ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

外大通信デジタルブック

THE GAIDAI 2017年(平成29年)2月21日 第288号[ 6]関西外大の最新ニュースはホームページにも掲載しています http://www.kansaigaidai.ac.jp/ Gaidai News くつろいだ雰囲気の中で教育や授業のあり方について語り合う「FDカフェ」(FD委員会主催)の第10話が1月27日、中宮キャンパス・多目的ルームで開かれた。外国語学部の澤田治美教授=写真=が「ことば、この大いなる存在の研究と教育の魅力をめぐって」と題して、日頃の授業の一部を再現して紹介するとともに、自らの研究の経歴を振り返った。 「意味の研究」を専門とする澤田教授は第1部として、「意味論・語用論の楽しみ」をテーマに、授業形式で講義を進めた。国語学者・時枝誠記「国語学原論」から、〈言語は誰(主体)かが、誰(場面)かに、何(素材)かを語るところに成立する〉とする、言語の成立条件としての「主体」「場面」「素材」の三者の関係を示し、「ことばを発することは行為である」と説いた。 また、米国の作家オー・ヘンリーの短編「賢者の贈り物」の一節から、作中の女性が語る「Tomorrow will beChristmas Day」の例文を引き、時制がなぜ「is」ではなく、「will be」なのかを考えた。澤田教授は、単に暦の問題であれば「is」が使われ、話し手にとって特別な日の場合は「will be」が使われると推測し、作中人物の心理が描かれていると指摘した。 さらに、ネイティブへの聞き取りから、「is」は人ごとのように聞こえるため、あすが結婚記念日であることを妻に話すようなケースでは「will be」のほうが適切だとする見解を紹介し、母語話者の特別なモダリティ(心的態度)を示唆していると解説した。 続く第2部は「続・現代意味解釈講義」のテーマで、ことばをめぐる自身の探究の歴史が語られた。 国際文化研究所の公開講座「第3回IRI言語・文化コロキアム」が1月28日、「古代の枚方と渡来文化」をテーマに中宮キャンパスのICCホールで開かれた。佐古和枝・英語国際学部教授、枚方市教育委員会の大竹弘之氏、平林章仁・龍谷大学教授の3人が考古学や文献史学の立場から、古代史上、重要な舞台となった枚方と朝鮮半島などからの渡来氏族との関わりについて講演した。 最初に登壇した佐古和枝教授は「古代の枚方って、どんなとこ?」と題し、旧石器時代から奈良・平安時代にかけての枚方周辺の状況について概説した。弥生時代について、「のどかなイメージが強いが、中・後期は戦乱の時代」と述べ、この時期に見張り場としての高地性集落を含む多くの遺跡が出現するのは、淀川と木津川が合流する交通の要衝にあったことが要因と話した。 古墳時代に関しては、馬や馬具など朝鮮半島からさまざまな文物が伝わったと説明した。そのうえで、507年に樟葉宮で即位し、高槻市の今城塚古墳がその陵と伝わる継体大王について、船の重要性ととともに馬の重要性も認識し、地元の渡来系馬飼集団とつながりが深かったことを指摘した。 続いて、枚方市教育委員会の大竹弘之氏が「考古学から見た北河内の渡来人」をテーマに、出土物を例に枚方周辺と渡来人との関わりについて語った。大竹氏は、穂谷川沿いの小倉東遺跡(古墳時代)から出土した、くつわに関連して、「北河内のこのあたりは、馬匹生産と関わった渡来系の人々がいたのではないか」と推測した。 枚方市内に残る百済寺跡については、奈良時代後半からの土器が出土しており、大きさや形状において朝鮮半島の統一新羅のものに通じると指摘し、「奈良時代の後半頃、大仏開眼など何かのきっかけで朝鮮半島から入ってきたのではないか」と述べた。 最後に、平林章仁・龍谷大学教授が「渡来系集団から枚方の古代を考える」として、古事記や日本書紀の記述から枚方の古代史の特徴を考察した。仁徳天皇の時代に淀川に築かれた「茨田(まんだ)堤」について、「秦人」「新羅人」の記述に基づき、政権が国家事業として直轄地を設けて農業経営にあたるため、渡来人を招いて淀川の流れを安定化させようとしたと解説した。 平林教授は「渡来系の人々は朝廷に招かれて集団でやってきた。日本に来た後も郷里と交流を続け、今日の華僑のように常にネットワークを活用していた。