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概要

外大通信デジタルブック

07 月の前半は主に、同協会のHPで紹介された堺市内の仁徳天皇陵や百舌鳥八幡宮などの観光名所、発電所、植物工場などの主要施設を実際に見て回り、担当者や関係者から詳しく説明を聞きました。後半に入ると、Facebook やInstagram などのSNSで自分たちが体験し視察した観光資源等の情報を発信したり、同協会の多言語のガイドサイトの手直しを行うなどしました。 張さんは数あるグローバルインターンシップ先のなかから同協会を選んだ理由を「(自国の)旅行が好きな人を助けるような役目をしてみたかったから」と言います。また、ソデツさんは、「日本には、東京や大阪、京都だけでなく、堺のような外国人のあまり知らない、いい町があることを伝えたい」。 二人の考えには、格安航空サービスの普及などで関西方面を訪れる外国人旅行客が急増するなか、堺市が抱いている危機感と通じるものがありました。関西国際空港の国際線を利用した外国人旅客数は2 0 1 6 年度、過去最多の1200万人余り。しかし、大阪と関西空港の間にある堺市に立ち寄る旅行者はその1%にも満たないとみられています。 同協会の楠山純秀プロモーショングループ長は「堺が通過都市になりつつある状況をなんとかしたい」と言います。打開策として、「観光地としての魅力を伝えるには、昔でいえば口コミ、現在ではSNSでの情報発信が最も効果がある。英語と中国語のネイティブスピーカーで、日本語も理解できる彼女たちがつくるコンテンツは大きな戦力になります」と話していました。 発信しようと思う堺市の魅力についてソデツさんは「私はアメリカ人なので(国の歴史が若く)、千利休や与謝野晶子のような歴史的なものに興味があります」。張さんも「山口家住宅(堺市立町屋歴史館。江戸時代初期建設の町屋で重要文化財)のような古いものやハーベストの丘のようにいろんな体験ができてホッとするところを紹介したい」。 二人はこの日、薫主堂に続いて、近くにある堺打刃物の製造・販売の水野鍛錬所を訪れました。ここには刃物を作る様子を見学させてくれる工房があります。インバウンドの大波は、この伝統的な工房にも押し寄せてきています。5代目刀匠で、社長の水野淳さんは、「うちに来て見学する人の6割は外国の人です。それもエストニアやイスラエルなど世界各国から来堺打刃物の水野鍛錬所の玄関には、さまざまな刃物がぎっしりと陳列、販売されている水野鍛錬所で刀匠の水野淳さんから説明を聞く2人ています。もっと堺の伝統工芸が世界に広まってほしい」。 包丁から爪切りまで様々な刃物がディスプレイされた瀟洒な玄関の店舗から、暖簾をくぐって奥に進むと、火と鉄の気配に満ちた昔ながらの鍛冶工房が現れます。火床では、炭が鞴(ふいご)の風で燃え盛り、深みのあるオレンジ色に。火床の近くに立った二人は目を丸くして、水野さんの手元を見つめます。鉄を熱しては叩いて鍛え、不純物を飛ばし、鋼を付け、細長い鉄の板は見る間に包丁になって行きます。 水野さんはグローバルインターンシップで研修する二人について、「優秀でやる気があり、何より研修を楽しんでいるところがいいですね」と話していました。「旅行の手助けを」「外国人の知らない場所を伝えたい」伝統産業の刃物工房にもインバウンドの波