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概要

外大通信デジタルブック

THE GAIDAI 2015年(平成27年)12月11日第281号[18]Gaidai News関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載していますhttp://www.kansaigaidai.ac.jp/意味論・語用論を研究テーマとする外国語学部の澤田治美教授が編者を務めた「ひつじ意味論講座」(ひつじ書房)の第7巻「意味の社会性」が出版され、全7巻が完結した=写真下。学術出版のひつじ書房設立20周年企画として、2006年12月に最初の編集会議が開かれてから9年を費やし、83人が執筆に加わったユニークな意味論講座の完成となった。「ひつじ意味論講座」完結を受けて、澤田教授は10月19日、ひつじ書房(東京都文京区)で「図書新聞」のインタビューに応じた。この中で、澤田教授は、「言語学を文法論といった狭い領域に閉じ込めるのではなく、言葉と人間、ものの考え方、社会との関わりを意味という綱でくくってみようとした試みで、私としては成功したのではないかと自負している」と、意義を語った。澤田教授によると、言語学は言語の形式の側面を研究する「構造主義」から始まったが、言葉を内容の側面、さらにもっと広く場面や社会との関わりの中でとらえることが必要だと考える「意味論・語用論」を重視する立場から講座を企画した。講座は、同心円的な構成になっており、中心円が「命題的意味」として、事柄を表す意味(第1?2巻)、その外側が、話し手がどういう気持ちで話しているかなどを考える「モダリティ(心的態度)的意味」(第3?5巻)、さらに「発話場面的意味」(第6巻)、最も外側の円としての「社会・文化的意味」(第7巻)からなる。モダリティや主観性に計3巻を充てて手厚く扱ったのと、最終巻で、これまで取り上げられることがなかった災害、司法、治療、スポーツといった社会・文化分野の意味を考えたのが特徴だ。執筆陣は、学問的立場にとらわれず、幅広い分野から参加。「こうした構成をもった意味論講座は日本で皆無だった。世界でも例がないのではないか」(澤田教授)という。澤田教授は、学生へのメッセージとして、「英語学習を単なる暗記するものと考えるのではなく、言葉の背後には、人間があり、社会があるという思いをもって学んでほしい。〈ジョンでもこの問題は解ける〉という時、なぜ〈でも〉というのか。そういうことを考えれば血の通った言語学習ができるだろう。〈GO FOR it!(語学の、その先へ。)〉に関連して言えば、7巻がお勧めだろう」と話している。図書新聞の澤田教授インタビューは11月28日付に掲載された。外国語学部のアウレリオ・アシアイン教授が今夏、百人一首をスペイン語訳し、解説を加えたCentena decien poetas : Hyakunin Isshu(100歌人の100首:百人一首)をメキシコで出版した。大学教授のほか作家、詩人、翻訳家など様々な顔を持つアシアイン教授が念願にしていた〝百人一首のスペイン語版?だ。日本文学に精通し、『奥の細道』をスペイン語に訳したノーベル賞作家、オクタビオ・パスとともに編集の仕事に携わったこともあるアシアイン教授。「2007年に和歌を翻訳したLunaen la hierba(草の月)を出版したが、百人一首をまとめるのには15年かかった。次は日本の現代詩に挑戦したい」と話している。本はA5の変形版、216ページ。母国・メキシコのベラクルス大学から出版された。パスなどに影響され、メキシコで俳句は愛好家が多く、著作も見られるが、「百人一首の解説本は初めてではないか」(アシアイン教授)という。翻訳したのは小倉百人一首。天智天皇から順徳院までの百首を、歌番号順に1首2ページを使って展開している。奇数ページに、歌番号と作者名、歌のスペイン語訳、日本語の作者名、歌とローマ字の読みが並ぶ。偶数ページには長短様々な解説文を載せている。