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概要

外大通信デジタルブック

[11] THE GAIDAI 2016年(平成28年)10月14日 第286号Campus Life 関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載しています http://www.kansaigaidai.ac.jp/歴史のおもしろさ多くの人に伝えたい│今年5月に「満蒙をめぐる人びと」(彩流社)を上梓されました。どういう経緯で満蒙(かつての満州、蒙古。現在の中国東北部、内モンゴル自治区)研究に入られたのですか。北野 学生時代は日本史を専攻しました。外交史や国際関係論を勉強していましたが、近代の日本外交史を自分なりに勉強してみると、ほとんどが中国をめぐる問題です。アメリカとの問題にしろ、ロシアとの問題にしろ、イギリスとの問題にしろ、たどっていくと中国の問題に結びつくことが多い。そこで関心が日中関係に移っていきました。そして、日中関係には、大陸浪人とか馬賊とか、日本にはいないようなおもしろい人たちがよく出てくる。そうした人物10人を紹介したのが本書です。│満蒙というと、一般の人には遠い存在だと思いますが、どういう狙いを込められたのでしょう。北野 歴史はあまり人気のない学問だと思います。やっている本人は楽しんでいるのでしょうが、歴史研究者は楽しみのようなものを人に伝える努力をせず、学問的な成果や意義ばかりをアピールしようとする。もっとおもしろいことがあるはずなのに、歴史学者はあまりそのことに触れない。しかし、資料を読んでいると、こんな人がいたのかとおもしろい話がたくさんある。そういう歴史のおもしろさ、楽しさを多くの人に知ってほしくて一般書の形で伝えようとしたものです。│今日から見て、満蒙について学ぶ意義とは。北野 登場人物10人は、それぞれの見方でこの地域を見ています。そして、この地域は、だれがどう見るかによってまったく違ったものに見える地域でもあります。意識をどこにもっていくのか、何に関心をもつのかによって見えるものが変わってくる。あるいは見えたり、見えなかったりする。歴史の多面性のようなものをよく表している地域だと思うのです。歴史は様々なものの積み重ねであり、物事には多面性がある。ものを見る目をどう養うかといったことを学べるのではないでしょうか。│日本史から中国へ関心が移り、中国への留学につながったわけですね。北野 中国語は大学時代に第2外国語として学んだ程度でしたが、知り合いの先生の勧めもあり、2005年、中国の黒竜江大学(黒竜江省)に留学し、2年半、ハルビンに滞在しました。初めは言葉もできず、ぶっつけ本番という感じでしたが、途中から大学の日本語教員を務め、中国人学生との間で日本語と中国語の〝相互学習?という状態でした。│留学に出たのは20歳代後半ですね。今の学生たちとそれほど変わらない年齢です。北野 語学や資料調査が目的で留学しましたが、中国の社会の中に入っていって、社会のあり方といいますか、いままで自分が感じていなかった価値観に気づきました。時間の流れ方といったものが日本国内と微妙に違うのです。日本にいると、中国と比べて社会が成熟してきっちりしている分、息苦しかったり、道からそれたときに自分だけ疎外されているような怖さを感じたりします。 ところが中国には、そうしたことがあまりありません。日本にずっといて自分のなかでもっていた価値観が多少相対化されたような感覚を中国という外国で暮らしたことで持ちました。 学生たちも急に何かにぶつかるときがあるでしょう。大学までは順調に過ごしてきたのに、就職などでつまずいたとき、日本の中にいると、ここで就職が決まらなければだめだと落ち込むことが往々にしてある。しかし、中国だと、そういうことが結構、当たり前だったりする。まだ、大丈夫だと突き放せる。異文化を知ることはそういう多様な価値観に出合うことだと思います。学生たちもどんどん外国に行き、そういう経験をしてほしいですね。│留学後の生活について、著書で「挫折と失敗」を味わったと書かれています。北野 2008年に中国から帰国し、研究の道を志していましたが、仕事が決まらず、一般社会でいえば、30歳代後半になっても、定職がない状態でした。非常勤講師を続けて食いつなぎましたが、多いときは大学4校ほどで掛け持ちし、週7コマをこなしていました。