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概要

外大通信デジタルブック

[13]THE GAIDAI 2016年(平成28年)4月1日第283号Campus Life関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載していますhttp://www.kansaigaidai.ac.jp/文革の混乱を経て日本近代文学研鑽の道へ│中国の文化大革命時代に青少年期を過ごされました。苦労されたようですね。魏小学校を卒業した年に文化大革命(1966?76年)が始まりました。混乱の中で、小中高校、大学は授業を停止しました。私の祖父は地主だったため、一家は「出身が良くない」階級に分類され、批判されました。私は小学校卒業の5年後、当時住んでいた陝西省西安市のハンカチ工場で労働に従事させられました。同期で工場に入った約100人のうち、半分以上は「出身が良くない」人たちで、工場内でも差別されました。電動ミシンの修理が仕事で、8年間働きました。│西安外国語大学日本語学科に入り、日本文学研究の道に進まれました。魏文革中の大学生は「労農兵学生」と呼ばれ、労働者、農民、兵士が無試験で入学できる特権をもち、私のような者は入学の資格がありませんでした。幸いなことに、文革が終わると、大学入学試験が復活しました。しかし、私は中学、高校の教育を十分に受けていなかったので受験するのが不安でした。そこで、父の知人で、台湾で日本語教育を受けた人に日本語を習い、1978年、比較的入りやすかった西安外国語大学日本語学科を受験し、合格しました。卒業後、陝西人民出版社で編集の仕事を2年やった後、大学院に相当する北京の中国社会科学院研究生院に合格し、日本文学研究の道に入りました。中国の日本文学に関する全国的な学会である「中国日本文学研究会」の秘書長(事務局長)を15年ほど務めています。│日本の「私小説」を研究されています。中国でも読まれているのですか。魏「私小説」は日本現代文学の伝統的様式だと言われていますが、中国では必ずしも理解されてきませんでした。私は林芙美子の「放浪記」を翻訳しましたが、当初は「普通の日本の女の貧しい生活を記述しただけで、読むに値しない」といった否定的評価もありました。「私小説」の「私」は、日本では近代における「自我」の探究に関わる一人称代名詞であるのに対し、中国では「私」が一人称代名詞として使われず、「隠私」(内緒事)など「公」に対立する負のイメージがあるからかもしれません。中国の作家や読者が理解している「私小説」の概念は、日本の「私小説」の概念と随分違っています。中国でも20世紀初頭に私小説に近い郁達夫らの作品があり、90年代には私小説と呼ばれる作品が現れ、こうした作品を読む読者が増えましたが、依然として誤解されやすい文学形式だと思います。日中両国の「私」の比較研究は興味深いテーマです。│好きな作家は。魏太宰治です。学生時代、最初に読んだのは「斜陽」でした。太宰作品の魅力は、あえて言えば、解釈し難く、ものうく暗い自己心理の観察、何とも言いようがなく、絶えることのない一種の死への欲望、特定の人間性や人物に内在する真実の異常なまでに徹底した暴露、といったところでしょうか。太宰らの「私小説」に興味を持ったのは、文革などを経験したことによる私の潜在意識と関係しているのかも知れません。日本の伝統的な「私小説」の定義は、現実や事実に忠実で、虚構があってはならないというものです。太宰を真の「私小説」作家ではないという論者もいます。しかし、私は、虚構を「私小説」であるかどうかの基準とするのは無意味であり、太宰治は生まれつきの徹頭徹尾、「私小説」作家だと考えています。実際、どの作家であれ、作品のすべての表現が事実かどうかを検証する術はありませんから。│最近はどのような研究に取り組んでいるのでしょうか。魏翻訳は中国にいる頃から行っており、太宰治や林芙美子のほか、川端康成、芥川龍之介ら数十点を訳しました。研究では比較文学に取り組んでいますが、比較文学は簡単にマスターできる有効な手法がありません。