スペイン語訳の歌は、五・七・五・七・七の数に合わせて訳文の音節を七五調に配列しており、アシアイン教授は「翻訳の難易度が歌によって全然違うので、苦労した」と感慨深そうだ。解説文は、古典文学全集や詩人の大岡信さんの著作など日本語の文献や、スペイン語、フランス語、英語、イタリア語に翻訳された資料を参考にした。お気に入りの歌は、小野小町、藤原定家、菅家(菅原道真)だという。また、アシアイン教授は昨年11月、オクタビオ・パスと日本の関係を集大成したJapon en Octavio Paz(オクタビオ・パスと日本)をメキシコで出版している。これは、アシアイン教授自身による約50ページのエッセーを冒頭に置き、紫式部や松尾芭蕉などについて書いたパスのエッセーや詩、短歌や俳句の翻訳などを収録。SENDAS DE OKUと題した芭蕉の『奥の細道』スペイン語版も載っているほか、ドナルド・キーン博士の寄稿もスペイン語に訳して掲載した。澤田治美教授アシアイン教授外国語学部力作二題「ひつじ意味論講座」全7巻完結言葉の背後に人間、社会があるスペイン語版「百人一首」出版歌によって翻訳の難易度が違う短期大学部1年生の専門必修科目「K.G.C.ベーシックスB」1回目の全体授業が11月11日、谷本記念講堂で行われ、「中国語と中国文化の魅力」に触れる講義があった。短大生に、英語国際学部への3年次編入を視野に、中国語や中国文化に興味を持ってもらおうと、講義では英語国際学部・相原里美准教授、短大部・周小臣准教授がクイズ形式で出題。まず、中国の地理や世界遺産など基本知識を尋ねる問題から始まり、学生たちは講師のヒントをもとに答えていた。中国語と日本語の比較では、漢語で示した発音を聞いて、「星巴克(スターバックス)」「哈根?斯(ハーゲンダッツ)」など外来語の意味を当てる問題。次々に正解する学生に、相原准教授も「なぜ分かるの」とびっくりの表情。また、声調(音の高低)で意味が全く変わってしまう例や、「拍馬屁(馬の尻を叩く)」は「ごまをする」意味との説明に、学生から笑いが起こっていた。最後に、中国の少数民族の衣装、食文化が紹介されたあと、全員で「アナと雪の女王」のテーマを中国語で合唱。1人の学生がマイクを握って歌い、拍手と縫いぐるみが贈られた。(写真は掛け合いで講義を行う相原准教授左と周准教授)。相原・英語国際、周・短大両准教授がコラボ「中国語と中国文化の魅力」短大全体授業人権教育思想研究委員会主催の人権問題学習会が11月23日、ヒューマインド代表の乙守栄一氏=写真=を講師に招いて開かれた。「風評被害・噂等の人権侵害についてネット社会の落とし穴について考える」のテーマで、中宮と学研都市両キャンパスを遠隔会議システムで結び同時開催された。ネットの情報交換に危険が潜む状況を聞いた。乙守氏によると、風評被害とは「根拠のない噂のために受ける被害」で、「本来は無関係である人が損害を受ける」と定義。風評とは戦国時代に遡り、情報戦略を駆使した武田信玄の諜報戦にも見られたという。現代では、東日本大震災による東北の農水産物に対する風評が象徴的だとした。ネットによる風評では、飲食店アルバイト店員によるネット投稿や商品が不良品だとして従業員を土下座させ「店の評判をネットに流す」と脅すクレーマーの存在。また、芸能人が来店したという個人情報を従業員が漏らす―などの事例を挙げた。こうした被害は▽情報元は事件・事故や身近なものまで様々▽ネットを介して短時間で拡散▽意図せず被害が膨らむ▽SNSの恐ろしさを知らない―などの特徴を挙げた。さらに、風評被害から逃れる対策として▽個人としては、よいコミュニティーを築く▽自分としての軸を持ち、意見、根拠を持つ▽組織としては、情報の取り扱いは大切に▽適切な評価とインセンティブ―などをあげた。また、被害を受けた場合は▽慌てず冷静に▽個人で対応しない。一人で解決しようとしない▽法的機関、警察、ネット風評対策会社などに相談する―ことを促した。人権学習会「ネット社会の落とし穴」ヒューマインド乙守栄一代表メキシコで出版されたスペイン語版「百人一首」