横浜の自宅から東京、千葉、茨城と通い、通勤時間は最長で3時間ほどかかるところもありました。 非常勤講師だけでは生活が維持できる保障はなく、研究の道も断念せざるを得ないかと、いろいろと考え、悩んだこともありました。 そんなとき、中国にいた頃のことを思い出し、また、その後もたびたび中国に行っていましたので、違った価値観に触れて気持ちがリフレッシュできました。この間、博士論文も書き上げました。│ということは、関西外大が初めての常勤の教員ということですか。北野 そうです。非常勤講師生活は8年に及びましたが、縁があって今年4月、関西外大に来ました。今は中国語担当ですが、今後、歴史や文化にまで踏み込んで中国人の考え方、文化、社会の理解につながるような授業を心がけたいと思っています。学生たちには、語学を学んで満足するだけでなく、言葉を通して社会、文化、歴史を学び、さらに、自分で本を読むなりして知識の広がりのようなものを意識しながら勉強してほしいと願っています。 1977年生まれ。国士舘大学文学部史学地理学科国史専攻卒業。國學院大学大学院文学研究科日本史専攻博士課程後期修了。博士(歴史学)。2005?08年中国黒竜江大学留学・日本語講師。川崎市市民ミュージアム学芸員を経て、16年4月から関西外国語大短期大学部講師。家族は中国人の妻と長女(4)、長男(2)。家庭では本人が日本語、妻が中国語で話すバイリンガル生活を送る。プロフィル研究室からVol. 41著「満蒙をめぐる人びと」に込めた思い新語の学習を通して知識を広げよう言間の流れ変えた中国への留学時史からものを見る目を養う歴短期大学部北野 剛 講師きたのごう 中国教育部(省)国際協力・交流司(局)の許濤司長(局長)=写真=ら代表団一行が9月26日、中宮キャンパスを訪れ、谷本榮子理事長と懇談した。許局長は、本学と研究面での交流プロジェクトを進めたいとの意向を示した。 冒頭、谷本理事長が、本学の歴史を紹介。日本の外国語大学として初めて博士課程の設置を認められたことに関し、「外国語大学で学ぶ言葉は手段で、その背景としての比較文化研究が重要と文部省(当時)に粘り強く説いた結果」と述べ、その後の博士課程重視の流れをつくったことを強調した。 許局長は、今後5年間で日中間の教員・学生・大学間交流を積極的に展開していく方針を説明。中国政府が進める、陸と海でアジアと欧州を結ぶ経済圏構想「一帯一路」計画に基づき、沿線各国の言葉が話せる学生を育成するだけでなく、各国の政治、経済、教育制度などの研究も推進する方針を説明し、こうした面で本学とも交流プロジェクトに取り組みたいと述べた。 短期大学部の「第14回K.G.C.ベーシックスFD研修会」が9月14日開かれ、クラス担任や職員が出席。この日は「短大卒業生による満足度調査の分析結果」が報告された。 満足度調査は、2015年度の短大卒業生を対象に聞き、657人から回答を得た。回答者の8割以上は女子学生。短大時代を振り返り「満足している( 32%)」「まあ満足している( 39%)」を合わせた「総合満足度」は71%で、「満足していない」「あまり満足していない」は僅か3.2%だった。満足の理由として▽授業(35%)▽交流・交友関係( 32%)▽施設・環境( 30%)▽成長・語学力の向上―をあげ、豊富なカリキュラムや外国人教員との交流を評価する学生が多かった。 「本学短大への入学を後輩などに推奨するか」では「推奨したい( 32%)」「場合によっては推奨したい( 39%)」で、両方合わせた「推奨する意向」は71%。 留学は「期間1カ月以上、4カ月未満」が4分の3を占め、留学先では、半数がカナダで、オーストラリア( 21%)、米国( 15%)、ニュージーランド( 10%)と続く。留学先での授業は90%以上が満足しており、72%の人が就職活動に留学経験が役立ったと回答している。本学と研究交流希望中国教育省局長が来訪短大卒業生調   査学生時代「満足」71%短大卒業生に対する満足度調査の結果を報告する関係者 本学の「研究論集」第104号が発刊された。論文7編、研究ノート3編、教育研究報告3編が収録されている。論文の筆者は、鈴木保子准教授、小村親英准教授、谷本愼介教授、M. P. Letelier 准教授、金孝淑講師、F. Blanco 教授、藤田弘之教授。研究ノートは、仲川浩世准教授、森常人講師、光信仁美准教授。教育研究報告は、A. Dansie 講師、松宮新吾教授、柊元弘文教授(いずれも掲載順)。■「研究論集」104号発刊