日本の王権にとっては、まさにその点に彼らを招く目的があったのではないか」と指摘した。交通の要衝統一新羅の影ネットワーク佐古 和枝教授平林 章仁教授大竹 弘之氏 FD委員会主催の第6回授業実践研究フォーラムが1月6日、中宮キャンパスのICCで開かれた。ICCホールでは開会式に続き、金沢大学国際基幹教育院高等教育開発・支援部門の杉森公一准教授が「学生と教師を結び、深い学びへ繋ぐには―アクティブ・ラーニング型授業と大学教育のかたちづくり―」と題して基調講演した。この後、5教室に分かれ、22の研究発表が行われ、授業方法について意見交換するなどした。 基調講演で杉森准教授は、アクティブ・ラーニングが求められる背景として、大学進学率が5割を超える「大学全入時代」を迎え、高校と大学の学習環境のギャップを埋めることや、グローバル化の進展で国際競争力の強化が必要になったことなどを指摘。大学改革をめぐり、高大接続でアクティブ・ラーニングが重視されていることなど文部科学省の最近の動きにも触れた。 さらに、杉森准教授は金沢大学で取り組んでいる「アクティブ・ラーニング・アドバイザー(ALA)」の事例を紹介した。上級生が下級生に対してアクティブ・ラーニングに関係する学修補助を行う制度で、2016年度は約230人がALAとして活動。受講生にとっては、グループワークの活性化や発表の質向上といった効果があり、ALAにとっても教える経験を通して自らの学びにつながるなどの意義があると説いた。 そのうえで、杉森准教授は、アクティブ・ラーニングには、学生に「深い学び」を促す授業法が重要だとし、レポート・討論など「書く・話すというアウトプット活動」などの学修活動と「レポート・提出物のフィードバック」などの学修評価を組み合わせた授業の仕組みを紹介。アクティブ・ラーニング型授業の分類と戦略性を説明しながら、「研究活動はもっとも優れたアクティブ・ラーニングです」と語った。 一方、研究発表は、①ネイティブ教員による「Teaching Practices」②教職教育・英語学③大学英語教育④授業方法⑤多文化理解と言語―の5分野に分かれて行われた。 第9回関西外大FDシンポジウムが「主体的・創造的な学びを育成する授業を目指して」をテーマに2月3日、中宮キャンパス・多目的ルームで開かれた。京都大学高等教育研究開発推進センターの松下佳代教授が「深い学習につながるアクティブ・ラーニング―ディープ・アクティブラーニングのすすめ―」と題して基調講演した後、角野茂樹・英語キャリア学部教授と篠原信貴・外国語学部教授が授業実践例について発表した。 松下教授は、アクティブ・ラーニングとディープ・ラーニングを結びつけた「ディープ・アクティブラーニング」という考え方の理論について紹介し、アクティブ・ラーニングでは学生の深い学習につながる授業が必要だと説いた。ディープ・アクティブラーニングの内容については、学習者と他者、対象世界との関係において、「学生が他者と関わりながら、対象世界を深く学び、自分のこれまでの知識・経験と結びつけると同時に、これからの人生につなげていけるような学習」と定義する「学びの三位一体論」を紹介した。 さらに、学習活動のプロセスとして、能動的学習に必要とされてきた、書く・話す・発表するなどの「外化」だけでなく、「内化」(知識の習得)も必要だとし、「内化と外化をどう組み合わせるかが重要」と話した。また、自身が京都大で担当する全学共通科目「学力・学校・社会」の授業を紹介した。 一方、授業実践発表では角野茂樹教授が「実践的教育指導観を」と題し、英語キャリア学部小学校教員コースで担当する授業を紹介しながら、教職課程を学ぶ学生たちが理解すべき学習活動(指導法)、今日的な課題と向き合いながらもつべき教育指導観について語った。法解釈学・労働法を専門とする篠原信貴教授は、座学のスタイルが一般的な法学の講義の中でアクティブ・ラーニングの手法を取り入れている試みについて語った。FDカフェ第10話 澤田治美教授「言葉の魅力」語るFD アクティブ・ラーニングとどう取り組むかシンポジウム授業フォーラム深い学習をALA紹介杉森 公一 氏松下 佳代 氏「古代の枚方と渡来文化」を考える第3回言語・文化コロキアム国文研講演の後、語り合う(右から)佐古、平林、大竹の3氏