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概要

外大通信デジタルブック

23――本学に来る前は国連で活動していたとお聞きしました。どのようなことをされていたのですか。コーガン 国連での仕事は2010年にタイの事務所でコミュニケーションの専門家として働き始めたのが最初です。タイの首都バンコクではこのとき、反政府デモが起きており、私の任務は力を試されるものでした。着任後直ちに、国連高官のために発表文書を書くよう命じられました。400㌻におよぶ人間の安全保障に関する内容でした。――コミュニケーションの専門家(Communication Specialist)とは。コーガン 最も多いのはタイ政府との法律や敏感なことがらに関する情報のやりとりでした。ほかに、一般の民衆や世界のメディアを対象とした情報の処理も仕事に含まれます。これまでに50か国以上を訪れましたが、国連のミッションで駐在したり、派遣されたりした国はタイのほか、南スーダン、アフガニスタン、レソト、南アフリカ、エチオピア、ヨルダンなど十数カ国です。このうち、最も気に入っているのは、もちろんタイです。妻と出会ったところですから。――印象に残っている任務は。コーガン サハラ以南のアフリカに位置する小国のレソトに駐在したのは2014年です。着任後間もなく、レソト国防軍(LDF)の一派がクーデターを試み、首相と連立政府のメンバーを追放しました。私が滞在していた場所からわずか1ブロックのところで軍のメンバーが警察と銃撃戦を展開しました。 私の主たる任務は、一夜にして危機に陥った現地の国連諸機関に対しコミュニケーション力を構築することでした。同時に、世界のメディアの要望に応じて、ニューヨークの国連本部にブリーフィング用の材料を提供し、高官が談話を出すための要点を記した資料を送っていました。その後は、2015年総選挙の国際監視の仕事に移り、有権者教育や現地人の選挙担当スタッフの指導などを行いました。難しい仕事でしたが、得がたい経験を積むことができました。――ジャーナリストとしての経験が役立っているように思います。コーガン ジャーナリストとしての経歴は大学(米サウスオレゴン大学)在学中にさかのぼります。19歳から全国的なウインドサーフィン雑誌の投稿担当編集者となり、ダウ・ジョーンズグループを経て、数年後、オレゴン州の週刊新聞の編集長を務めました。幸運なことに、オレゴン新聞出版協会や全国新聞協会から多くのジャーナリズムの賞を受賞することができました。そのうちの一つは、ビル・クリントン元大統領の演説に関するものでした。政治に関しては、オレゴン州時代、2004年の民主党大統領候補になったジョン・ケリー氏の陣営の仕事にも携わりました。――学生が国際関係論を学ぶ意義は何でしょうか。関西外大生が国連のような国際機関で働くためには何が必要でしょうか。コーガン 国際関係論は政治や外交だけではありません。それは世界をよりよく理解し、世界とよりよくコミュニケーションをとるためのツールです。国際関係論の基礎を習得しておれば、学生たちが仕事を探すうえで門戸を開いてくれることでしょう。 日本の学生が国連で働きたいとすれば、特定の分野の学位を取るとともに、英語とほかの国連の公用語、特にフランス語か中国語を習得することが重要だと思います。学部4年生と大学院生を対象にした国連のインターンシップを活用することもできます。国連の業務について十分な知識があれば、ほかの応募者より有利になると思います。国連の専門家として十数カ国に駐在・派遣国連で働くには英語と他の公用語も習得をインターンシップも活用アフリカ南部・レソトで開かれたHIVとエイズに関するワークショップで