真に比較する価値のある対象や研究の糸口を見つけるには、年月をかけて積み上げた研究から培った直感や素質が必要です。大学院生を指導しながら、私自身も比較文学の理論や方法を模索しています。例えば、井上靖「蒼き狼」について、チンギス・ハーンを中心に描いたモンゴルの古典「元朝秘史」との比較研究をもとに、モンゴル民族の間に例の狼神話、狼トーテムがあったのかどうか、狼に関する表象がどんな歴史的、文化学的意義があるのかについて、研究を積み重ねています。さらに、モンゴルの狼と日本民族学における日本狼の差異の比較研究を通して、井上作品に込められた隠喩や歴史観について探究しています。│関西外大の学生については、どんな印象をお持ちですか。魏日本の学生は総じて、純粋でまじめで、熱心です。ただ、ひとつ困っていることがあります。授業中、私語がひどいことです。日本の学生か中国の学生かにかかわらず、一般認識として、大学における学習とは、単に知識を学ぶだけではなく、まずは正しい人になること、徳と品をもった人になることを学ぶことが大事だと考えています。中国では「徳才兼備(徳行と才知を兼ね備える)」という言葉がありますが、「徳」が前に置かれているのは、才よりも徳を重視することの表れでしょうか。おもしろいのは、日本では「才徳」と「才」を前に置いていることです。「徳才」と「才徳」も、比較研究のテーマとなりそうです。1982年西安外国語大学卒業。1987年中国社会科学院大学院修了(文学修士)。2013年から関西外大国際言語(英語国際)学部教授。日本近現代文学・私小説・比較文学研究。大相撲好きで安美錦のファン。「授業がなければ場所中はテレビ中継を見ています」。好物は、日本酒とラーメンという。プロフィル研究室からVol. 39Vol. 39Vol. 39Vol. 39代後半から工場で8年労働10小説の「私」日中で異なる概念私宰治に傾倒潜在意識と関係か太学で学ぶべきは「才」に加え「徳」も大大学院外国語学研究科長教授大庭幸男英米語学科長教授町田哲司スペイン語学科長教授辻井宗明英語キャリア学科長教授岡田伸夫英語キャリア学科小学校教員コース長教授小寺正一外国語学部教務部長・留学生別科教務部長教授井尻直志英語キャリア学部教務部長教授松宮新吾学生部長教授津田仁国際交流部長学長谷本義高キャリアセンター長教授末包厚喜FD委員会委員長教授澤田治美短大部教務部長教授谷本和子短大部学生部長教授廣本和司短大部進路指導部長教授有本昌剛短大部FD委員会委員長教授浅田忠久短大部入試ディレクター教授井戸垣隆論集委員会委員長教授森岡裕一情報セキュリティ委員会委員長教授中谷英明個人情報保護委員会委員長教授森川長俊外国人担当教員会議担当ディレクター/IESディレクター教授リサR.ミラー留学生別科長教授スティーブンS.ザーカー留学生別科日本語ディレクター教授鹿浦佳子図書館学術情報センター長教授橋本功国際文化研究所長教授澤田治美人権教育思想研究所教長授明石一朗教職教育センター長教授角野茂樹イベロアメリカ研究センター長教授林美智代英語国際学部・国際言語学部長教授江平英一英語国際学部・国際言語学部教務部長教授神田修悦英語国際学部・国際言語学部学生部長教授白井良昌英語国際学部・国際言語学部キャリアセンター長教授中野誠学研都市キャンパス図書館学術情報センター長教授鵜島三壽孔子学院連携委員会委員長教授?衛衛英語国際学部英語国際学部魏大海教授魏大海教授ギタイカイ2016年度教員役職者中宮キャンパス学研都市キャンパス4月1日付大学院オリエンテーションが3月25日、中宮キャンパスの多目的ホールで開かれ、新入生を含めた大学院生48人と、指導教員16人が出席した。外国語学研究科長の大庭幸男教授があいさつし、「今年は新入生が例年より多くなりました。充実した研究生活を送ってください」と激励した。続いて論文作成について説明し、「参考文献が正しく書かれていないと、論文自体が低く評価される」と参考文献を正確に書くよう求めた。また、「論文作成でねつ造、改ざん、盗用、剽窃などの不正行為は許されない」として、「不正行為防止ガイドライン」の遵守を呼びかけた。2016年度は博士前期課程に12人、後期課程に3人が入学した。盗用や剽窃は許されない大学院オリエンテーション