDAI 2015年(平成27年)5月22日 第278号Campus Life 関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載しています http://www.kansaigaidai.ac.jp/太平洋の巨石文化を探って30年調査・研究の成果が「世界遺産」に│ミクロネシアのポーンペイ島(旧ポナペ島)で発掘調査を続けてこられましたね。片岡 30年近く手がけてきた調査の集大成が、世界遺産登録として実を結ぼうとしています。日本ではあまり知られていない巨石文化なので、感慨深いですね。留学先のオレゴン大学大学院でアドバイザーの先生がポーンペイ島のナン・マドール遺跡を調査していました。大学院で10年間学んでいる間に、その先生から研究テーマについて、「ナン・マドールにするか、イースター島のモアイ像にするか」と問われ、ポーンペイ島を選んだのです。それが今につながっています。 2007年8月、ミクロネシア連邦政府から文化財専門委員に委嘱され、世界遺産登録に関わってきました。既に登録申請書がユネスコの世界遺産センターに提出されていて、ユネスコの諮問機関・ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の審査を経て、早ければ来年6月にも登録されることになりそうです。│ナン・マドール遺跡の特徴は?片岡 ミクロネシア最大の巨石建造遺跡です。ポーンペイ島の南東部の海岸に位置し、1.5×0.5㌔の範囲に、サンゴと土を積み上げた大小95の人工島が築かれています。それぞれの名前やいわれは、口頭伝承の形で現在まで伝わって来ました。1000年?500年ほど前に作られた見事なものです。満潮時は人工島の間が水路になり、「太平洋のベニス」とか「海の要塞」などと呼ばれてきました。人工島には儀式や儀礼のための建物や首長の家や墓などが、柱の形をしたり、巨大な岩石のままだったりする玄武岩が積み上げられて建造されています。歴代首長の墓があると伝えられるナンタワスという人工島は、推定で6万5000本もの柱状玄武岩が使われています。どうやって積んだかは謎のまま。有名なイースター島のモアイ像やヤップ島の石貨と並ぶ巨石文化の代表格です。│考古学を志した理由は?片岡 枚方高校時代は内向的で、劣等感にさいなまれていました。そんなときに出会ったのが、1年の時の担任、瀬川芳則先生でした。夏休みに「鷹塚山遺跡を発掘するから来い」と言われ、わけ分からんままに参加したんです。宝探しといった雰囲気でしたね。これがきっかけで考古学にはまってしまい、食っていくために大学は経済学部に進んだのですが、考古学の本ばかり読んでいました。卒業後、枚方市文化財研究調査会に就職して、4年半ほど発掘の仕事に就いていました。│それがどうして、太平洋の島々をフィールドにするように?片岡 このままだと自分がダメになるという危機感が募り、アメリカへ行こうと決心しました。考古学や文化人類学が学べて、授業料が安い大学に編入学できないかと、探し当てたのがグアム大学。27歳でした。太平洋地域は考古学の世界では遅れていて、人類学を専攻することにしました。これが人生第2の岐路となり、太平洋の研究が最も盛んだったオレゴン大学の大学院に進むことになったのです。通算すると17年間、学生だったことになりますね。大学院を出て帰国すると、恩師の瀬川先生が本学で教員をされていて、「学長に売り込んでやる」とおっしゃり、とんとん拍子で話が進んで、助教授に採用されました。│太平洋での考古学調査と言語のつながりは?片岡 日本も太平洋の島々の一つ。小笠原諸島は東京都ですが、そのすぐ隣にミクロネシアなどの英語文化圏が広がっています。世界遺産に登録されたら観光にも力を入れるでしょうから、外大生にとっては語学力を生かすフィールドが広がることにもなります。太平洋の島々に目を向けると、歴史的背景は現在につながってくるし、将来に関わってくるかも知れません。授業でそんな話をすると、学生の目が輝き出しますね。刺激されたのか、「ナン・マドールに一人旅をしてきました」という女子学生もいましたよ。熱意は伝わっていると思います。│現在、科研費の対象となっている調査研究をグアムでされていますね。片岡 オレゴン時代の同級生がグアム大学で教えていまして、グアムで共同研究をしようということになり、私が研究助成金を確保し、友人が現地調査の許可を得る――という作戦を立てました。調査対象は、米海軍通信基地にあるハプト遺跡で、15棟の高床式の建物を支えるラッテストーンと呼ばれる石柱が立てられています。今年から、グアム島最南端に築かれたラッテ期のアガ・トンガン遺跡の調査を開始しました。二つの遺跡の比較研究が楽しみでなりません。科研費調査が終了する2016年度中には、まとめの意味で国際シンポジウムを開いてグアムの歴史保存局の方に発表してもらったり、しっかりした成果報告書を出したりしたいと考えています。 動物考古学専攻。オレゴン大学大学院で博士号を取得。1974?79年と82年に財団法人・枚方市文化財研究調査会に勤務した。94年本学短大部助教授となり、同教授を経て現職。「授業は楽しく。自分が楽しまなければ、誰が楽しむ」をモットーにしている。プロフィル研究室から国際言語学部片岡  修 教授Vol. 35ーンペイ島のナン・マドール遺跡ポ古学にはまった、通算17年の学生生活考平洋の島々は語学力を生かせる広大なフィールド太かたおかおさむ▲ナンタワスの外壁 「魅力ある授業を目指して?学生を惹きつける授業のあり方」をテーマにFD教員研修会が5月2日、中宮・多目的ルームで開かれた。学研都市キャンパスと遠隔授業システムで結ばれ、新任教員ら計約70人が参加。第1部の「魅力ある授業をめざして―私の授業実践」では、英語キャリア学部の松宮新吾、森川長俊両教授が工夫を凝らした授業の進め方について講演した。 松宮教授は、「アクティブラーニング」のポイントとして、▽学生と教員のコンタクト▽共に学ぶことの実現▽小テストと即座のフィードバック―など7項目を提示。教員には「授業デザイン力」が必要で、「教室に入る前に教員自身の頭の中をいかに活性化するかが課題だ」などと述べた。 4つの科目で計1000人以上を教える森川教授は大学院生のTA(ティーチング・アシスタント)を活用している。授業では、▽スマホの奴隷になるな▽途中離席はTAに断ってからする――などの3点を決めごととして、学生に注意しているなどと話した。 第2部は、新任教員を中心にした懇談会。新任で外国語学部の土井裕文准教授は授業の工夫として、「アトランダムに席替えをしてクラス内を融和させる工夫をしている」と話した。ネイティブ教員も大勢参加し、発言が相次いだ=写真。 新任教員ガイダンスが3月31日、中宮キャンパスで開かれた。中宮、学研都市両キャンパスの外国人教員を含む約70人が出席。谷本榮子理事長・短期大学部学長、各学部・短大部の教務委員を務める教員ら約50人も同席した。 谷本義高・大学学長が①国際人の育成と実学重視という「建学の理念」②オール英語授業の導入や留学の拡充とともに、各学部で推し進めるカリキュラムの充実への本学の教育方針③それぞれの学部での学科長や教務部長と連携した授業運営について説明した=写真手前左端。 ついで澤田治美・FD委員長(外国語学部教授)が、FDを重視し、関係の公開授業やフォーラム、シンポへの積極参加を呼びかけた。また、宮崎道朗・法人本部長は指導の際のハラスメントについても言及した。 この後、各新任教員は所属キャンパスに分かれ、各教務部長から説明を聞き、キャンパス内の施設を見学した。魅力ある授業探るFD教員研修会に70人新任教員ガイダンス大学学長が教育方針など説明ナンタワスの入り口テニアン島の巨大ラッテストーン