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概要

外大通信デジタルブック

21――ご専門の応用計量経済学は、どのような研究なのでしょうか。小川 たとえば、日本のGDPや物価、為替などのデータを基に、日本経済がどういう状態にあるのかを実証分析しています。経済学のなかでも統計学という「道具」を用いた研究です。特に、1980年代後半のバブル景気の後、「失われた20年」と言われる長い低迷に、なぜ陥ったかを分析しています。――研究はさらに進み、アベノミクスの実効性やいまの好景気の背景を分析されているとうかがいました。小川 マーケットは好景気を歓迎していますが、内閣府が2017年1月に行ったアンケート調査から、企業は今後5年間でGDP1%の上昇しか見込んでいない実情が明らかになりました。アベノミクスは、あらゆる政策を総動員して経済成長を高めようという政策です。しかし企業は、長期の好景気をもたらすためには消費の安定的な拡大が不可欠であると考えています。消費拡大には長期の社会保障制度の整備が必要ですが、現状では十分とはいえず、若い世代でも老後に備えて消費に慎重になっています。さらに失業率は低下しても、非正規雇用の改善が進んでいないことも消費低迷の原因です。――経済学の論文をのぞくと、数式が多い難しいイメージを持ちます。小川 数式はあくまで指針であり、理論の一表現にすぎません。ロジックを積み重ねて複数ある理論を数式によって表すことにより、データ分析という共通の尺研究は、バブル景気後の失われた20年からアベノミクスヘ経済学は身近な存在で、さまざまな応用が可能度を用いて評価することが可能となります。つまり数式によって体現化された理論にデータ分析を適用することにより、どの理論が現実に合っているのか検証することができるのです。ただ、ともすれば論文が数式ばかりに陥る学生には、経済活動は人々による営みなので、最終的には数式の意味するところを人に言葉で説明できないといけないと指導して来ました。――経済学を教える際、意識されているのは何でしょうか。小川 経済学は、とても身近な存在で、日常のあらゆる現象を経済学で分析できるのです。たとえば、人間の行動にはすべて、ベネフィット(利益、ためになること)と、コスト(費用、経費、代償)が発生します。成績を上げるというベネフィットには、勉強に時間が取られ、好きなことやバイトができないというコストが生まれます。犯罪もそう。職業犯罪者は、うまくいった時の不法な収穫というベネフィットと、捕まえられれば罰を受けるというリスク、つまりコストを天秤にかけます。このように経済学はいろんな応用ができるのです。――ご趣味を教えてください。小川 鉄道ですね。いまで言う〝乗り鉄?です。米国の留学先から帰国する際も、大学のあった東海岸から西海岸まで3泊4日かけて鉄道で横断しました。学生ですから寝台は買えず座席(コーチ)でした。最近でしたら、英国・ヨークにある国立鉄道博物館がすごかった。世界最大規模だそうで、時速200キロ超を記録した世界最速の蒸気機関車は巨大なものでした。スイス・チューリッヒ大学に研究報告の出張の際に乗ったスイス国鉄の車内で